David Blecken
2016年12月14日

ネリウム、「究極のアンチエイジング」のヒットを日本で狙う

議論の的になっているアメリカの直販スキンケアブランド、ネリウム・インターナショナルは、アジア市場への足掛かりとして、日本での事業展開に力を入れている。消費者の反応はいかに?

ジェフ・オルソン氏
ジェフ・オルソン氏

米国テキサス州を拠点とするネリウムは、5年前にエイジングケア製品のラインアップを立ち上げて以来、成功を収めてきた。創業1年目に1億米ドルを売り上げ、その後の4年間も累計10億米ドルの売上実績を出している。同ブランドの製品は「ベースはサイエンス」であることをうたい、年齢肌への対応が「人生を変える」と言う。

米国でのネリウムに対する見方は二極化している。「ほとんど奇跡に近いアンチエイジング製品」と絶賛する人もいれば、「いんちき臭い薬品に毛が生えた程度」とこき下ろす人もいる。また、毒性の懸念される成分NAE-8が製品に含まれていることに対し、批判の声も上がっている。同社の創業者兼CEOのジェフ・オルソン氏によると、日本向けの製品ラインアップにはNAE-8は含まれていない。

オルソン氏は先日東京を訪れ、日本市場での事業戦略の概要を語った。ネリウムは2016年7月に1200万米ドルを投じて日本法人を設立し、ピーター・デイル氏を代表に迎えた。オルソン氏は、本拠地アメリカでの成功を日本でも再現できる好機をとらえていると言う。世界有数の最先端スキンケア市場であり、消費者の目も肥えている日本では、難しいのではないかと思うが、同氏は自信を見せる。

「誰もが当社の製品を待ち望んでいました」とオルソン氏。「何年もの間、海外から日本に当社製品が持ち込まれ続けていたのです。良い話は自然と広まるものです。日本では既に需要が膨れ上がっていたので、私たちはただ日本で事業を開始するだけでよかったのです」

その一方で、一定の予算を「広告費として確保」しているとも言う。マルチ商法(=連鎖販売取引)を取り入れている同社は、特に口コミ評価の確立と、「ブランドパートナー」と呼ばれる個人の販売者への投資に注力することになるだろう。「ブランドパートナーには『売る』のではなく『シェア』してほしいと思っています」とオルソン氏。「ほとんどの人は売り方が分かりません。でも、シェアすることならできます。製品に関する動画や情報をブランドパートナーがシェアできるよう、我々はこれらのツールに(マーケティングの)費用を使うのです」

ブランドパートナーの中には日本のセレブリティーもいると同氏は言うが、名前は公表していない。また、「マーケティングの観点では、日本での事業モデルは米国とほぼ同一」であり、消費者の誰もが潜在顧客だと説明する。これまでのところ、日本市場では比較的多くの男性が興味を示しており、これは全消費者の約30%に上る。また、他市場に比べて若い購入者層に訴求できているとオルソン氏は話す。

ここで、PRの観点から考慮すべき重要なことがある。それは、日本の消費者はアンチエイジング製品の科学的根拠に重きを置いているということだ。「当社では製品に用いられているサイエンスを公開しています」とオルソン氏。「本当にサイエンスに根差したものだと分かれば、安心につながるのだと考えています。多くの製品でマーケティングが先行してサイエンスがおろそかになっていることは、皆さんご存じの通りです。当社の場合は、多くの人々が製品の効果を実感し、リレーションシップマーケティングを行っています」

しかし、誰もが前向きに受け止めている訳ではない。ネリウムのブランドパートナーたちがブランドパートナーを増やそうと、LinkedInなどソーシャルプラットフォーム上でするアプローチは強引だ。都内でマーケティング業に携わる人物(匿名希望)は「詐欺かと思いました」と、ターゲットにされたときのことを振り返る。「とても押しが強いのです。北米のやり方が日本でも通用するとは考えにくいですね」

BBDO JAPANのプランニング・ヘッド、谷津かおり氏は、国内ブランドは確かに強いが、ネリウムのような海外のアンチエイジング製品にも可能性はあると言い、比較的好調なドゥ・ラ・メールやエスティ ローダーを例に挙げる。一方で、市場の規模と購買力を考えれば、ネリウムは50~60代の消費者を意識的にターゲットにするのがよいだろうと指摘する。

谷津氏はまた、ネリウムのもう一つの課題として、マルチ商法にまつわる不信感を払しょくする必要性を挙げる。ネリウムの「スターターパック」の小売価格は、11.2万円と決して安くない。しかしネリウムが米国で発表した数字によれば、2012年9月~2013年2月の期間中、ブランドパートナーの88パーセントは収入が平均370米ドル未満、43パーセントは収入がゼロだったという。

「日本では多くの人々が、マルチ商法やネズミ講(=無限連鎖講、日本では違法)にネガティブなイメージを持っています」と谷津氏。「そのようなビジネスモデルは会社に成功をもたらす一方で、販売に関わる人たちに大きな問題を引き起こすというイメージを、私自身も持っています」

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

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