Ryoko Tasaki
2020年2月21日

世界マーケティング短信:正しく恐れるためにできること

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:正しく恐れるためにできること

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

フェイクニュースと向き合うフェイスブック

アジア太平洋地域で6億4100万人ものデイリーアクティブユーザーを抱えるフェイスブックが、新型コロナウイルスをめぐる誤情報や偽情報を削除している。フェイスブックはこれまで、政治広告のファクトチェック(真偽の検証)をしないといった方針が批判されてきた。だが新型コロナウイルスに関しては、「身体に危害を与える原因となる可能性がある情報」に限って削除し、その他の誤情報については表示を減らす。また、日本や香港、台湾、シンガポールなどのユーザーがフェイスブックで新型ウイルス関連の情報を検索したり、インスタグラムで関連するハッシュタグをクリックした場合に、信頼できる情報源へのリンクを表示する機能も追加した。

他にも同社は、新型ウイルス関連の誤情報にプラットフォーム全体で取り組むため、パートナー企業と連携しながらファクトチェックを進めている。例えば、パートナー企業の一つであるAFPファクトチェック社は、機械学習と人間の目によってファクトチェックを行っているが、すべての誤情報に対処できているわけではない。そもそも、疑わしい情報が出始める時期は「それを裏付ける証拠も、検証する方法もまだ無いものです」と、同社のレイチェル・ブランディ氏は語る。このため同社やフェイスブック社は、ユーザーのニュースリテラシーの向上にも努めている。こちらのサイトには「見出しに懐疑的になる」「リンクに注目する」「情報源を調べる」などといった、誤情報を見極めるためのヒントが列挙されている。

データで見る 中国消費者の行動変化

中国では新型コロナウイルスが、消費行動に大きな影響を及ぼしている。このことを象徴するデータをいくつかご紹介する。

【271%】 中国で春節(旧正月)期間中にヨガを検索した件数(前年同時期比)

【600%】 春節期間中の、カルフールの野菜配達サービスの利用者数(前年同時期比)

【-23%】 スポーツコンテンツの視聴率。大型のイベントが相次いでキャンセルされたことを受けて(前年同時期比)

【145%】 免疫強化に関する商品の検索件数(前年同時期比)

【-57%】 スキンケアに関する情報の検索件数(前年同時期比)

情報の錯綜こそが深刻な被害

シンガポールに拠点を置く遠隔医療のプラットフォーム「MyDoc」が、新型コロナウイルスをテーマとしたソーシャルメディアキャンペーンを展開している。「恐怖心は、あらゆるウイルスよりも早く拡散する。恐怖を、脳に感染させないで」と特設サイトに記されているように、ハッシュタグ「#CureYourFear」とともに投稿された画像は、人々が落ち着きを取り戻し、冷静に対処することを呼び掛けている。国内で感染者が増え続ける日本でも、さまざまな情報が飛び交い、人々の不安は募る一方だ。同キャンペーンからいくつか、キャッチフレーズをご紹介する。

「コロナウイルスは肺を攻撃するよりも前に、心に侵入する」

「コロナウイルスよりも早く拡散するものがある。フォビア(恐怖症)というウイルスだ」

「コロナウイルスの震源地は、もはや武漢ではない。耳と耳の間(=頭の中)に移ったのだ」

「音声」で購買の意思決定をする消費者が増加中

音声はまだ比較的新しいプラットフォームではあるが、米国でDTC(インターネット直販)大手50社を利用する1,100名を対象に実施したノスト社らの調査で、4分の1が音声によって購買意思を決定していることが明らかになった。購買の決定打となるのはレビュー(76%)、割引(70%)、写真(61%)。他の購買者がソーシャルメディアに投稿した内容を含むような、ソーシャルプルーフ(社会的証明)のあるサイトから買いたいと回答したのは63%であった。

若者が重視するのは「信じられる」リアル

TikTokがユーザーを対象に実施した調査で、スマートフォンネイティブ世代が大切にする価値観が明らかになった。同調査がキーワードとして挙げているのが、「“信じられる”リアル」。調査対象者の87%が、「自分自身の体験や信じられる人の体験だけがリアル」と回答した。また、動画を加工し投稿するのは、「いいね」やコメントを集めて他人に認めてもらいたいという動機よりも、動画加工や投稿企画を楽しみたいという「純粋な動機」が優位に立つことも特徴的だという。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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