Ryoko Tasaki
2019年10月18日

世界マーケティング短信:躍進するアマゾンの検索広告

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
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アマゾン、検索広告で急成長

イーマーケター(eMarketer)の最新の調査によると、米国市場の今年の検索広告売上高(552億米ドル)の7割強をグーグルが占めるが、来年はわずかに減少すると予測される。一方、現在12.9%を占めるアマゾンは、今後2年間で15.9%にまでシェアを拡大すると見られている。eMarketerの主席アナリスト、ニコール・ペリン氏によると、アマゾンの強みは、購入意欲が高い消費者が検索することにあるという。

好調なアマゾンだが、ユーザーにとって最も適切な商品でなく、自社にとって収益性の高い商品を優先的に表示しているとウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。また欧州連合(EU)は、同社の外部出品者データの不正使用疑惑を調査している。


DAN、中国でEコマースエージェンシーを買収

電通イージス・ネットワーク(DAN)が、中国のeコマースエージェンシー「Shanghai EBP Internet Technology」(EBP社)を買収した。世界最大のeコマース市場である中国で2012年に設立したEBP社は急成長を遂げてきた。今回の買収の目的は、iProspectの中国における事業基盤の拡大、ECマーケティングのサービス機能強化にある。「買収によって両者の関係が強化されて多くのシナジー効果が生まれ、両社の顧客ポートフォリオの機会を広げていくでしょう」とDANの中国代表であるミシェル・ラウ氏は語る。


Appier、エモーションインテリジェンスを買収

AI(人工知能)を活用するテック企業Appier(エイピア、本社:台湾)は16日、エモーションインテリジェンス(以下Emin、本社:品川区)を買収した。Eminは、オンラインショッピングに関わる購買行動を予測するAIソリューションを提供する会社で、ECサイトで購入を迷っている顧客にクーポンや、訴求力を高める情報を提示して購買を促進している。Eminが培ってきたEC事業者向けソリューション開発における経験を、Appierのマーケティングプラットフォームに統合し、デジタルマーケティング領域を包括的に扱っていく。Appierのチハン・ユーCEOは、カート離脱などEC事業者にとって深刻な課題に取り組む中でEminを知り、「彼らの技術を使えばこの問題を解決できると確信しました」とリリース内でコメントしている。


周年キャンペーンが台風上陸と重なってしまったUber Eats

ウーバーイーツ(Uber Eats)は日本でのサービス開始から3周年を記念したキャンペーンを実施中だ。第1弾はプレゼントキャンペーン、第2弾は対象メニューの30%オフになるというものだが、この第2弾の開始が台風19号上陸と重なってしまった。台風が直撃する12日にはサービスを終日休止することが前日に発表されたが、その間、配達員の安全性を軽視しているとして批判が寄せられることに。同社は前週にも、こぼれていた食事を受け取り拒否したらマンション共有部分に投げ捨てられていたという件で話題になったばかり。また、今回の台風のような事例は昨年9月、台風の中でピザ配達員が立ち往生する動画がツイッターに投稿され、休業を決断しなかった会社への批判が集まった。


ダイソン、電気自動車の開発を中止

英家電大手ダイソンは、電気自動車の開発プロジェクトを中止すると発表した。同社は2016年、25億ポンド(約3500億円)を投資して電気自動車を開発することを発表。2018年10月にはシンガポールに開発施設を設置することも明らかにしていたが、今月10日にジェームス・ダイソン氏(創業者)が「商業的に不可能」と判断したと発表。電気自動車用の資金は、電池などの開発プロジェクトに使われる予定。同社は今年1月、本社を英国からシンガポールに移しており、今後もアジアでの拡大を視野に入れている。


悩みや感情を打ち明けやすい環境づくり

香港のメンタルヘルス向上に取り組む「Mind HK」が、世界メンタルヘルスデー(10月10日)に合わせて「#HowOkayAreYou」キャンペーンを開始した。騒動が続く香港では、精神面の健康状態がここ1年で悪化。同団体が9月に、世界保健機関(WHO)の精神健康状態表(WHO-5)を用いて調査したところ、この地域での精神健康が2018年から11%低下していることが明らかになった。「ここ数カ月は香港にとって非常に困難な時期でしたが、この問題は数年前から専門家たちの間で認識されていました」とコメントするのはポー・ワン・チェンCOO。そこでMind HKは、香港住民が感情を吐露しやすいようWhatsApp(メッセージアプリ)のスタンプを数種類用意した。また、実際に悩んでいる人がいる場合にはどのような会話をした方が良いのか(『大丈夫か?』のようにYes/Noを選択できる質問でなく、オープンクエスチョンが望ましい等)といったガイドラインも、公式サイトに記されている。


ダンキン・ドーナツのCMOが辞任

ダンキン・ドーナツのトニー・ワイスマンCMOが12月1日付で辞任することが明らかになった。同氏は2017年9月に同社に参画し、ブランドロゴから「ドーナツ」の表記を除くリブランディングや、発泡スチロールカップの紙カップへの切り替えなどを手掛けてきた。10月3日には全米広告主協会(ANA)のイベントに登壇し、今後の展望などを語っていた。後任は未定で、ワイスマン氏も後任者探しを支援するとのことだ。

文:田崎亮子

提供:
Campaign Japan

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