Faaez Samadi
2016年8月16日

「マイクロ・モーメント」で、アジアの消費者をつかむ

アジアはすでに米国を追い越した ― グーグルの最新調査では、モバイルデバイスが急増したアジアは、デジタル・マーケティングで世界の最先進地域になったという。

「マイクロ・モーメント」で、アジアの消費者をつかむ

グーグルと調査会社イプソスが共同で作成した報告書によれば、デジタル・マーケティングとeコマースの分野で、アジア太平洋地域は世界の新たな中心地となった。その要因は、モバイルデバイスの急激な普及にあるという。

グーグルは、アジア太平洋地域のモバイルユーザーの行動に関する調査を行った。それによると、スマートフォンの普及率で世界上位10ヵ国のうちアジアが4ヵ国を占め、同率で4位のシンガポールと韓国が90%以上。米国は72%、日本は60%以下にとどまった。

グーグル・アジア太平洋地域のチーフ・マーケティング・オフィサーであるサイモン・カーン氏は、「消費者の行動パターンは、デジタル・モバイル革命の影響で変わりつつあります。アジア太平洋地域はその最先端を行っている」という。

アジアの消費者はオンライン・リサーチを活用するので、米国の消費者より商品の購入を決めるまでの時間が格段に短い。アジアの9ヵ国の市場で少なくとも85%のスマートフォン・ユーザーが迅速な消費行動をとるのに対し、米国では60%だ。カーン氏はその主な理由として、「モバイル主導のアジアの消費者はモバイルに対する期待値が大きいから」という。
「誰もがスマートフォンを持ち歩き、いつでもどこでも欲しい情報にアクセスできる。消費者は豊富な情報にアクセスできることはもう当たり前と考えていて、彼らにとってスマートフォンは検索ではなく、購入をするための手段になっています」

eマーケターの調査結果によれば、今年の世界のデジタル広告費に占めるアジア太平洋地域の割合は34%で、世界最大規模だ。さらにモバイル広告費でも、アジア太平洋は2017年までにトップになると予想されている。新しいブランドに対してオープンなアジアの消費者の特性は、マーケターやブランドにとっては重要なカギであり、デジタル広告市場が成長した要因であるともグーグルは見ている。大多数の消費者は買いたいと思うブランドがよくわかっておらず、マーケターにとってはオンライン上の「マイクロ・モーメント」を捉えて消費者を獲得できる大きなチャンスなのだ。

インドネシアや香港、タイでは80%以上の消費者が、スマートフォンで必要な関連情報を得たことがきっかけで(つまりブランドがマイクロ・モーメントを捉えたことで)、普段は馴染みのないブランドの商品を購入したと答えている。同じような行動をとった消費者は米国で33%、日本では55%にとどまる。
「この調査結果は、ブランドがターゲットとする消費者のマイクロ・モーメントを明確化しなければならないことを表わしています」とカーン氏。「特にアジアの消費者は、購買の際に頭をフル回転させる。より良い選択のために、できる限り多くの情報を収集しようとします」。

さらに詳細な分析では、アジアの消費者は米国の消費者と比べ、参考になるビデオや、ニーズに応じてローカライズされたコンテンツがあるアプリ、及びモバイルサイトなどを提供しているブランドから多くの商品を購入する傾向があるという。

またアジア太平洋地域では、モバイルの使用が活発なほどオンラインでも実店舗でも売上が伸びるという結果が出た。この地域では極めて多くの消費者(例えばタイでは91%)が、店舗検索機能を使う。ベトナムでは消費者の95%もが、店舗内でもモバイルデバイスを使い続けるというのだ。
「結局、適切な情報を適切な瞬間に届けるということに尽きるのです」とカーン氏。さらに調査結果は、「アジアの消費者がオンラインでのつながりを求めていることも示しています」。最良のコンテンツを使って消費者と「正しく」関わり合えば、同地域でも普及してきた広告ブロッカーなどの障壁を乗り越えることができるというわけだ。

「広告ブロッカーは、業界の長年の課題を反映していると言えるでしょう」とカーン氏。「単に鬱陶しいだけの広告なら、広告ブロッカーで止めたいと思うのは当然です。しかしブランドが広告であれその他のコンテンツであれ、有益な情報を提供すれば消費者は受け入れるのです。考慮すべきは、興味をもってもらえるような情報を、適切なタイミングで提供することに他なりません」。

グーグルはこの調査結果を、デジタル・マーケティング戦略、特に「グーグルプレイ」や現在はオーストラリアのみで利用可能な「ユーチューブレッド(YouTube Red)」のような消費者と直結した配信サービスに生かしていくという。
「こうした配信サービス向けの広告を対象別に絞り込むため、我々はデータを活用しています。さらに、共感を得やすいコンテンツの理解にも役立つ。マイクロ・モーメントごとにタイプの異なるコンテンツを提供することも考えられるのです」。

(文:ファーエズ・サマディ 翻訳:高野みどり  編集:水野龍哉)

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