あっと言う間に1年の4分の1が終わり、ゴールデンウィークも目前。この5月には、Campaign Japanは発刊から1年を迎える。
歴史認識を甚だしく誤解した企業経営者や、コーポレートレピュテーションの危機、オンライン広告の危険性に対する認識の欠如……今年も広告業界は話題に事欠かない。ここで改めて、これらのニュースの意義を検証する。
どのような記事がよく読まれ、読まれなかったのか − 我々編集スタッフの予想に反するものもあったが、Campaign Japanの読者と米・英・アジア諸国のそれとは概ね興味の対象が一致した。最もアクセス数が多かったのは、広告代理店の代わりにAIを起用したブランドにまつわる記事。AIに対する危機感は既にマーケティング業界にもあるが、この新しいテクノロジーをどのように役立てていくかという肯定的な見方のほうが上回っている。
実際、広告業界の体質はポジティブだ。だが、企業文化や商慣行の問題を忘れてはならない。2番目に反響があった記事は「私が広告界を去った理由」で、元広告マンの業界に関する手記。「もはや広告には真の変革を生み出す力はない」という彼の結論には、おそらく我々の多くが賛同しないだろう。だが、いまだに広告がブランドに対する認識を左右すると信じている人々にとっては、強い警鐘になったはずだ。
世界最大の広告主のチーフマーケティングオフィサー(CMO)が、広告代理店とクライアントの将来的な関係性について懸念を表明した。その中で彼は、「単縦明快であるべきことが訳もなく複雑化されている」と指摘。代理店やコンサルタントの責務は真に重要な課題を抽出することであって、プロセスを煩雑にしたり、クライアントの指示に盲目的に従ったりすることではない。我々は改めて、彼の忠告を肝に銘じなければならないだろう。
一部の代理店やアドテク企業は過度にプログラマティックバイイングを複雑化させ、そのリスクについてクライアントに十分告知しないなど、明らかに非がある。広告主の意図に反してテロ組織をサポートしてしまったり、不適切なコンテンツに広告が掲載されたりといった被害が海外で明るみに出たが、日本のマーケターはそれほど気にかけていないようにも思える。もちろん、より高い透明性を望む声は業界全体にあるが、その風潮は果たして強まっているだろうか。否、決してそうは思えないのだ。マーケターが自らの仕事に真剣であるなら、メディア戦略やマネージメントにより責任を持つべきだろう。
昨年は、過重労働の解消がその他の課題をほとんど覆い隠してしまうほど大きな議論となった。今年に入ってもその風潮は弱まる気配がなく、効果的な改善策が期待されている。電通への捜査は継続しており、今月に入って厚生労働省は同3支社を書類送検、山本敏博社長を任意で事情聴取したことも分かった。他の広告代理店も、労働環境の改善に向けた独自の対策を進めて行く姿勢だ。この問題がうやむやにならぬよう、今後も業界全体で目を光らせていくことが大切だろう。
若年層は搾取的な労働環境では犠牲者になりがちだ。だが広告業界は、シニア層に対しても厳しい環境なのは周知の事実。年齢による差別と燃え尽き症候群は大きな課題となっている。業界が今後も競争力を維持していくには、人材にプレッシャーを与え続ける慣習を変え、「経験」にも「若さ」にも同等の価値を与えるよう変わらなければならない。そして広告に携わる人々全てが常に「学習」でき、成長していけるような環境を整える必要があるだろう。
この1年間、Campaign Japanをご愛読いただき、誠に有難うございました。皆様が充実したゴールデンウィークをお過ごしになられるよう、心からお祈り申し上げます。なお、連休中のニュースレターはございません。フェイスブックでフォローしていただきますと、連休明けにアップデートをお知らせ致します。今後とも、Campaign Japanを宜しくお願い申し上げます。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:高野みどり 編集:水野龍哉)