Caroline Foster Kenny
2020年8月27日

成長するか滅びるか 二択を迫られるアカウントマネジメント

アカウントマネジメント(営業企画)は今、重大な分岐点に立っている。その未来は一体どのようなものになるのだろうか? アカウントマネジメントを未来の戦略的成長パートナーへと変える5つの方法について、ワンダーマン・トンプソンのグローバル・チーフ・クライアント・オフィサーが語る。

成長するか滅びるか 二択を迫られるアカウントマネジメント

Campaignが先日、IPA(英国の広告業者団体)のレポート「The Future of Account Management」を要約した記事を公開した。もしこの記事が、我々が現在置かれた状況を正しく反映しているならば、先行きはたしかに暗いだろう。アカウントマネジメントに進化が必要なことは、誰の目にも明らかだ。問題は、どのような方向に進化していくか、である。アカウントマネジメントの未来を見通した者は、今のところいない。

このテーマは私にとって、とても大切なものだ。私がアカウントマネジメントでキャリアを築き、世界最大級のエージェンシーに最近参画し、初のグローバル・チーフ・クライアント・オフィサーに就任したから、という単純な理由だけではない。クライアントとの関係を構築し、クライアントの事業を拡大させることに情熱を注いでいるからである。アカウントマネジメントの領域で、変わらない真実は2つある。クライアントとの関係を構築すること、そしてエージェンシーが最高の仕事をできるようにすることだ。

エージェンシーが成功する唯一の方法とは、クライアントが成功することだ。アカウントマネジメントの成功は、クライアントとエージェンシーの両方が成功した場合にもたらされる。クライアントは今、前例のない大きな困難に直面している。そしてエージェンシーとアカウントマネジメントチームは、この変化に適応して成長するか、あるいは滅びるかの二択を迫られているのだ。

COVID-19は、クライアントにもエージェンシーにも、より一層の変化を迫っている。今こそアカウントマネジメントの仕事を、エージェンシーの収益という観点からだけではなく、クライアントの成長を軸に見つめ直すときだ。クライアントの事業成功に集中するよう、クライアントリード(クライアントの窓口兼リーダー)にインセンティブを与えることは有用だろう。

アカウントマネジメントを、未来の戦略的成長パートナーへと変える、5つの方法をここにご紹介する。

ビジネスを第一に考える

クライアントが必要としているのは、戦略的に考えて世の中全体の動きを把握するパートナー、クライアントが直面している課題を理解し、新規事業やより速く成長できる事業の戦略を立てられるパートナーだ。これは、クライアントと同じ空間で共に創造し、クライアントのビジネスにどっぷり浸かるということを意味する。クライアント企業の株価を毎朝チェックし、さらにもう一歩踏み込んで、彼らのビジネスが自分たちのビジネスになるよう、クライアントと足並みをそろえるのだ。

成長のマインドセットを持つ

今日のクライアント対応には、もっと学びたい、もっと理解したいという強い意欲が求められる。ますます複雑化し、断片化し、常に進化し続けるマーケティングのエコシステムの中で、ソリューションを作ることはとても難しい。特に昨今は、幅広い専門分野と専門知識についても考慮しなくてはならない。クライアントリードは、エージェンシーが適切なタイミングでその力を最大限に引き出せるよう、マーケティング、データ、テクノロジーの最新情報を全方位的に理解しておかなくてはならない。継続的に学び、新しい知識を取り込むことを前向きに楽しむことは、クライアントの、そしてエージェンシーの成功へとつながる。

変化やつながり、コラボレーションを受け入れる

コラボレーションは最強だ。クライアントリードは、多様なメンバーからなる分野横断的なチームを作り、指揮する必要がある。そしてチームがアジャイル(敏捷)かつ流動的に動けるよう、進歩的な新しい運用モデルを設計するのだ。これはエージェンシー内のチームが、エージェンシーにとってではなくクライアントにとって適切かどうかを軸にして動けるよう、社内のあらゆる障壁や、構造的なP&L(損益)の課題などを取り除くことを意味する。分野横断的なチーム群を作り、分散型のワークフローを試し、コラボレーションの技術を受け入れる(これはパンデミックによって特に重視されるようになった)といったことは全て、アカウントマネジメントがクライアントにより良いサポートを提供する上で役に立つ。必ずクライアントチームから学んだ教訓をくみ取り、エージェンシーに定期的にフィードバックすること。

アカウントマネジメントに発言の場を

CMO(最高マーケティング責任者)が消費者の声を代弁するのであれば、クライアントの声を代弁するのはクライアントリードだ。彼らがエージェンシーの経営陣の一員として、十分な権限が確実に与えられるようにしなくてはならない。常日頃からクライアントの事業課題や見解、懸念事項について、経営陣レベルだけでなくエージェンシー全体に共有してもらおう。最優先の議題はクライアントについてと、クライアントの事業だ。クライアントを深く理解するアカウントマネジメントは、製品開発や企業文化について情報提供し、エージェンシーと、エージェンシーの提案が進化を遂げる上で、中心的な役割を果たすべきだ。

クライアントの成長を促進するインセンティブ

クライアントの成長を真に促すパートナーとなるためには、顧客満足やエージェンシーの収益という枠組みを超え、クライアントの事業の成功に焦点を当てたインセンティブを導入する必要がある。個々のクライアントのKPI(重要業績評価指標)とエージェンシーのチームをリンクする方法を見つけよう。それもアカウントマネジメントチームのみでなく、エージェンシー内のあらゆる部門がクライアントの成果に対して、同じKPIのもとで責任を負うべきなのだ。

アカウントマネジメントの仕事は、未だかつてないほどにチャレンジングになった。クライアントの事業成長を軸にアカウントマネジメントを再定義し、インセンティブを導入するには、社内のチームに投資し、施策から顧客成長へと考え方の軸を移すといったギアシフトが求められる。

今日の成長パートナーを大切にし、味方になろう。この最もタフな仕事に光を当て、マーケティングの新しい時代に彼らがクライアントとエージェンシーの両方にもたらす価値を伝えていこう。

キャロライン・フォスター・ケニー氏は、ワンダーマン・トンプソンのグローバル・チーフ・クライアント・オフィサー。

(文:キャロライン・フォスター・ケニー、翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign UK

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