Staff Reporters
2020年6月18日

世界のメディア広告、420億ドル減

今年のメディアの全世界広告収入は7.2%減、来年は6.1%増という予測が出た。

世界のメディア広告、420億ドル減

IPGメディアブランズ傘下のマグナグローバル社が広告市場予測を発表した。それによると、今年のメディアのネット(純)広告収入はEMEA(欧州、中東及びアフリカ)が対前年比9.8%減、APAC(アジア太平洋)8.5%減、北米4.4%減、中南米9.9%減となる見通し。全世界では7.2%減で、換算すると420億米ドル(約4兆6000億円)の減少となる。

昨年、世界で5820億ドルだった広告収入は今年5400億ドルに。従来型メディア(テレビ、印刷物、ラジオ、OOH、映画)が16%減の2380億ドル、デジタルメディアは1%増の3020億ドルとなる。

主要市場で最も深刻な打撃を受けるのは日本とスペイン(共に14%減)、フランス(13%減)、イタリア(15%減)など。逆にダメージが少ないのはインド(2%増)、中国(6%減)、米国(4%減)。米国は11月に行われる大統領選挙関連の広告が減少幅を抑えるという。

従来型メディアの広告収入の内訳を見ると、テレビ広告が12%減、印刷媒体32%減、ラジオ15%減、OOH(アウトオブホーム、交通広告や屋外広告など)22%減、映画40%減。

来年は世界経済の復調と大型スポーツイベント(東京五輪や欧州サッカー選手権)に支えられ、全世界の広告収入は6.1%増で5730億ドル。地域別に見るとEMEAが7.1%増、APAC8.1%増、中南米6.7%増、北米4%増。それでもコロナ禍以前の昨年と比較すると、90億ドルの減少となる。


 


APAC市場

APAC市場の今年の広告収入は対前年比8.5%減、1630億ドルとなる見通し。従来型メディアは16.5%減となる一方、デジタルメディアは横ばい。来年は8.1%増で1750億ドルだが、昨年の水準にはまだ戻らない。

それでも今年、APACは北米に次ぐ世界第2位の市場規模を維持し、EMEA(今年の広告収入は1310億ドル)との差を広げるという。

APACにおける全広告費のうち、68%を占めるのは中国と日本。成長を支えるのは一人当たりの広告費が10ドルに満たないインドとパキスタンで、共に2%増。減少幅が最も大きいのは香港で、24%。以下、マレーシア(18%)、フィリピン(17%)、日本と続く。

「APACの広告収入は今後もデジタルメディアに支えられていく」と話すのはIPGメディアブランズのAPAC担当CEO、リー・テリー氏。「コロナ後の経済情勢を踏まえ、各ブランドは広告費の見直しを図っています。優先されるのは売上に直結する支出。検索連動型やソーシャル広告、パフォーマンスビデオが引き続き中心となり、eコマースの成長を推進していく」。

以下、各市場のポイントをまとめる。

  • 中国:2020年のメディア広告収入は6%減で、マグナが市場予測を始めてから初の減少。全広告収入に占めるデジタルメディアの割合は69%。2021年は全体で6.8%増が見込まれ、2019年の規模を若干上回る。
  • 日本:2021年は経済が安定、東京五輪の効果もあって広告収入は11%増。
  • 豪州:2020年の広告収入の64%はデジタルメディアで、その規模は世界有数。2021年の全広告収入は6.9%増だが、2019年の規模を上回るのは2022年となる。
  • インド:2021年はすべてのメディアで広告収入が増加。従来型メディアは5%増、デジタルメディアは17%増。全体で9%増となる。
  • 韓国:2020年は従来型メディアが21%減となるが、デジタルメディアは3%増。2021年の全広告収入は7%増。2019年を上回る水準に戻るのは2024年(対2019年度比で3%増)。
  • インドネシア:2020年の広告収入は12.6%減。2021年は10%増だが、過去最大を記録した2019年の規模を上回るのは2022年。
  • タイ:2020年の広告収入は8.9%減。デジタルメディアは4%増だが、2019年の成長率22%には遥かに及ばない。それでも世界的不況の中では堅調な数字。
  • 香港:2020年の従来型メディアの広告収入は34%減で、全広告費の65%を占める。テレビは40%減。全広告収入が過去最大だった2018年の規模を上回るのは、2024年。
  • マレーシア:2020年の広告収入は18%減。そのうち従来型メディアは32%減、デジタルメディアは8%増。
  • 台湾:2020年の広告収入は2.6%減。2021年は3.5%増となり、2019年の規模を上回る。
  • フィリピン:2020年の広告収入は17%減。従来型メディアは19%減、デジタルメディアは6%増。
  • シンガポール:2020年の広告収入は5.5%減。従来型メディアは9%減、デジタルメディアは6%増。
  • ニュージーランド:2020年の広告収入は8%減。従来型メディアは14%減、デジタルメディアは横ばい。2021年は7%増だが、2019年の水準に戻るのは2022年。
  • ベトナム:2020年の広告収入は5.8%減。従来型メディアは9%減、デジタルメディアは15%増。
  • パキスタン:2020年は従来型メディアが5%減となるが、デジタルメディアは引き続きふた桁の成長を遂げ、18%増。2021年の全広告収入は2%増だが、過去最大だった2017年にはわずかに及ばない。

(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)

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