David Blecken
2017年2月03日

地方創生、地元の若い才能に賭ける

高校生が制作した市のPR動画には、若い人たちにふるさとの温かさに気付いてもらいたいとの思いが込められている。

地方の市町村にとって、若い人の移住促進はもちろんのこと、観光客をいかに増やすかも、以前から課題になっている。宮崎県小林市は、役所で頭をひねるよりも、地元の若者たちのクリエイティビティーを生かすことで、視聴者の心に響くメッセージを発信したいと願っている。

その最も新しい取り組みは、電通の監修のもとに地元の高校生29人からなるグループが制作したPR動画だ。そのうち何人かはこの動画に出演もしており、小林市の住民がいかにフレンドリーかを間接的に表現している。若者たちは他者とあまり関わりを持ちたがらない。そんな傾向に着目したこの動画には、大人に見つからないように極端な遠回りをして下校する高校生の姿が描かれている。主人公の女子高生が自宅を目の前にほっとしたのもつかの間、彼女は近所のおばさんに声を掛けられてしまう。おばさんのムスッとした顔つきにひるむ主人公だが、笑顔であいさつすると雰囲気は一変。二人は暗くなるまで話し続けることに。動画は「一度捕まったら、逃げられない。スーパー・フレンドリー・タウン」と締めくくられる。

電通でこのプロジェクトを手掛けたコミュニケーション・プランナーの越智一仁氏によると、小林市は2030年までに人口の半分以上が高齢者になることが予測され、「今にも消えてなくなろうとしている町」だという。「小林市の若者たちが一緒になって、他の地域の若い人たちが小林市に移住したいと思えるようなアクションを起こすことが大切です」と越智氏。電通は5カ月間にわたって地元の高校生に向けたワークショップを開催し、企画立案やCM制作の過程を教えていった。ワークショップを通じて出来上がったPR動画は、昨年秋にオンラインで公開されるとともに地元テレビでも放映され、さらに、主要メディアでも広く取り上げられた。

Campaignの視点:
初めは「またお決まりの、女子高生の動画か……」との思いがよぎった(日本人の大人にとって、女子高生は懐古の情をかき立てるものだという)。しかし、このPR動画はそれだけにとどまらない。若い人たちが他人と関わりを持ちたがらないという着眼点は、現実をよく捉えている。また、どこにいようともその地域の良さを最大限に引き出すためには、積極的に地域社会の一員になることが重要だということを、動画のエンディングは改めて思い出させてくれる。小林市のような地方の市町村が検討するべき大きな課題は、才能を伸ばしてキャリアを築きたい若者たちにふさわしい環境を、長期的に提供できるかどうかだ。このPR動画を制作した高校生たちは、最終的に地元に残ることを選ぶのか、東京に出て電通のような企業への就職を目指すのか。取り組みの成果は、このような形で試されることになるのだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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