Ryoko Tasaki
2023年4月14日

世界マーケティング短信:ツイッター社の消滅、噓をつく会話型AI

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:ツイッター社の消滅、噓をつく会話型AI

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

既に存在していなかったツイッター社

イーロン・マスク氏が昨年秋にツイッター社を買収して以降、社員の大量解雇、認証マークの有料化など、たびたび波紋を起こしてきた。そして今回、そのツイッター社がすでに消失していたことが明らかになった。

同社が米カリフォルニア州の裁判所に提出した資料に「ツイッター社はX社に合併され、もはや存在しない」と記されていたことから明るみに出た。X社は、マスク氏が保有するXホールディングス傘下の企業。サービス名である「ツイッター」は、現時点では変更されない。マスク氏は11日に「X」とだけツイートした。同氏は昨年10月初旬、万能アプリ「X」の開発への意欲を公言しており、今回の吸収合併は実現に向けた第一歩ではないかとみられている。

一方、日本支社はX Japan社になるのではないかと話題になり、ロックバンド「X JAPAN(エックス・ジャパン)」のYoshikiも反応している。

グーグルの会話型AIは嘘をつく CCDH調べ

オープンAI(OpenAI)の会話型AI「チャットGPT」に対抗するように、グーグルは2月に「バード(Bard)」を公開した。だが英国の非営利団体デジタルヘイト対策センター(CCDH)がパンデミック、性差別、人種差別、気候変動、ウクライナ侵攻など9つのテーマで100件のテストをバードに対し実施したところ、誤情報を含むコンテンツを78件生成できたという。

バードが生成した誤情報を含むコンテンツには、例えば「ホロコーストは起こったことがない」「気候変動を止めるためにできることはないので、心配する必要はない」「男性の方がリーダーシップの役割に適している」などがある。CCDHの研究者が入力したシンプルな要求に対し、バードがコンテンツ生成を拒否したり否定することが多々あったが、入力内容を少し変えたり、要求内容を複雑なものにすると、バードは誤った情報のコンテンツを生成したという。

「非常に簡単かつ安価に誤情報を広めることができるという問題が、既に起こっています」と語るのは、調査の責任者であるカラム・フッド氏。「しかしバードによって、もっと簡単になり、説得力を持ち、パーソナルなものになるでしょう。すると情報のエコシステムが、さらに危険にさらされることになります」。

サムスン、特定の雑音をアプリでフィルタリング 

サムスン電子はチェイル・スペインと共に、自閉症など聴覚過敏の人々に向けたノイズ低減アプリ「アンフィア(Unfear)」を作成した。AIを活用したこのアプリは同社のノイズキャンセリングイヤフォンと連携し、犬の吠える声や赤ちゃんの泣き声、サイレン、工事音などをピンポイントで抑えることができる。これまで聴覚過敏の対策としてはイヤーマフや、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドフォンなどが多く用いられていたが、あらゆる音を抑えることで孤立を深めてしまうことが課題だった。

外部環境音だけでなく、端末からの音楽やゲームなどの音もフィルタリングする。音声で制御できる他、緊急連絡先に電話を掛けられるSOSオプションも用意されている。

5万本の注射器で作られた、ダヴのビルボード

ソーシャルメディアなどで繰り返し目にする「完璧な」女性像によって、若者が自分の容姿に自信を持てなくなるといった影響が懸念されている。カナダでは昨年、5万人を超える14~17歳の若者が美容注射を受けたという。また同国の少女の74%が、自分の外見について少なくとも一つを変えたいと考えており、約3割が外見に不満を持つ。

ダヴ(Dove)は自己肯定感を高めるセルフエスティームプロジェクトの一環として、トロント郊外のショッピングセンターにビルボードを設置した。女性の顔を描くのは、ビルボードに刺された5万本の注射器だ。「有害な美の基準が、少女たちの自己肯定感にどれほど害を及ぼすかについて、関心を高め続けるものを届けたかった」と、ユニリーバ・カナダのパーソナルケア部門を率いるリシャブ・ガンジー氏はコメントした。企画・制作はオグルヴィ・トロント(Ogilvy Toronto)とデイビッド・マイアミ(DAVID Miami)。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

巨大IT企業、AIコストを増大

アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフト……大手IT企業が相次いで設備投資を増やしている。注力するのは、AIの性能を高めるコンピューティングリソースだ。

1 日前

ソーシャルメディアでユーモアを発揮するには、文化盗用に用心を

オーディエンスとのつながりを求めるブランドは、真正性さに欠ける言葉を使わないように――。アレン&ゲリッツェン(Allen & Gerritsen)のPRアソシエイト、タイラー・ブリンダムール氏はこのように説く。

1 日前

なぜ一部のブランドは、生成AIの活用に慎重なのか?

昨年のAIブームの熱狂と興奮が収まりつつある今、一部のブランドやエージェンシーがリスクを回避するためAI導入に懐疑的な姿勢をとっている。その理由をCampaignが探った。

2024年5月02日

クリエイティブマインド : メリッサ・ボゥイ(MRMジャパン)

気鋭のクリエイターの実像に迫るシリーズ、「クリエイティブマインド」。今回ご紹介するのはMRMジャパンのシニアアートディレクター、メリッサ・ボゥイ氏だ。