Ryoko Tasaki
2023年6月09日

世界マーケティング短信:カンヌライオンズを目前に、多様性を考える

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:カンヌライオンズを目前に、多様性を考える

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

カンヌライオンズに、多様な人材を送り込みたい

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが今月19日~23日に開催される。開催に先立ち、ファットボーイ・スリム(DJ/ミュージシャン)の名で知られるノーマン・クック氏と、コメディアンのロブ・メイヒュー氏が、カンヌライオンズへの出演で得た収益の1%を#CannesForAllなどに寄付すると宣言した。

#CannesForAllは今年1月にブリクストン・フィニッシング・スクール(BFS)、デジラーニング、ロリポップ・メンタリングが立ち上げたイニシアチブ。若者や過小評価されてきたマイノリティーに向けた教育プログラムを提供している各団体が、広告界での多様性を実現するため、カンヌライオンズに人材を送り込み、発表やメンタリング、ネットワーキングなどの機会を設ける。

ノーマン・クック氏は2022年からデジラーニングと共に活動しており、「あらゆる階層の若者が必要です。デジラーニングや、#CannesForAllなどのプロジェクトは必須。デジラーニングが愛を広め、他の非営利団体や慈善団体と協力しながら、すべての人にこのようなキャリア機会を創出することは素晴らしいこと。これが前進するための、唯一の方法です」と語る。また、「企業は最高の人材を失いつつあるので、ぜひ参加を。お金は取り換えが利きますが、文化や人々の命はそうではありません」と、参加を呼び掛ける。

メイヒュー氏も「若者が広告業界に参入することが、年々難しくなっています。クリエイティビティーはあらゆる階層の人々から生まれるもの。もし、あなたのエージェンシーの人間が、あなたと似たような外見で、似たような話し方をするならば、作品は駄目になっていくでしょう」とコメントした。

BFSの設立者であるアリー・オーウェン氏は、カンヌライオンズを「将来のリーダーたちのための高級クラブ」と評し、「業界に人々を送り込む、公平なハイウェイを作るだけでは十分ではありません。皆さんが到着したときに上に昇っていくための、公平な機会を創出する必要があります」と述べた。

チタニウムとイノベーションで、日本の作品がショートリスト通過

カンヌライオンズがグラスライオン、チタニウム部門、イノベーション部門のショートリストを発表した。日本の2作品がショートリストを通過している。

【チタニウム部門】

日本経済新聞社「国内総充実(GDW)」(電通)

【イノベーション部門】

甲子化学工業「HOTAMET/ホタメット」(TBWA HAKUHODO)

世界の広告費成長率は3.3%を予測 電通グループ

電通グループが毎年2回実施する「世界の広告費成長率予測(2023~2025)」の改訂版が発表された(2022年7月発表分からロシア市場の数値を除外して算出)。2023年の世界の広告費成長率は3.3%を予測しており、これは前回(2022年12月発表)から0.2ポイントの下方修正となっている。市場規模は7,279億米ドル(約102兆円)で、初の100兆円超えとなる見込み。

https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000965.html

デジタル広告は7.8%増となり、総広告費に占める割合は58.3%で、2022年の55.8%からさらに増加する見通しだ。デジタル広告の中でも高い成長が見込まれるのはリテールメディア(18.0%)、コネクテッドTV(15.2%)、プログラマティック広告(14.4%)など。

テレビ広告の成長率は一時的にマイナス3.1%となるものの、2024年以降は再びプラス成長に戻るとみられる。新聞・雑誌はマイナス4.8%、OOHは3.8%、シネマは2.1%、オーディオは0.8%を見込んでいる。

衣料廃棄物を積み上げると、豪州最高峰の高さを超える

毎年約1,000億着の衣料品が生産され、9200万トンもの繊維製品が廃棄されている。エレン・マッカーサー財団によると、毎秒トラック1台分の衣料品が焼却あるいは埋め立て処分されている計算だ。

衣料廃棄物の問題を啓発すべく、豪州のワイルディングス・クリエイティブ(Wildings Creative)が制作したのが動画『Mount Garment』だ。豪州で毎年廃棄される衣料品80万着を積み上げると、高さが2,460mになり、オーストラリア大陸の最高峰であるコジオスコ山(標高2,228m)を超えると警告する。また廃棄衣料品の山は、毎日14mずつ高くなっていくという。

(文:田崎亮子)

 

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

3 日前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

4 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2024年4月23日

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2024年4月23日

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。