David Blecken
2019年5月10日

世界マーケティング短信:グーグル、クッキーに「手入れ」

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:グーグル、クッキーに「手入れ」

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

クッキーへの新たな取り組み、ネット広告を変えるか

グーグルは今週、「グーグルクローム」のユーザーが被監視者としての状況を把握できる新たなプランを導入した。これにより、自分がどのクッキーに監視され、どのクッキーに許可を与えたかが分かるようになる。クロームがオンラインブラウジングの4分の3を占めることを思えば、この動きは広告主にとって重要な意味を持つ。将来的な顧客からの情報収集が極めて難しくなる可能性があるからだ。さらに、クッキーの「終焉」にもつながりかねない。何人かの観測筋は、「明らかにグーグルの地位を強化するための動き」と指摘する。サードパーティの収集できるデータが少なければ少ないほど、彼らはグーグルに頼らざるを得ないからだ。世界の検索エンジンシェアで、グーグルは90%を占めている。

スターバックス、「幻のプロダクトプレイスメント」で恩恵

今週のマーケティング界を最も賑わせた話題は、人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のワンシーンにスターバックスのコーヒーカップのようなものが映っているという視聴者たちからの「目撃談」だった。結局そうではなく、誤ってセットに置かれた普通のコーヒーカップだったことが判明。だが同社にとっては一切費用がかからず、絶大な広告効果となった。ツイッターには「(登場人物の)彼女がドラゴンドリンクを頼まなかったのは驚き」などと投稿、ちゃっかり知名度の低い商品の宣伝までも。消費者の潜在意識にブランドがどのようにすり込まれるのか −− この事例はそれをよく表している。

電通、「スケスケ」を世界に

電通は昨年、福岡で開催された「スケスケ展 −− スケると見える仕組みの世界」の海外におけるフォーマット販売権(展示会のコンセプトや設計図、データを共有し、現地制作を行う)とスポンサーセールス権を獲得した。このエキシビションは、外からは見えない生活道具や生き物のメカニズムを紹介したもの。同社は日本での人気の高さに着目、「海外で広く展開」し「企業や教育機関にマーケティング機会を創出していく」としている。スポークスパーソンによれば、スポンサーは新たなブースを設置でき、自社製品の「骨格モデル」を展示できるという。展開を狙うのは欧米やアジアだ。

昨今、広告代理店がイベントのマネジメントやスポンサーシップを直接担うケースが増えている。ADKは4月に広島で開かれたアーバンスポーツの祭典「FISE」のインベスター兼共同プロデューサーとして、マーケティングとスポンサーシップ両面で利益創出を図った。一方、電通はウッドストック・フェスティバル50周年を記念した「ウッドストック50」への参加を見送り、批判を浴びている。リードインベスターであった電通イージス・ネットワークは先月後半、「オーガナイズが難しすぎる」としてこのコンサートへの投資を取り止めた。

「中国名」を得た、スウェーデンの植物性ミルク

スウェーデンの飲料メーカー「オートリー(Oatly)」が、香港でブランド名に創作漢字を採用した。現地市場ではほとんど認知されていない植物性ミルクを展開するため。「植物」と「ミルク」を表す漢字を融合させたこのロゴは、エデルマンによって考案。植物から作られたミルクは牛乳の代替品になり得ることを広く知ってもらうことがその企図だ。オートリーはこのロゴを「独占するつもりはなく、競合他社にも導入してもらいたい」と言明。業界全体の認知度を上げることが全てのプレイヤーにとっての利になる、と考えている。

今週のその他の動き:

デジタル広告収入への課税は、グーグルやフェイスブックの問題を解決できるだろうか。それを支持する意見はこちらから

デジタル広告費は米国において、遂に1000億ドル(約11兆円)を突破した。

バイス・メディアの将来が不確実になった。今週、巨額の投資を行ってきたディズニーがその中止を決定したからだ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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