Joseph Arthur
2023年10月05日

グーグルとTikTokに検索分野で提携の噂、業界の反応は?

「GoogleTok」は、ブランドにより良い顧客インサイトを提供するのだろうか、それともプライバシー侵害をもたらすのだろうか?この提携が実現したとき、ブランドはどのように対応すべきなのだろう?

グーグルとTikTokに検索分野で提携の噂、業界の反応は?

9月最終週の初め、グーグルとTikTokの両プラットフォームが、TikTokの検索ストリームにグーグルの検索プロンプトを統合することを検討しているというニュースが流れたとき、この両社は、検索分野での驚きのパートナーシップをほのめかした

現在は、カスタムインテグレーションをトライアル中だが、この2つの巨大企業が手を組むことによる業界への潜在的影響は計り知れない。しかし、いつもそうであるように、チャンスはリスクなしではやってこない。

噂されるこのコラボレーションの可能性を理解するために、パフォーマンス・マーケティング・ワールド(PMW)は、専門家たちに話を聞いた。

「デジタル広告市場そのものと同じくらい巨大な利益が得られるかもしれない」

モバイル広告エージェンシー、ネイティブエックスのシニア・クライアント・グロース・マネージャーであるジェニファー・チャン氏は、パフォーマンス・マーケターにとって、この提携はとてもエキサイティングな機会になると考えている。

彼女は言う。「この提携は、とてもエキサイティングな進化をもたらすだろう。若いデジタルネイティブ世代へのリーチと、プラットフォームを横断した、データ主導の豊富なインサイトを提供するからだ。その魅力は否定できないが、それでもこの提携がもたらす潜在的リスクへの警戒を怠ってはいけない」

チャン氏は、両プラットフォームを扱うブランドにとっての潜在的なリスクとして、ユーザープライバシーの問題や広告枠の過当競争、検索アルゴリズムの仕様変更、そしてマーケティングの統合を挙げた。

しかし、こうしたリスクにもかかわらず、彼女はこう結論づける。「慎重な運用を行えば、デジタル広告市場そのものと同じくらい巨大な収益が見込める。目まぐるしく変化するパフォーマンス・マーケティングの世界では、変化に備えることが常に成功の鍵だ。TikTokとグーグルの提携が実現すれば、ブランド、マーケター、そしてデジタル広告業界全体にとって、受け入れる価値のある大きな変化となるだろう」

TikTokGoogleにとってウィン・ウィンのシナリオ」

クラクソンの最高戦略責任者ダニー・モリニュー氏は、この提携を、急速に進化するデジタル環境に対応した両プラットフォームの戦略的な動きだと捉えている。

彼は言う。「TikTokが、Google検索の統合を検討しているのは、ユーザー体験を向上させ、ソーシャルメディアを超えてその役割を拡大するという、同社のコミットメントにも合致している。グーグル検索を取り入れることで、TikTokはより包括的で、より文脈に即した情報をユーザーに提供できるようになる。

「一方、グーグルにとって今回の提携は、ユーザーが従来の検索エンジンではなく、TikTokのようなソーシャル・プラットフォームに「発見」の機会を求める傾向が強まっていることに対応したものだ。若い視聴者との関連を維持しながら、発見の機会を多様化するための、これは賢い動きだと思う」

ブランド側への影響については、モリニュー氏もチャン氏の意見とほぼ同じだった。だが彼は、データ共有の可能性にも言及し、この提携が「発見の向上につながる可能性がある」一方で、「プライバシーとセキュリティを最優先すべきであることに変わりはない」と述べた。

彼はこう説明する。「このパートナーシップは、ハイテク企業が業界の最前線に立ち続けるために必要な適応力と革新性を反映している。TikTokとグーグルは、ユーザーにより良いサービスを提供し、競争力を維持するために、新たな協力の道を模索しており、この提携は、お互いにとってウィン・ウィンのシナリオだ」

シトラスアドのEMEA最高経営責任者、アルバン・ヴィラーニ氏は、「TikTokとグーグルの発表では新しい広告枠には触れられていないが、この提携がリテールメディアに対する世界的な関心の高まりを示していることは間違いない。我々が考える次の必然のステップは、ショッピングのタッチポイントの増加であり、そのために高度なID管理ソリューションが必要になるということだ。

「お互いの成長を打ち消し会うか、お互いのデータに接近しようとしているか」

マーマー・グループのメディア部門責任者であるタズ・パプリアス氏は、今回の提携の理由は、多くの人が思っているよりも不純なものであり、お互いの成長より、けん制を目的としているのではないかと指摘した。

彼は言う。「ビジネスには敵も味方もなく、ただ己の利益を追求するだけだ。主に発見に利用され、購入前の効果に力を発揮するTikTokが、ボトムファネルのアクションをリードしているGoogleと提携するのは奇妙な話だ。

「私は、この提携は結局、お互いの成長を相殺するか、お互いのデータを侵害するかに帰着すると考える。ユーザーがアプリから「離れる」ことを望まないTikTokは、この提携はあくまで第三者検索統合のトライアルであり、グーグル広告の導入は含まれないと明言している」

「オンラインユーザーの90%が、購入経路の途中でグーグルに接触していることを考えれば、TikTokが、こうしたユーザーの習慣を取り込むことで、ユーザー体験を適切に改善し、Z世代以外でも飛躍的な成長を維持するための方法を模索していることは明らかだ」

「この提携の実現を私は疑っているが、もし実現するとすれば、Z世代を対象にした広告費はますます、グーグルからTikTokに流れることになるだろう」

この提携が前進し、現実になったなら、ブランドは格言通り「慎重に進める」必要があるだろう。この提携がもたらす好機を逃すのはもったいないが、拙速に進めて、ブランドやその評判に傷がついては元も子もないからだ。

出典:パフォーマンス・マーケティング・ワールド

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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