Miyako Hirano
2017年1月03日

働き方改革で、日本人は「余暇上手」になるか

日本人は働き過ぎで、有給休暇をとらない - 海外では定説になっている我々日本人のイメージの1つだろう。

平野美弥子氏
平野美弥子氏

事実、「世界28ヶ国 有給休暇・国際比較調査2016」(エクスペディア)によると日本人の有休消化率は50%で、2015年と2016年の調査で最低だった韓国をさらに3%下回り、世界最下位という結果だった。下位3ケ国は日本50%、韓国53%、インド71%で、ブラジル、フランス、スペイン、オーストリア、香港の取得率は100%。日本は世界から大きく差をつけられていることが分かる。

さらに驚くのは、この調査で日本は「自分の有休支給日数を知らない国」の1位なのだ。なんと47%もの人々が、自分の有休支給日数を知らないと答えている(2位の韓国は21%)。有給未消化が日常化していることが見えてくる。

とは言うものの、仕事と私生活のバランスについては勤労者の88%が「仕事とプライベートを両立したい」と願っており、新入社員に至っては半数以上が「プライベートを優先したい」と答えている(2016年マイナビ新入社員意識調査)。

では、なぜ日本人は有休を消化しないのだろうか。長時間労働を美徳としてきた日本特有の価値観、そしてそれをベースにした労働環境だけが要因なのだろうか。

2016年は様々な労働問題が社会で取り沙汰され、日本の労働環境が世界的に見て異端で時代遅れであることが表面化し、昭和から続く旧就業モデルの常識を転換させていこうとする動きが生まれた。長時間労働を美徳とする価値観が、ダイバーシティに生きる現代人の価値観に移り変ってきている証拠だろう。働き方を見直すこと、それはすなわち1個人のQOL(Quality of life、クオリティ・オブ・ライフ)を見つめ直す機会でもあるのだ。

日本人は余暇の使い方が下手で、遊び下手だ。2017年は「働き方改革元年」となり、日本人を余暇上手にさせる様々な制度やサービスが充実していくと予測している。

リクルートが全社員を対象に上限日数なしに在宅勤務を許可し、ヤフーは週休3日制度の検討を始める。そして昨年末には経産省から「プレミアムフライデー」の導入が発表された。今のところ賛否両論があるが、働き方改革の中では目玉政策とも言えるだろう。また、月に一度の金曜日、3時に退社した後の消費購買を促すイベントや企画も発表しており、「お1人様」商戦や家族割サービス、ハッピータイム割などの施策に乗り出している。

しかしながら、仕事以外に生き甲斐がない、毎日家と会社の往復だけ、趣味がない、家には自分の居場所がない、一緒に遊ぶ友達がいない、とにかくお金がない……などなど、休暇をとらない様々な影の要因も存在する。

制度が整いつつある中、有休取得への罪悪感を払拭する啓蒙活動を行い、個々のニーズにあった楽しみ方を提案していくことで、今まで余暇消費に消極的だった消費者層を獲得できるだろう。

インターネットの発展によって消費者の生き方や消費傾向も多様化している。この国のトレンドはあまりにも流動的だ。それでもマーケティング担当者の使命は、いつの時代にあっても企業と消費者の幸福の追求だ。2017年、マーケティングの力で日本人のQOLにどのような変化が生まれるかが楽しみだ。

(文:平野美弥子 編集:田崎亮子)

平野美弥子氏は、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのシニア・ナレッジ・アンド・インサイツ。

提供:
Campaign Japan

フォローする

トップ記事と新しいキャンペーン情報

速報メールを受け取る

併せて読みたい

Premium
配車サービスの新しい広告媒体、マレーシアからアジアへ
Premium
1 日前

配車サービスの新しい広告媒体、マレーシアからアジアへ

1月下旬、マレーシアでは配車サービスの「ウーバー」と「グラブカー」に、新しい広告媒体が搭載される。

Premium
猫の駅長「たま」、死後も続く広告効果
Premium
1 日前

猫の駅長「たま」、死後も続く広告効果

昨年死んだ猫の「たま」が駅長に就任したのは10年前。鉄道の駅には、これから大いに活用できる可能性が秘められている。

Premium
広告業界の「働き方改革」に向けて
Premium
2017年1月12日

広告業界の「働き方改革」に向けて

電通・新入社員の過労自殺が労災認定された昨年の10月。以後、広告業界では働き方の見直しが急務となった。Campaignでは業界から幅広い参加者を募り、この課題を討論する場を設けた。そこから見えてきたものとは。

Premium
英国広告界、「若さ崇拝」の弊害
Premium
2017年1月12日

英国広告界、「若さ崇拝」の弊害

昨今、英国の広告業界に蔓延する「若さ」を優先する価値観。これではいずれ、業界は行き詰まってしまうだろう。「他のクリエイティブな世界には見られない傾向」と、バートル・ボーグル・ヘガーティ(BBH)社の創業者ジョン・ヘガーティ卿は警鐘を鳴らす。