David Blecken
2016年11月10日

セプテーニ、東南アジア進出に向けてLion & Lionを買収

意外にも多くの「文化的共通点」を見出したセプテーニとLion & Lion。両社にとって、今後の事業展開に弾みがつきそうだ。

セプテーニ・ホールディングス取締役経営企画部部長、唐木信太郎氏
セプテーニ・ホールディングス取締役経営企画部部長、唐木信太郎氏

インターネット広告事業を幅広く展開するセプテーニ・ホールディングスは、東南アジア市場への進出を一層強化するため、マレーシアを拠点とするデジタルクリエイティブエージェンシー「Lion & Lion」を1,380万米ドルで買収した。

両社には手強い競合他社がいるが、それぞれに独自の強みがある。表面上、両社の企業文化は明らかに異なるが、買収の立役者たちは互いを結びつける本質的な共通項も見出したようだ。

ソーシャルメディアマーケティングとスマートフォンアプリに強いセプテーニは1990年に設立され、ジャスダック(JASDAQ)上場。日本のデジタルマーケティング企業としては珍しく、米国や英国、中国、ベトナムなど海外に12の拠点を有し、その売上は全体の10%を占める。

Lion & Lionは、4年ほど前にクアラルンプールで創業。オンライン眼鏡小売の「GlassesGroupGlobal(グラシーズ・グループ・グローバル)」などを有する投資会社「Nova Founders Capital(ノヴァ・ファウンダーズ・キャピタル)」の出資で立ち上げられた。香港やシンガポール、インドネシアにもオフィスを構え、コカ・コーラ、アップル、グーグル、ネスレ、ロレアルといった顧客を持つ。

Lion & Lionのマネージングディレクターであり、ヒュー・バトレー氏との共同創業者であるキャスパー・アンダーセン氏は、同社を東南アジア有数のデジタルエージェンシーにする目標を掲げる。アンダーセン氏によれば、同社は「コンサルティングとエージェンシーの機能をあわせもち、顧客のビジネス上の目標とマーケティングの方向性を一致させたサービスを提供しています」。また、「完全な透明性を確保しており、裏でインセンティブをやり取りするような慣行は一切ないことも誇り」と語る。

「有数のエージェンシー」の具体的定義はなかなか難しいが、セプテーニ傘下に入ったことで同社の成長機会が大幅に増すのは間違いない。同氏はさらに、「我が社単独では難しい大規模なメディアバイイングが可能になる」とも言及。セプテーニがLineなどで蓄積した、プラットフォームの専門性も生かしていけることだろう。

Lion & Lionの共同創業者、キャスパー・アンダーセン氏とヒュー・バトレー氏


ではセプテーニは、この買収で何を手に入れられるのだろうか。同社の取締役経営企画部部長唐木信太郎氏は、日本のデジタルマーケティング市場が2020年までに1.5兆円(150億米ドル)以上に拡大する一方で、東南アジア市場はその2倍の規模になると予測する。同社や同社の顧客にとって、東南アジア市場は「決して看過できない大きな成長機会」なのだ。

セプテーニの顧客数は約1,000社に上る(唐木氏は個別の企業名を明かさなかった)。「特にゲームやモバイルアプリの分野で、顧客の東南アジア進出を支援したい」と同氏。これまでは現地でのローカライズを任せられるクリエイティブチームを探すのに「苦労した」が、Lion & Lionの買収によってその状況は改善される。特にインドネシア市場への参入は同社にとって重要で、Lion & Lionはその足がかりになるという。

Lion & Lionの経営体制は、そのまま維持する予定。だがグループへの統合プロセスを見守るため、経営企画部の同氏とソ・ウンジ氏は一時的にマレーシアに赴く。さらにLion & Lionの人員を、現在の175人から3年で2倍にする計画もある。

日本企業による海外企業の買収では、文化的相違や言葉の壁が問題になることが多々ある。だがアンダーセン氏は、当初の懸念にかかわらず「互いの企業文化が非常に似通っている」ことが分かり、安堵したという。「両社とも若さに溢れ、形式にとらわれず、環境がオープンという社風があります」。従業員の能力開発や福利厚生に力を入れるセプテーニの姿勢にも共鳴したという。

唐木氏はセプテーニのもう1つの特長として、文化的多様性を重視する企業風土を挙げる。Lion & Lionを含めると、グループ全体の従業員1,300人のうち270人ほどが非日本人となる。この人数自体はそれほど多くはないが、同社の規模と事業の大半が日本に集中していることを考えれば、注目に値する数字だ。

「日本では多様性イコール女性の活躍、というイメージが定着していますが、我が社では性別に限らず、年齢、国籍、宗教、性的志向などの相違も含めた平等化の実現に取り組んでいます」と同氏。「企業がグローバル市場で成功を収めるためには、多様性を重んじる風土は不可欠。より多くの日本企業に、そうなって欲しいと思っています」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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