Ryoko Tasaki
2020年11月27日

世界マーケティング短信:パンデミックがあぶり出す脆弱さ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:パンデミックがあぶり出す脆弱さ

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。


人間の手による広告不正がコロナ禍で急増

クリックシーズ(ClickCease)のレポートによると、過去半年間で人間の手による広告不正が急増している。広告不正といえば、ボットを使ってクリック数を水増ししたり、マルウェアに感染させるといったものが有名だが、パンデミックによる解雇など経済的に困窮した人々が、クリック代行やCAPTCHA認証の突破などに加担するようになったという。このような単発の仕事を仲介するサイトも、簡単に見つけることができる。中には「何千人ものマイクロワーカーたちによって、オーガニック検索のクリックスルー率を最適化し、ランキングを上昇させる」と堂々と謳う業者もあるとか。

 

広がるジェンダー格差

米クレジットカード大手マスターカードが発表したレポート「女性起業家指数2020」によると、各国の規模や地理的要因、経済や発展の度合いに関係なく、ジェンダーの不平等は「依然として残る」という。APACの中で高スコアだったのがニュージーランド(70.1)と豪州(67.5)で、タイ(66.9)、台北(66.6)、香港(65.8)、フィリピン(65.5)、インドネシア(65.2)もトップ20にランクイン。日本のスコアは51.4と非常に低い。ジェンダーに関する明確な政策を打ち出していることと、女性起業家の活躍には明確な相関関係があると、同レポートは指摘する。

また女性は、COVID-19による影響をより強く受けることも分かった。非正規雇用など立場が弱い女性が多いこと、宿泊業や小売業など影響を受けやすい業態で女性の割合が高いこと、もともとの賃金格差に加えての賃金カットが貧困につながりやすいこと、外出自粛により家事や育児の負担が増えたことなどが要因だという。だが一方で、女性のビジネスオーナーはパンデミックの変化に迅速に対応する傾向があり、経済復興において重要な役割を果たすと考えられること、そして政治や組織によるサポートが必要なことにも、同レポートは触れている。

 

隣人の家庭内暴力が疑わしい場合は通報を

11月25日は、国連が定める「女性に対する暴力撤廃の国際デー」。この日に合わせ、壁の向こうから家庭内暴力が疑わしい音が聞こえたら通報するよう促すキャンペーンを、ノーモア・ファウンデーションが英国で公開した。「あなたが安全な側にいるならば、そうでない人を助けてください」というキャッチフレーズの後、通報用の電話番号とサポート用アプリの情報が表示される。企画・制作はMRM。同団体は4月にも、コロナ禍で急増する家庭内暴力について動画を公開している。

 

フェイスブック、広告効果測定ツールでエラー発覚

フェイスブックが広告主向けに提供するツール「コンバージョンリフト」で問題が見つかった。昨年8月から今年8月までの1年間、キャンペーンの効果の評価を誤っていたとみられ、同社は影響を受けた広告主に対して補償していく。

 

物語の主人公になりきるランニング

BBHシンガポールが、物語の主人公の気分を味わえるランニング用アプリ「ランニング・ストーリーズ」を制作した。追われるスパイや、ゾンビからの脱出、逃げる花嫁の映画を彷彿とさせるナレーションや効果音が、位置情報や心拍数などのデータを用いてリアルタイムに生成される。現在はベータ版をシンガポール内で提供しているが、世界的に展開していくことも視野に入れている。

 

【お知らせ】

12月8日、Campaign Connectをオンライン開催いたします。「マーケティングの未来」をテーマに、マーケティングやコミュニケーションの第一線で活躍する登壇者が議論を深めてまいります。12時間にわたるイベントの詳細、ならびにプレミアムパスのご登録はこちらから。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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