Ryoko Tasaki
2023年3月17日

世界マーケティング短信:メタが再び1万人規模の削減を発表

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:メタが再び1万人規模の削減を発表

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

メタ社、2回目の大規模な人員削減へ

フェイスブックを運営する米メタ社が、社員約1万人の追加削減と5000人分の採用計画中止を発表した。同社は昨年11月にも1.1万人の削減を発表している。解雇の通知は、まず採用担当者に知らされ、その後は4月下旬に技術グループ、5月下旬に事業グループの社員に伝えられる予定。

同社はこれまで収益が毎年急速に伸び、多くの新製品に投資するだけの資源があった。だが昨年は世界経済の変化や競争圧力の増大、成長鈍化などの危機を思い知らされた、人員削減を実施するに至った――。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏はフェイスブックにこのように投稿している。組織のスリム化を図り、長期的な視点での投資にフォーカスしていくとのことだ。

一方、同社のコマース&フィンテック担当責任者であるステファン・カスリエル氏はツイッターで、昨年に開始したフェイスブックならびにインスタグラムでのNFT関連の取り組みを、縮小すると明らかにしている。

ラッシュ、大手テック企業への支出を大幅削減すると宣言

ナチュラルコスメブランドのラッシュ(Lush)が、グーグルなど大手テック企業に費やす広告費を数百万ドル規模で削減すると明らかにした。同社は米テキサス州で開催中のSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)に出展している。

最高デジタル責任者のジャック・コンスタンティン氏は基調講演で、大手テック企業への支出を削減する理由を「小規模な企業が軌道に乗れるよう機会を与えることに予算を振り分けるため」と述べた。「小規模なテック企業、オープンソース運動、フリーソフトウェア運動が成長して勢いを増し、テック大手コングロマリットが市場を支配的で飽和状態に変えていく手法に反撃するのを、私たちのプラットフォームを利用して促そうとしています」。

同社は2021年11月にフェイスブックやティックトックなど一部のSNSからサインアウトしている。その後はグーグルの検索広告への投資を増やしたが、満足はしていなかったと同氏はCampaignに語った。

また、SNSのプライバシーやメンタルヘルスに関するポリシーが今後変更になることがあれば、利用を再開する可能性もあるとも示唆する。「自分たちが、文字通り姿を消すようなことが無い限り、(テック大手から)逃れることはできません」と同氏。「しかし自分たちが何に投資しているのか、何にお金をかけるのか、そのことに満足できるか、お金に見合う価値が得られるのか、代わりに何をできるのかについて、非常に慎重でありたいと考えています」。

検索連動型広告や動画広告が大きく成長 

電通から2月末に発表された「2022年 日本の広告費」のうち、インターネット広告媒体費の内訳の詳細な分析を、電通グループのデジタル広告領域5社が共同で発表した。日本の総広告費は通年で7兆1,021億円(前年比104.4%)。インターネット広告費は3兆912億円(同114.3%)で、そこから製作費や物販系ECプラットフォーム広告費を除いた「インターネット広告媒体費」は2兆4,801億円(前年比115.0%)だった。

インターネット広告媒体費の39.4%を構成するのが検索連動型広告で9,766億円(同122.2%)、23.9%を占めるのがビデオ(動画)広告で5,920億円(同115.4%)。ビデオ広告の約6割は、動画コンテンツの前後などに再生する「インストリーム広告」(3,456億円)で、残り約4割はウェブ上の広告枠や記事コンテンツ面など動画コンテンツ外に表示される「アウトストリーム動画」(2,463億円)だった。

インターネット広告媒体費の34.7%をソーシャル広告(8,595億円)が占めており、その内訳はSNS系(3,675億円、ソーシャル広告の42.8%)、動画共有系(3,052億円、35.5%)、その他(1,868億円、21.7%)となっている。

宝くじ機能付きレシート、スマートフォンの壁紙で簡単に寄付

台湾では買い物をした際にもらえるレシートに抽選番号が記載されており、宝くじになっている。Z世代を中心に多くの人々がレシートを寄付箱に入れ、これがドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ(RMHC)など慈善団体の大きな収入源となってきた。しかし近年は電子マネーが普及したことで紙のレシートも、寄付も減っていた。

そこで発案されたのが、バーコードが付いたスマートフォンの壁紙だ。35種類のデザインが用意され、これをダウンロードして壁紙として設定し、商品購入時にバーコードをスキャンしてもらうと、レシートが自動的にRMHCに寄付されるという仕組みになっている。企画はレオ・バーネット台湾。スマートなデザインと、非常に簡単に参加できることが人々に受け入れられ、この施策を開始してからのRMHCへのオンライン寄付は190%と急増している。


(文:田崎亮子)

 

提供:
Campaign Japan

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