Ryoko Tasaki
2022年9月30日

世界マーケティング短信:タスクが山積みのSDGs

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:タスクが山積みのSDGs

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

SDGs達成のためのToDoリスト、その進捗は…?

先日ニューヨークで開催された国連総会に合わせ、SDGsの目標達成に向けた取り組みをより一層強化するよう求めるキャンペーンを、非営利団体「プロジェクト・エブリワン(Project Everyone)」が公開した。動画は昨年のキャンペーンの続編となっており、タスクが書かれた巨大な付箋紙が風に吹かれて剥がれ、ニューヨークの国連本部ビルに貼り付く。

BGMはボブ・ディラン『風に吹かれて』だが、動画の最後で「世界の問題への答えは、風の中に吹かれているわけではない」、そして残された時間は少なく、ToDoリストに書かれたタスクを終える必要があると示される。制作はアクセンチュア ソングUK。プロジェクトには横浜市の他、世界のさまざまな都市が参加し、著名な建築物に付箋紙を張り付けた画像をSNSで公開している。
 

航空会社の環境負荷への責任、看板広告ジャックで批判

アクティビスト集団「ブランダリズム(Brandalism)」が欧州の複数の都市で、500カ所もの看板広告をジャックし、航空業界の気候変動への対応が不十分だと批判した。航空機の利用による二酸化炭素排出量がいかに大きいかを浮き彫りにし、航空業界で設定したサステナビリティの目標もほとんど達成できていないと指摘する。たとえば「世界初の機内ゴルフコースで、ビジネスクラスをグリーンに変えます」と書かれたダレン・カレン氏の制作したポスターは、ビジネスクラスの二酸化炭素排出量がエコノミークラスの約3倍に上ることを風刺している。

「ひんぱんに航空機を利用するといったカーボン排出量の高いライフスタイルは、広告業界が意図的に作り出したもので、改められる様子もない」と語るのは、ブランダリズムに参加するトナ・メリマン氏。「オグルヴィ、VCCP、電通、DDBミュンヘンなどエージェンシーは、ブリティッシュ・エアウェイズ、イージージェット、KLM、ルフトハンザといった航空会社との仕事によって排出量を押し上げていることを、よく検討する必要があります。エージェンシーの従業員には、カーボン排出量の多いクライアントの仕事を拒否するよう呼びかけます」。


戦争由来のマーケティング用語で、ウクライナへの関心を喚起

今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻が長期化し、人々の関心の低下が懸念されている。6月にはウクライナのゼレンスキー大統領がカンヌライオンズにビデオ出演し、「世界の関心が別のことに切り替わってしまわないよう、力を貸してほしい」と訴えた。このような中で、ニューヨークのクリエイティブエージェンシー「RXMクリエイティブ」が、マーケティングやコミュニケーションに携わる人々にできることはないかと考え、「warlingo」を立ち上げた。

ストラテジー、ローンチ、キャンペーン、ターゲット、エグゼキューションなど、なじみの深い業界用語には戦争用語が由来になっているものが多い。warlingoの検索バーにURLを入力すると、そのサイトで使われている戦争由来の用語の数と、それに応じた寄付金額、支援団体の候補が表示される。

戦争由来の用語を使うことで「パートナーや事業、クライアントを、敵へと変換しています」と語るのは、RXMクリエイティブの共同創設者兼クリエイティブディレクターのミハイ・ボタレル氏。「それが、プロジェクトを覆う全体の雰囲気を、闘争的なものにしています」。サイトの目的は、用語の使用を非難することではなく、用語が与える影響や、マーケティングによって改善できることについて考えるきっかけになること、そしてウクライナで今も続く戦争について思い出してもらうことにある。
 

BBC、放送ガイドラインで報道の姿勢を表現

英国放送協会(BBC)は正確かつ公平な報道を担う放送局としての姿勢を示すため、番組制作のガイドラインの一部を引用しながら、同局のジャーナリストが取材する様子を一本の動画にまとめた。インタビュー中に鳴り響く銃声や、爆発音に伏せる取材班、破壊された建物など、番組制作の舞台裏が生々しく映し出される。制作はBBCクリエイティブ(BBC Creative)。

「今、世界に発信するメッセージとして、これ以上に適切なものは想像できません」と語るのは、BBCクリエイティブでクリエイティブディレクターを務めるラスマス・スミス・ベック氏。「ガイドラインに命を吹き込み、BBCへの信頼は日々継続的に勝ち得ているものであると示せるのは、非常に光栄なことです」。なお、ガイドラインの全文はこちらから閲覧できる。

【お知らせ】

マーケティング、メディア、コミュニケーション領域の新進気鋭のリーダーを選出する、Campaign Asia-Pacific主催「40 Under 40」のエントリーが今年も始まりました。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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