David Blecken
2017年6月23日

カンヌライオンズ2017:日本勢の成績

世界最大の広告の祭典、カンヌライオンズが今年も6月17日に開幕した。日本の企業はこれまでどのような活躍を見せているのだろうか。

カンヌライオンズ2017:日本勢の成績

今年のカンヌライオンズは、娯楽色よりもビジネス色が全面に出たものとなった。どの関係企業も、陽光とヴァカンス気分溢れるかの地に多くのスタッフを1週間も派遣することはままならなかったのだ。が、だからと言ってフェスティバルが退屈だったわけではない。眩いばかりのイルミネーションや海を埋めるヨット、数え切れないほどのロゼのボトル、そしてスナップチャットが提供した観覧車……カンヌが依然として華やかな“クリエイティビティーの祭典”であることは間違いない。

初っ端のセッションではマッキンゼーのコンサルタントが先陣を切り、クリエイティブ面での高い評価と企業の業績の好調さはリンクしていることを強調した。その点こそ、広告代理店にとっての「核心部分」に違いない。が、クライアントにとってのそれは果たして何なのか? マッキンゼーは2001年から2016年までのカンヌにおける企業の受賞歴や頻度、ランク、そして業績などを調査した。その結果、クリエイティブ面で上位にランクされた企業はビジネスやイノベーションも極めて順調なことが分かったという。

では、今年のこれまでの受賞結果を見てみよう。フェスティバルはまだ終わっていないが、日本の企業はこれまでに32の賞を獲得した。最も印象的だったのは、リクルートが提供しているスマートフォンを使用した精子のセルフチェックアプリ「Seem(シーム)」。不妊に悩むカップルを対象にしたプロダクトで、日本勢唯一のグランプリを受賞した。協働したのは電通ヤング・アンド・ルビカム(Y&R)。モバイル部門での受賞で、同社にとってはボルボの「Safety Pin」以来、21年振りのグランプリとなった。

当の電通Y&Rはこの受賞に関し、「プロダクトやアプリの開発に従事したのではなく、プロモーションに注力した」と述べているため、Campaignでは改めて同社の役割を確認した(カンヌライオンズはモバイル部門を「デバイスを中心としたクリエイティビティー」と規定している)。

Seemのスポークスマンは、リクルートは開発に社内のテクノロジーリソースを使ったが、電通Y&Rとアプリの改良に取り組んだゆえに「信用性と可能な限りの幅広いオーディエンスへのアクセシビリティーを構築できた」と語った。

Seemのキャンペーンはモバイル部門の金賞と銀賞、性差別や偏見の打破に貢献した作品を選ぶ「グラス(Glass)」部門でも日本勢として初めて銅賞を獲得した。この部門のグランプリはマッキャン・ニューヨークの手による「Fearless Girl(フィアレスガール = 恐れを知らない少女)」で、PR部門でもグランプリを受賞。ニューヨーク・ウォール街にあるこの少女のブロンズ像は決して世界中から愛されているわけではないが、今の時代でもテクノロジーを使わず、世間に強いインパクトを与えられることを改めて教えてくれた。

PR部門で受賞を果たした日本勢は、電通の「Second Life Toys 〜 おもちゃの移植手術」(Campaignが推薦する取り組みで、数名の業界専門家がこの受賞を予想していた)と、同じく電通の手による江崎グリコの子ども向けプログラミング教材「GLICODE(グリコード)」。「Second Life Toys」はヘルス・アンド・ケア部門でも銅賞を獲得。パナソニックと「END ALS」(ALSの治療法確立と啓発を目指す一般社団法人)も受賞を果たしたが、豪州のクレメンガー(Clemenger)BBDOが手がけた交通安全キャンペーン「Meet Graham」のシンプルな力強さが圧倒的なインパクトを残した。

米国勢が席巻したアウトドア部門では、ツイッターの作品と並んでオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンによる佐川醤油のキャンペーン、TBWA HAKUHODOによるアディダスの「Green Light Run」がそれぞれ銀賞と銅賞を獲得。アディダスのキャンペーンはクリエイティブデータ部門でも銀賞と銅賞、サイバー部門で銅賞を獲得した。

サイバー部門は例年日本勢が強さを発揮するが、今年の勝者はバンク・オブ・アランド(Aland)のキャンペーンを手がけたスウェーデン・チーム。日本からは電通の手によるサムスンの「Draw and Release」と、博報堂が手がけたソニー・プレイステーションの「Gravity Cat」が受賞した(博報堂の受賞もCampaignに近い3名の業界専門家が予想した)。

デザイン部門では、日本企業のグランプリはなし。栄光に輝いたのはタイの不動産会社のキャンペーン、「Unusual Football Field」だった。それでも日本勢は同部門で健闘し、電通の「Study for Human being」と博報堂の「Washi Lingerie」(AKQAのクラウディア・クリストヴァオ氏が受賞を予想)がそれぞれ銀賞と銅賞を獲得、マッキャンはアマゾンファッションのキャンペーンで銀賞を得た。プロダクトデザイン部門では、TBWA HAKUHODOが革新的な車椅子「COGY(コギー)」で銅賞を獲得した。

イノベーション、ディレクト、プロモ&アクティベーション、ミュージック・エンターテインメントといった部門では日本勢は受賞を逃した。最終結果は今週末に発表される。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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