David Blecken
2018年5月31日

テンセント、日本発ゲームのリローンチに日本の制作陣を起用

ゲームセンターで長らく親しまれてきた格闘ゲームを、「重力猫」の監督が現代風な世界観で描く。

テンセント(腾讯)は、同社が最近ライセンスを取得したゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)」のプロモーションを展開。携わったのは、このゲームの発祥地である日本の制作陣だ。

「不条理な現実(Absurd Reality)」と題されたショートフィルムに描かれるのは、制圧しようとする勢力に対して立ち上がる3人の姿。エージェンシーは上海に拠点を構えるGoodzillaで、監督は「重力猫」の作品で知られる柳沢翔氏。制作はdictionary films、ポストプロダクションはCutters Studioが手掛けた。撮影は全て日本で行われた。

KOFは1994年、SNK(大阪)がゲームセンターの格闘ゲームとして発表したもので、最新作は2016年に発表された。テンセントは最近、このゲームをモバイルゲームとして、全世界にむけて配信を開始している。

このショートフィルムのエグゼクティブプロデューサーを務めたピーター・グラス氏は「KOEは現代日本の文化財として重要な位置づけにある」と語る。(同氏はDictionary Filmsを最近退職して新会社を設立)

テンセントが「日本らしいものを中国で模造しようとしなかった」ことは称賛に値する、とグラス氏。テンセントとGoodzillaは基本的に、柳沢監督に制作を一任したという。なお撮影時は台風の真っ最中であり、肉体的に非常に過酷だったとのことだ。

Campaignの視点:
「ストリートファイター」や「鉄拳」と並ぶ名作としてゲームセンターで愛されてきたKOFにふさわしい、趣があって目を引く作品だ。アニメの世界のようにやや大げさで激しいアクションシーンも、現代風な解釈で描かれている。

アジアの誇りの源であり支持者も多いコンテンツの知的財産に、敬意を表することの重要性をテンセントはきちんと認識している。このショートフィルムは、高く評価されるディレクターと、付加価値の高さで知られる日本のプロダクションの力が結集した作品といえるだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

2 日前

クリエイティブマインド : メリッサ・ボイ(MRMジャパン)

気鋭のクリエイターの実像に迫るシリーズ、「クリエイティブマインド」。今回ご紹介するのはMRMジャパンのシニアアートディレクター、メリッサ・ボイ氏だ。

2 日前

世界マーケティング短信: TikTok米事業、売却か撤退か?

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2 日前

ブランドがパロディー動画に乗り出す理由

エンターテインメント要素のあるストーリーテリングは、消費者からの注目を集めると同時に、ブランドに創造的な自由を与える。

2 日前

生成AIは、eメールによるカスタマーサポートをどのように変えるか

従来のチケット管理システムでは、現代の顧客からの期待に応えられない。企業はAIを活用してeメール戦略を洗練させ、シームレスな顧客体験を提供する必要があると、イエロー・ドット・エーアイ(Yellow.ai)のラシッド・カーン氏は主張する。