Luke Janich
2021年3月19日

TikTokのハッシュタグチャレンジに広告主が注目する理由

TikTokは数多くの広告オプションを提供しているため、取り組み方がわからないブランドがいたとしても意外ではない。しかしマーケターは、過去に実施された優れたキャンペーンをチェックし、TikTokのポテンシャルを把握しておくべきだと、デジタルエージェンシーRed2 DigitalのCEOは指摘する。

TikTokのハッシュタグチャレンジに広告主が注目する理由

パンデミックが世界中のビジネスに影響を及ぼすなか、驚くほどの成功を収めた事例として挙げられるのが、短尺動画アプリTikTok(ティックトック)の台頭だ。このプラットフォームは今や、フェイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、スナップチャットからユーザーの注目を奪うまでに成長し、多くのマーケターが乗り遅れまいと躍起になっている。

月間5億人超のユーザーを抱えるTikTokは、特に若年層を中心に世界的人気を博しており、その理由も容易にわかる。短尺動画コンテンツは、長引く自宅での隔離生活にぴったりの娯楽なのだ。多くの点で、TikTokはフェイスブックやインスタグラム、スナップチャットの優れた特徴を備え、ユーザーの――そしてブランドの――クリエイティブな可能性を広げることができる。

だがマーケターの多くは、この急速に進化するプラットフォームのどこから手をつければよいのかがわからない。また、実験的に思えるTikTokの広告アプローチも、問題を複雑にしている。

TikTokがブランドに提供する広告の選択肢は豊富で、ハッシュタグチャレンジやブランド・テイクオーバーから、より馴染み深いインフィードビデオ広告やインフルエンサーキャンペーンまで幅広い。これほど選択肢が多いのは、TikTok自身が有効なものを見極めようとしているからかもしれない。さらに同社は、Shopify(ショッピファイ)との提携によって、カスタマイズ可能な「リンク広告」や、より集中的なeコマース展開といった選択肢と組み合わせることも可能にしている。

これらを踏まえて、過去1年間の素晴らしいキャンペーンの例をいくつか見ていこう。これらの事例から、TikTokがあらゆるマーケターの武器になり得る理由と、同プラットフォームが定着すると筆者が考える理由がわかるだろう。

チャレンジ動画の中心地

TikTokの特徴は、コンテンツの双方向性が高いことだ。ユーザーが口パクや振り付けを互いに真似たり競い合ったりするハッシュタグャレンジでは、とりわけそうした傾向が強くなる。

昨年、化粧品大手のロレアル(L'Oreal)が時宜に合った「#LetsFaceIt」という話題性のあるチャレンジを展開し、このジャンルに新しい風を吹き込んだ。これは、マスクをユニークな方法で着用する様子や、人目を引くメイクとマスクを組み合わせる様子を撮影した動画を投稿するようユーザーに呼びかけるものだった。

このシンプルなアイデアは大きなインパクトをもたらした。パンデミックが続くなか、ロレアルのキャンペーン動画とチャレンジに参加した動画は、計170億回以上再生されたのだ。このキャンペーンは、新しい形の美を称えると同時に、マスク着用への偏見をあらゆる世代から取り除くものとして、世界中で反響を呼んだ。小規模なソーシャルキャンペーンとして始まったものとしては上出来だ。

衛生用品ブランドのデトール(Dettol)は、同社初のTikTokチャレンジ「#HandWashChallenge」をローンチした。このキャンペーンの狙いは、ダンスや音楽、インタラクションを通じて、正しい手の洗い方を楽しく魅力的な形で伝えることにあった。同キャンペーンは各国のインフルエンサーに支持され、インドを皮切りにアジアと北米の9市場に拡大し、合計で数十億ビューという驚異的な再生回数を記録した。

他のブランドも続いている。たとえば、ベトナムの電気スクーターブランド、ビンファスト(VinFast)は、2つの新モデルを発売するにあたって、「#Phieucungxechat」チャレンジを実施し、2億超の再生回数と10万1,000件の投稿を獲得した。

これらのキャンペーンが成功したのは、TikTok上で定着したユーザーのデジタル行動にうまく乗ったからだ。さらに同プラットフォームが素晴らしいのは、ハッシュタグチャレンジは、こうした新しい行動のひとつに過ぎないということだ。

優れたブランドは、既存の動画コンテンツをフォーマットだけ変更して再利用するのではなく、TikTokを独自のチャネルとして扱い、ふさわしい形にすることによりこうしたユーザーの行動を利用している。彼らは、新たなメディアを活用して競合他社に先んじる方法を理解している野心的なブランドなのだ。

新たなメディアが登場するときの常で、一部のブランドが取り残されるリスクもあるが、筆者はTikTokのポテンシャルに期待している。TikTokは、それ自体が急速に強力なチャネルになりつつある。ブランドの中核戦略と実際の行動のインサイトが結びついた時、とりわけ力を発揮することは紹介したキャンペーン事例が示す通りである。


ルーク・ジャニッチ(Luke Janich)氏はベトナムを拠点とするデジタルエージェンシーRed2 DigitalのCEO。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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