Ryoko Tasaki
2023年4月21日

世界マーケティング短信:意識変革に挑む広告キャンペーン

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:意識変革に挑む広告キャンペーン

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

長年の家事分担の不平等が溝を作る アリエール

P&Gの洗剤ブランド「アリエール」がインドで2015年から展開している「Share The Load」キャンペーンは、男性の家事参加を訴求し続けてきた。今回公開された動画では、長年の不平等な家事分担がパートナーとの関係に与える影響にフォーカスしている。

娘が両親を映画に誘うが、母親は家に残る。映画館に向かう途中で、「喧嘩でもしたの?」と問いかけると、父親は「喧嘩があったならよかったけど、もっと別の原因」と語り始め、二人の間には奇妙な距離感があり、これは長い時間をかけて溝ができたのだと振り返る。「仕事も家事も育児もすべて一人でこなし、あまりにも長い時間与え続けてきたお母さんは諦めてしまったのかもしれない」という言葉に、父親は家に帰って家事を負担し、話し合うことを決める。企画・制作はBBDOインド。


 

eスポーツに親が登場、健康的な食事をアドバイス

eスポーツで活躍するには、高いパフォーマンスを発揮するための健康管理が重要だ。しかし練習やイベント、ライブ配信に多くの時間を割き、食事をファストフードなどで済ませてしまうこともあり、これがプレーヤーの家族を不安にさせているという。

そこでサノフィの整腸剤ブランド「エンテロジェルミーナ(Enterogermina)」がブラジルで実施したのは、トップゲーマーの親をアバターにし、自身の子どもがプレーするセッションに乱入させるという施策だ。困惑するプレーヤーに、アバターに扮した保護者は健康的な食事をするよう諭す。

エンテロジェルミーナにとってブラジルは重要な市場だ。これまでは母親をターゲットにしたマーケティングが主軸だったが、「現在ならびに将来の世代のセルフケアを促進し、健康を改善するために仮想空間を活用すること」が今回の目的だと、サノフィ・ブラジルのコンシューマーヘルス部門マーケティングディレクター、マリリア・ザノリ氏はコメントする。

READY PLAYER MOM_MRM SPAIN from MRM Purple Distillery on Vimeo.

ペットに有毒な食品の警告ラベル ニュージーランド

人間には害がないものの、犬や猫に与えると中毒症状を引き起こす食べ物がある。ブドウ、アボカド、タマネギ、ニンニク、カフェインなどがその例だ。だが飼い主にその知識がなかったばかりに誤って食べてしまい、嘔吐や貧血などの症状が発生したり、命にかかわることもある。

そこでニュージーランドのサザンクロス・ペット保険はニュージーランド獣医学協会のもと、警告ラベルを作成した。食品メーカーがパッケージに使用できるラベルや、チラシ、ガイドラインなどをダウンロードできるようになっている。同社の製品&マーケティング責任者であるブリジット・ミュア氏は「製造業、サプライヤー、小売業の皆さんにはパッケージやコミュニケーションに、ぜひこのシンボルを使ってもらいたいと考えています」と語る。

Southern Cross Pet Insurance - Paws Off! Warning Symbol 45" from TBWA New Zealand on Vimeo.

AI、キットカットの広告を制作

ブレイク(休憩)をとろうと呼びかけるキャッチフレーズが世界的に有名なキットカットが、「広告制作者も休憩できるように」とAIを使用した広告を公開した。AIに「Z世代のような話し方で広告を制作して」「ゲーマーについての広告を制作して」といった指示を与えたところ、「まずまずの出来」のスクリプトが生成された。これを画像生成AIへのプロンプトとして入力し、「ほぼ問題のない」レベルの画像が仕上がったという。企画・制作はワンダーマン・トンプソン・パース。

ワンダーマン・トンプソンのチーフクリエイティブオフィサー、ジョアン・ブラガ氏はこう語る。「キットカットによって寛ぐことができ、AIはさらに多くの休みを提供してくれます。だから自分たちで試してみて、AIを茶化してみようと考えました……まだそれが可能なうちに」。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

フォローする

トップ記事と新しいキャンペーン情報

速報メールを受け取る

関連する記事

併せて読みたい

4 日前

世界マーケティング短信:プレス機で破壊するアップルの動画が物議

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2024年5月08日

巨大IT企業、AIコストを増大

アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフト……大手IT企業が相次いで設備投資を増やしている。注力するのは、AIの性能を高めるコンピューティングリソースだ。

2024年5月08日

ソーシャルメディアでユーモアを発揮するには、文化盗用に用心を

オーディエンスとのつながりを求めるブランドは、真正性さに欠ける言葉を使わないように――。アレン&ゲリッツェン(Allen & Gerritsen)のPRアソシエイト、タイラー・ブリンダムール氏はこのように説く。

2024年5月08日

なぜ一部のブランドは、生成AIの活用に慎重なのか?

昨年のAIブームの熱狂と興奮が収まりつつある今、一部のブランドやエージェンシーがリスクを回避するためAI導入に懐疑的な姿勢をとっている。その理由をCampaignが探った。