1. 再びスポットを浴びる、「透明性」
トヨタへの過剰請求が発覚、電通が窮地に陥ったのはほぼ1年前のことだった。そして今週、ロンドンを拠点とする電通イージス・ネットワークの子会社フェッチ・メディアを、ウーバーが詐欺及び過失責任、契約不履行で告訴した。フェッチは日本でも事業を始めたばかり。ウーバーはフェッチに「虚偽のクリック数」を売られたとして、4000万米ドル(約44億円)の賠償金を要求。また、ネットワークやパブリッシャーから受け取った多額のリベートや手数料、割引額を返金せず、過剰な支払いをさせられたという。フェッチはこの申立てを否定、受け取るべき報酬が支払われていないと逆にウーバーを非難している。
真実が判明するまでしばらく時間がかかろうが、この一件が示唆することは明白だ。つまり、透明性という課題はいまだにマーケターにとって未解決であるということ。今週、Campaignの取材に応じたP&Gのマーク・プリチャードCBO(チーフブランドオフィサー)は「透明性のことを考えると夜も眠れない」と話し、「その欠如はマーケティングにとって唯一最大の脅威。詐欺やたかりのような行為と広告のビューアビリティの低さが巨額の浪費を生んでいる」と指摘した。
2. コンサルティング会社による買収は「質の保証」、という考え方
マッキンゼー・アンド・カンパニーが、マレーシアの広告代理店VLT傘下にあるVLTラボを買収した。買収額は公表されていない。マッキンゼーにとっては東南アジアにおける初の企業買収で、UXデザイン(ユーザー体験のデザイン)やSEO(Search Engine Optimisation、検索エンジン最適化)などのサービスを手がけていく。VLTラボのアンドリュー・タンCEOは「いつか我々もマッキンゼーと張り合うようになるかもしれない、などと冗談を言っていたのですが……。この買収は我々の仕事にお墨付きを与えてくれます」と語った。
3. アマゾン、初のウェアラブル端末でグーグルに対抗
eコマース界の巨人が、人工知能(AI)による音声パーソナルアシスタント「アレクサ(Alexa)」を搭載したスマートグラスを開発中だ。グーグルグラスを開発したババク・パーヴィス氏が2014年にアマゾンに移籍、以来このプロジェクトに携わってきた。グーグルは音声アシスタント分野でのアマゾンの直接的なライバル。報道によると、アマゾンのスマートグラスは未来的なデザインではなく、ごく普通の眼鏡のような外観になるという。
4. 質の高い新聞は、やがて全てデジタルになる
高級日刊紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、香港とシンガポールで紙版の発行を停止すると発表した。フィナンシャル・タイムズは今夏、WSJがデジタル版の購読者拡大に注力するため、米国外での紙版の発行の縮小を検討していると報じていた。これは決して驚くようなニュースではない。プライスウォータークーパース(PwC)によると、アジア太平洋地域の新聞広告収入は2013年がピークで、以後何十年にもわたって下がり続けるという。いずれにせよWSJは、米国でも同じ道を辿るだろう。だがそれは決して悪いことではない。紙の新聞にはまだ十分価値があるが、日々のニュースを伝える媒体としてはもう見なされていないからだ。
5. 時代を読み違えたニコンから学べること
ニコンが、今の時代の流れに驚くほど鈍感なキャンペーンを立ち上げた。新製品のカメラ「D850」のプロモーションとして選んだブランドアンバサダーは、32人の男性。豪州を含むアジア全域やアフリカで展開されるにもかかわらず、アンバサダーには女性が1人も含まれていないのだ。ソーシャルメディア上では非難の声が起きたが、ニコンは「依頼した女性写真家たちは皆都合がつかなかった」という弱々しい言い訳をし、悪い状況を更に悪化させてしまった。このキャンペーンで多様性を打ち出せばライバルたちに水をあける機会になり得ただけに、残念な失敗例だ。最近ではソニーも、58人のグローバルアンバサダーの中で女性を8人しか選ばず、批判を浴びている。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)