David Blecken
2016年7月08日

マーケターはより確実な透明性と専門性を求めている – Essence 松下恭子

松下恭子氏は、昨年11月にグループエム(GroupM)が買収したデジタルメディア・エージェンシー「Essence」の日本・アジア太平洋地域のマネージングディレクターだ。なぜ日本のマーケターが広告会社に新たな方向性を求めているのか、そして、なぜ新技術への理解を得るためには敵を作ることもやむなしと考えているのか、デイビッド・ブレッケンが聞いた。

松下恭子氏
松下恭子氏

米国や欧州で育ち、広告会社とクライアントの両サイドでの経験が豊富な松下氏が、Essenceに入社したのは2014年。現在は東京が拠点だ。直近では、モバイルゲーム分野でGREEの海外進出を指揮していた。そんな松下氏が、従業員の1/4がエンジニアというEssenceの独自ツール開発への情熱に魅せられ、マーケティングの世界に戻ってきた。Essenceにとって、Googleなどの顧客にサービスを提供し、収益の多くを生み出す日本は、アジアにおける重要な市場だ。

データの使用について、日本は後進国だとお考えですか?

米国と比較した場合、確かに日本は、データ集計・分析の仕組みが整っていない点で遅れをとっています。多くのマーケターがいまだに「広告を見た人数」といった類のデータを広告会社から示されていますが、そのリーチの質は分からなかったりします。例えば、同じ広告を20回見た人がいるとしましょう。データ上は、その人に20回リーチしたことになりますが、それがその人の購買意欲につながるかといえば、おそらく過度な露出のせいでネガティブな印象を持ち、買わないでしょう。

何が変化しているのですか?

トラッキングが随分とできるようになり、ビューアビリティ(可視性)も検証できるようになりました。ある人が広告を見た、ということだけでなく、その人が一回につき何秒、合計で何回見たか、つまり関心を持ってもらったのか、ということまで分かるようになりました。また、広告が問題なく伝わったかということも、技術によって把握できます。多くのマーケターが、このような品質測定型のデータを求めています。もちろん、データの提供は可能ですが、そのためにはパブリッシャーの協力が必要です。トラッキングを実施するにはツールが必要ですが、多くのマーケターはその存在を知らないのではと思います。

なぜ、今になってそのようなニーズが生まれたのでしょう。

消費者行動が原因です。以前は、マスにリーチするための主要メディアはテレビでした。しかし、今日の消費者はテレビをそれほど視聴せず、携帯電話やタブレットの方に時間を割いている。中国のような市場でもインターネットに費やす時間は多いのですが、特に日本の消費者は、テレビに費やす時間が明らかに減っている。そういう背景から、マーケターたちは社内で「なぜ予算の70~80%をテレビに使い、デジタルには20%しか投入していないのか」と問い詰められているのです。

マーケターたちも、コミュニケーションの舞台が携帯電話などのモバイル端末に変わってきていることを理解し始めています。そのため、人々の時間の使い方が変化する中で、行動に駆り立てるトリガーが何なのかを把握することが命題になっています。例えば、みんな朝は購入せずに情報だけを求めていて、仕事が終わってから情報を再確認して購入するかもしれない。そういうマイクロモーメントを理解することが非常に重要なのです。

なぜ、日本ではプログラマティック技術の導入が遅れたのでしょうか?

日本は、広告インベントリが不足しているために、マーケターがプログラマティック・プランニングやプログラマティック・バイイングに前向きでない国として知られています。ただ実際には、主要なプレミアムインベントリを購入できるほど潤沢であることは数字が示しており、マーケターの見解と現実には相違があるともいえます。

こういった状況を変えるには、知識の共有が必要ですし、インベントリが十分にあることをパブリッシャーも発信していかなくてはなりません。いろんな立場の方々が集まって、何を利用できて、どのように届けていくのか、協議していく必要がありますね。

本来ならばデジタルエージェンシーがこういった局面で力を発揮するはずなのですが、日本のデジタルエージェンシーの多くは、プログラマティックの導入に消極的です。良い結果に結びつくか分からないことが、その理由です。なので、誰かがフロンティアとなって、リターンがあることを示すことが大切です。また実例が公開されれば、「よし、やってみよう」という人が出てくると思います。ちなみに米国ではメディアの60%がプログラマティックです。良し悪しの問題ではないのですが、時間を要するところですね。マーケターとしても、何らかの保証は必要ですから。

このような技術の進歩についていく中で、マーケターたちにとって難しい部分は何でしょうか?

多くのマーケターが、どのようなデータにアクセスできるか知らないのが実情で、私もしばしば驚かされます。デジタルというのはKPIだけでなく、キャンペーンの質を向上するためのさまざまな手段を提供してくれるものです。どういった部分を検証すべきかマーケターたちに助言し、エージェンシーには数値以上のデータを提供するよう要請するのが私の仕事です。ここは、特に日本の方々に理解していただきたい部分です。

デジタルの世界においても、透明性の問題はあります。リベートについても、何も聞かず何も見せないという不文律があり、グレーゾーンといえます。マーケターが$100万米ドルをデジタルに投入しても、その資金がどのように使われて、マーケターへのリターンがどれほどあるのかが不明瞭です。このような慣習は持続可能とはいえません。こういうことを言うと敵を作ると思われるかもしれませんが、マーケターたちが変化を望んでいる以上、それに応えられるよう努力を続けることが私たちの責務なのです。

1年後、どのような状況になっていると思いますか?

マーケティングにおける成功とは、なにもメディアに関するものだけではありません。良い結果を得るためには、メディアとクリエイティブが互いに協力する必要があります。1年後にはマーケターが、メディアとクリエイティブの領域でのスペシャリストを求め、彼らとの協働を望むようになっているのではないでしょうか。このような変化は今後ますます加速していくと、私は確信しています。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:CLS 編集:田崎亮子)
 

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Campaign Japan

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