Ryoko Tasaki
2024年2月08日

世界マーケティング短信:音楽大手ユニバーサルとTikTokの契約が終了

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:音楽大手ユニバーサルとTikTokの契約が終了

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

契約打ち切りで、ユニバーサルの楽曲がTikTokで使用不可に

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とTikTokは、1月末を期限としていた楽曲使用契約の更新が合意に至らず、契約が終了した。UMGにはテイラー・スウィフトや宇多田ヒカル、アリアナ・グランデなど国内外の人気アーティストが数多く在籍している。契約終了に伴い、これらのアーティストの楽曲をTikTok上で使用することができなくなり、既に投稿されている動画の中には無音になったものもある。

契約終了前にUMGは公開書簡で「アーティストとソングライターへの適切な報酬」、「AIの有害な影響から人間のアーティストを守ること」、「TikTokユーザーのオンライン上の安全性」の3点への対応をTikTok側に求めていた。

だが提案されたのは「他の大手ソーシャル・プラットフォームが支払う報酬の数分の一のレートの支払い」だったとUMGは説明し、「音楽に正当な対価を支払うことなく、音楽をベースにしたビジネスを構築しようとしている」と批判。他にも「AIが作成した音源でプラットフォームが溢れることを容認」していることや、「押し寄せるヘイトスピーチ、偏見、いじめ、嫌がらせのみならず、コンテンツに関連する問題に対しても意味のある解決策を提示していない」と訴えた。

アマゾンの売上高、市場予想を上回る結果に

アマゾン(Amazon)が発表した2023年第4四半期(10~12月)の決算は、市場予想を上回る結果だった。営業利益は132億米ドルで、前年同期の4.8倍と過去最高に。広告の売上高は147億米ドル(前年同期比27%増)、サブスクリプション事業は105億米ドル(同14%増)、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は242億米ドル(同13%増)だった。AI向けクラウドサービスの需要が増えたことが、AWS事業の増収につながったと同社は説明する。11月には、生成AI「アマゾンQ」の展開を開始している。

同社は昨年2回にわたって大規模な人員削減を行い、27,000人の従業員がレイオフされている。今年に入ってからも動画配信サービスや映画・テレビ制作部門で数百人、ゲーム実況配信サービスでも500人以上のレイオフを発表している。

マッキャンジャパンのストラテジー・ヘッドにオーヤン氏

マッキャンエリクソンのストラテジー・ヘッドに、シャーロット・オーヤン氏が2月1日付で就任した。香港のマッキャンエリクソンやレオバーネット、東京のビーコンコミュニケーションズ、ネイキッドコミュニケーションズ、TBWA博報堂など、グローバルな広告会社で20年以上にわたり、アカウントマネジメントとストラテジックプランニングを経験。2019年に、ネットフリックス・ジャパンでマーケティング職に就いた。

オーヤン氏について、代表取締役社長の青木貴志氏は「唯一無二のマッキャンの理念とビジョンを現代的に発展させるのに最適な戦略家」と評する。またマッキャン・ワールドグループでアジア太平洋地域担当最高戦略責任者を務めるシルパ・シンハ氏は「カルチャーの形成に多大な影響を与えてきた数々のパワーブランドの構築に携わってきており、チームにとても豊富なストラテジーの経験をもたらしてくれると期待しています」とコメントした。

 

10代の女性アスリートに自信を ダヴのスーパーボウルCM

2月11日(現地時間)に開催されるスーパーボウル(アメリカンフットボール優勝決定戦)のCM枠に、ユニリーバのダヴ(Dove)が登場する。毎年豪華な広告が注目を集めるこのCM枠に、同ブランドが出稿するのは2006年以来となる。

次世代の女性が自分の容姿に自信を持ち、自己肯定感を高めるためにダヴが実施しているセルフエスティーム・プロジェクトの一環として、スポーツをする少女のための「ボディ・コンフィデント・スポーツ」プログラムをナイキ(Nike)と昨秋に立ち上げた。プログラムでは11~17歳の女性アスリートを対象とした、スポーツコーチや体育教師が実施する対面式のプログラムを用意している。

今回放映する30秒CMに使われるのは、ミュージカル『アニー』の曲『ハード・ノック・ライフ』。彼女たちは試合や練習での数々の困難は乗り越えられるが、身体への自信の低さでやめてしまうと訴求する。同社の調査によると、10代の少女の45%がスポーツをやめ、その一番の理由が身体に対する自信の低さだという。

なお、モーニング・コンサルト・ブランド・インテリジェンス(Morning Consult Brand Intelligence)のデータによると、Z世代とミレニアル世代のNFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)への関心は64%と過去最高の水準となっている。今年は女性層をターゲットにした広告主が増えると予想されている。

(文:田崎亮子)
 

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Campaign Japan

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