Ryoko Tasaki
2022年1月28日

世界マーケティング短信:コロナ禍前を上回る成長率

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:コロナ禍前を上回る成長率

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

世界の広告費成長率、2022年は9.2%に達する見込み

電通グループが発表した「世界の広告費成長率予測(2021~2024)」によると、2021年の広告費成長率は17.0%(6825億米ドル)で、パンデミック前(2019年)の水準を1173億米ドル上回った。2022年もデジタル広告が牽引し、9.2%(7450億米ドル)を予測している。この成長率は、2008年の金融危機の2年後と比較すると約3倍だという。

媒体別にみると、デジタル広告は2022年に14.8%成長する見込み。デジタル広告は全体の55.5%(4080億米ドル)を見込んでおり、これはテレビ(26.9%)の2倍以上だ。今年は第1四半期に北京冬季五輪が開催され、前年同期比8.9%の成長を予測している。その後も米国中間選挙やFIFAワールドカップ・カタール大会などが、広告支出を増加させると考えられる。

 

「みんなで共に」 IOCが北京冬季五輪のCMを公開

2月4日から開催される北京冬季五輪のCMを、国際オリンピック委員会(IOC)が公開した。2020東京大会と同様の「#StrongerTogether(団結すれば強くなる)」を掲げるこのキャンペーン動画には、選手の活躍を見守る人々の様子が映し出される。挑戦するアスリートの奇跡を願う人々の思いは、失敗したときに立ち上がる力となり、技を成功させる。ディレクターは映像作家のサロモン・リグテルム氏、企画・制作はアンコモン・クリエイティブ・スタジオ(Uncommon Creative Studio)。

 

豪華な顔ぶれのスーパーボウル予告動画

スーパーボウル(アメリカンフットボールの優勝決定戦)が米ロサンゼルスで2月13日(現地時間)に開催される。それに先立ち、スポンサーであるペプシがハーフタイム・ショーの予告動画を公開した。エミネム、ケンドリック・ラマー、メアリー・J・ブライジ、スヌープ・ドッグ、ドクター・ドレーの5名が、ハーフタイム・ショーへの出演依頼を受け、スタジアムに向かうという内容で、再生回数は公開から6日で940万回を超えた。

「12分ほどのショーは、このゲームの最大のブランド資産」と語るのは、ペプシのマーケティング担当バイスプレジデントであるトッド・カプラン氏だ。「ファンのために魅力的で面白いコンテンツを作り、数週間かけて体験への絆を強めながら、試合当日には最も話題のブランドとなってSOV(シェア・オブ・ボイス)を獲得するという目標も達成できると考えています」。

 

グーグル、FLoCに代わる新技術を発表

グーグルは、サードパーティークッキーを代替する「FLoC」の開発を停止し、Topicsと呼ばれる新技術を発表した。Topicsはブラウザの閲覧履歴をもとに、過去3週間で関心の高かったトピックが選ばれる仕組みになっており、古いトピックは削除されていく。ここでは性別や人種などのセンシティブなカテゴリーは排除している。

ジェリーフィッシュ(Jellyfish)の最高ソリューション責任者、ジェームス・パーカー氏はこの動きについて「グーグルが消費者や業界からのフィードバックに耳を傾けて対応しているのは素晴らしいこと」と語る。「一部の広告主にとっては喜ばしいニュースではないかもしれませんが、これは業界にとって正しい方向への第一歩。マーケティングチームやエージェンシーチームの編成のあり方を、考え直す必要があるでしょう。デジタルメディアを特定の方法で購入する方法しか知らない人々が業界内には数多くいるため、学び直しも必要になります」。

一方、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)の英国担当バイスプレジデントであるフィル・ダフィールド氏は、Topicsには限界があると指摘する。「グーグルのTopicsに関する最新の発表は、一つのチャネル(Chromeブラウザ)に限定されており、大多数の消費者がインターネットに自由にアクセスする際に使う数々のデバイスには適用されないことに注意すべき。広告主は基本的なターゲティングのアプローチしか使えず、ポテンシャルを最大限に発揮できないことを意味するからです」。

 

【お知らせ】

広告界ではこれまで以上に、DEI(多様性、公平性、包摂性)やワークライフバランス、公平な賃金、メンタルヘルスのサポートなど、エージェンシーの価値観やカルチャーが重視されるようになりました。ではエージェンシーやそこで働く人々の価値観と相反するクライアントの案件についてはいかがでしょうか。化石燃料企業との取引をやめるよう呼びかける公開書簡が19日に発表されましたが、果たして社員が安心して声を上げられる環境は整っているのでしょうか。

Campaignではコミュニケーションに携わる皆さまを対象に、化石燃料を扱うクライアントの案件についてアンケート調査(英語)を実施しています。3分ほどでご回答いただける内容なので、ぜひご協力をお願いいたします。

 

 

(文:田崎亮子)

 

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

2024年4月25日

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2024年4月24日

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2024年4月23日

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2024年4月23日

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。