David Blecken
2019年3月28日

世界マーケティング短信:CEOがCMOに期待すること

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真:Shutterstock
写真:Shutterstock

CMOは本当に改革を望んでいるのか?

アクセンチュアの調査で、経営レベルの社内改革を推進するマーケティング責任者はわずか17%に過ぎないことが分かった。「Way Beyond Marketing」と題された報告書は、改革におけるCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の役割と関わり方を調査したもの。日米を含む世界12か国1千人のCMO、500人のCEOを対象とした。

フォレスター社が先月発表した調査報告書では、CMOは改革やビジネス戦略を進める上で蚊帳の外にいることが分かった。だが今回の調査では、CEOの3分の1がCMOに成長を牽引してほしいと望んでいることも判明。特に期待されているのは、顧客データやインサイトに基づいて新商品やサービス、顧客体験を創出することだった。

改革に関わろうと関わるまいと、CMOは顧客体験を生み出すことに長けているはずだ。この調査では、CMOが顧客体験を創出する企業ではライバル社に比べ株主への配当が11%高いことも分かった。「顧客体験」という言葉には多くの定義があるが、いずれにせよ、いまだ多くのマーケターが注力するブランドの新キャンペーンや良質のコンテンツのチェックだけでなく、はるかにたくさんの意味があるはずだ。

マクドナルドもパーソナライズ化に便乗

マクドナルドが3億米ドル(約330億円)を投じ、イスラエルのIT企業ダイナミック・イールド(Dynamic Yield)を買収することが分かった。同社の専門は消費者の新規購入に関するデータ分析。マクドナルドは「よりパーソナライズ化された顧客体験の提供を図る」としている。

この買収はマクドナルドにとって大きな賭けだ。過去20年で最大の買収であるだけでなく、限られた商品ラインナップで果たしてどのようなパーソナライズ化ができるのか、理解に苦しむ。さまざまな調査で、消費者は企業に対し「一人ひとりを理解してほしい」と望んでいることが分かっているが、必ずしもマクドナルドにそれを望んでいるかどうかは定かでない。いずれにせよ、時の流れが答えを出すだろう。
 

WFAがソーシャルメディアプラットフォームに圧力

有害なコンテンツを阻止できないソーシャルメディアプラットホームにもっと責任ある行動を取らせよう −− 世界広告主連盟(WFA)は各ブランドに対し、プラットフォーマーに圧力をかけるよう求める声明を発表した。今月15日、ニュージーランド・クライストチャーチのモスクで起きた銃乱射事件の模様がフェイスブックで生中継されたことを受けてのこと。WFAの声明は、広告主からのマーケティング投資で成り立つプラットフォーマーは「ブランドメッセージの有効性・効率性よりも、モラルに対する責任をより考慮すべき」と訴える。この場合の「圧力」とは、おそらくプラットフォームからの広告の撤退を意味する。

企業に行動を起こさせるには、収益減を予期させることが一番だ。WFAのステファン・ロークCEOは、「マーケターは広告費を使うプラットフォームの影響力や契約内容を改めて考慮すべき。逆にプラットフォーマーは、広告主の懸念材料が増していることを受け止め、それらを取り除く努力をしなければならない」と述べた。

ユニリーバ、「信頼できるパブリッシャー」のネットワークを密かに構築

日用消費財大手のユニリーバがデジタル広告の透明性改善の一環として、いわゆる「信頼のおけるパブリッシャー」のネットワークを構築した。これは「怒りや憎悪、分断を生じさせるような」プラットフォームに投資しないといった、同社の価値観を遵守するネットワークのこと。だが同社は「競争上の優位性」を失わないため、パブリッシャー名は明かさなかった。

他の広告主企業も同様に、倫理的に許容可能かどうかでプラットフォームを判断するようになるかは不明だ。だが少なくとも、アドフラウド(広告詐欺)を根絶し、ビューアビリティやブランドセーフティを保証するよう、パブリッシャーに圧力をかけることは想定される(これらもユニリーバが最優先事項として取り組んでいることだ)。

電通イージス、APACメディア担当を新設

電通イージス・ネットワーク(DAN)のアジア太平洋地域メディアビジネス担当役員に、オードリー・クア氏が4月1日より就任する。2011年からDANで勤務してきた同氏は、ワン・シンガポール・メディア・グループの代表を務めたジョナサン・チャドウィック氏の後任となる。DANでは統合化へ向けた構造改革が進められており、今後も人員のリストラや、傘下のエージェンシーの解散といった動きが見られそうだ。

マイクロソフト、エイプリルフールのいたずらを禁止

マイクロソフトのクリス・カポセラCMOが、社外に向けたエイプリルフールのいたずらは控えるよう、社員に宛ててメールを配信した。エイプリルフールには多種多様な企業が、自分たちは生身の人間であることを見せようと遊び心を発揮する。だが米テック系メディア「The Verge」が報じたところによると、カポセラ氏はこのような活動がポジティブな効果を生むことは少なく、むしろ「望まない形でニュースが広まる」ことが多いと述べたという。企業にとって、バレンタインデーやホワイトデーと同様にエイプリルフールも、無視することが賢明なイベントなのかもしれない。
 


(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

フォローする

トップ記事と新しいキャンペーン情報

速報メールを受け取る

関連する記事

併せて読みたい

2 日前

世界マーケティング短信:トヨタ、パリ大会を最後に五輪協賛終了へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

4 日前

パリ五輪で成功を目指すために必要なこと

世界的なスポーツの祭典で、アジアのブランドはどのように広告費を最大限に活用しているのか、マーケティング戦略を成功させる鍵は何か、若いファンを取り込むのに最適なプラットフォームは何か。

4 日前

メタCMO、戦略と「予算削減」を語る

2020年からメタのマーケティングを牽引するアレックス・シュルツ氏。若者たちの間での人気復活やプラットフォーム再構築など、複雑な課題を抱えた同社のマーケティング戦略を語る。

4 日前

ChatGPTは分析ツールとして信頼できるか?

期待外れに終わった実験から1年が経ち、飛躍的に成長したChatGPTは分析ツールとしての信頼を取り戻せたのだろうか? 我々のデータを、安心して託すことはできるだろうか?