Barry Lustig
2017年1月03日

「正しい課題」を設けてこそ、進化あり

まもなく米国で発足するトランプ政権。この異色ずくめの大統領が常軌を逸した行動に出ないという前提で、日本の広告代理店が2017年に取り組むべき課題を探る。最も重要となるのは、「内側からの変革」だろう。

バリー・ラスティグ氏
バリー・ラスティグ氏

これまでと同じ課題を掲げるのであれば、得られる結果は同じようなものでしかない。2017年の広告業界に共通するテーマは、物事をより根本的に見つめ直すことだ。

戦略的な解決策だけでは、昨年のように競争力を上げることはもうできないだろう。異なるアプローチをとり入れ、新たな課題を出発点として議論をするときだ。ここに、そのいくつかを挙げてみよう。

最もたやすく実行でき、社員や広告主に最大の効果をもたらす施策とは

重要なのは、素早く効果を出すことだ。経営側が目標に向かって本気で取り組んでいること、そしてあらゆるレベルの社員の声に耳を傾ける用意があることを示そう。
今すぐ実行でき、かつ社員や広告主に最大の効果を生み出すアクションとは何か?
よりフレキシブルな就業時間を設けることなのか、あるいは宣伝文句やプレゼン用の資料をデザイナーに作らせることなのか、はたまたコーヒーフレッシュの代わりに牛乳を出すことなのか……。

どのようにリスクを恐れぬ企業体質をつくるか

リスクをとるために必要な社内リソースを検討せずに、社員に新たなリスクをとるよう促しても失敗するだけだ。
どうすれば、優秀な人材に自分のプロジェクトとじっくり取り組めるゆとりを与えられるだろうか? 外部とはどのように提携したらいいのだろうか? 新しいアイデアに社内のリソースを適切に割り当て、成功には報い、失敗も前向きに認めるにはどうしたらいいのだろうか?
余談だが、常々筆者は、広告代理店がなぜ新たな収入源の可能性としてライセンシングを取り入れないのかと不思議に思っている。これは既に社内にあるスキルを活用して、新しい収益の柱を立てるという現実的手段にほかならない。率直にお尋ねする。あなたの会社の社員は、既存のプロダクトに関する顧客の需要や新しいブランドをつくり出すのに適しているだろうか? あるいは、グーグルのように商業的に実用化できる知的財産を開発する力があるだろうか?

どのように異業種の人材を取り込むか

広告業界は他の業界からの人材を歓迎しない傾向がある。その大きな理由は、働き方の違いにある。そこで、他の業界から来た人材には、各部署が具体的に何をしているか教えるオリエンテーションを実施したらどうだろうか。そうすれば彼らは社員が何をし、どのように仕事が完結し、どのようなセールスをしているかを学ぶことができる。
また多くの人が実感しているように、経験豊かなメンターがいれば彼らもすぐに仕事に馴染める。これは最上層部の管理職にも当てはまることだ。こうして異業種からの人材を取り込んでいけば、広告業界の人材は厚みを増し、全体的な競争力を維持することができる。

どのように既存の人材から最大限の力を引き出すか

広告業界では人材育成への投資があまりにも少ない。その一方で、経営者たちはスキル不足や競争力のなさを嘆いている。日本の広告業界には、1つの強みがある。それは、非常に優れた学生たちの就職先として伝統的に人気が高い点だ。つまり、特に生産性が高くない社員でも学ぶ力は持っており、鍛え直すことができるのだ。
我々は新しいアイデアやスキルを取り入れようと常に外部の人材に目を向けるが、社内には既に一緒に働いてきた人材がいる。彼らはスキル向上の機会を喜んで受け入れ、仕事に新しい目的を見出すだろう。
手始めにワークショップやカンファレンスを行うのも良いだろうが、大抵の場合は人材の再開発に要求される「緻密さ」や「深み」は期待できない。そこで、カナダのマギル大学や早稲田大学、INSEAD(インシアード)をはじめ、ほとんどの一流大学が個々の企業向けにトレーニングプログラムや学位を用意していることを覚えておきたい。これらの多くは講師がオフィスに足を運び、概略ではなく完全な講義を社内で行う。人材の再開発は安いものではないが、代替策の方が格段に高コストだ。

広告ビジネスが変化しても、人間の本質は変わらない

いかなる変革の目標を掲げるにしても、新たな達成目標のための具体的な職務を明確にし、社員の昇給と昇進に直結させることが極めて肝心だ。さもなければ、単なるかけ声だけで終わってしまうだろう。

(文:バリー・ラスティグ 編集:水野龍哉)

バリー・ラスティグ氏は、東京を拠点とするビジネス・人材戦略コンサルティング会社「コーモラント・グループ」のマネージング・パートナーを務めている。

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