Ryoko Tasaki
2023年8月04日

世界マーケティング短信:X(旧ツイッター)がヘイト監視団体を提訴

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:X(旧ツイッター)がヘイト監視団体を提訴

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

ヘイト対策に関する調査で、広告主が離反したと主張

 X(旧ツイッター)は、虚偽の情報を拡散させて広告主を離反させたとして、英NPO「デジタルヘイト対策センター(CCDH)」を提訴した。

CCDHは、イーロン・マスク氏の買収以降に同プラットフォームでヘイトスピーチが蔓延したとの調査結果を6月に発表した。ヘイト(人種差別、同性愛嫌悪、ネオナチ、反ユダヤ主義、陰謀論など)を投稿した有料会員の99%に対して何も対策を講じなかったことを明らかにしている。この調査結果は7月19日のブルームバーグの記事で引用された。

X側はCCDHに対して訴訟を検討するとの書簡を20日に送り、31日付で提訴した。CCDHがXのプラットフォームから違法にデータ収集(スクレイピング)を行い、自分たちに都合の良い投稿内容のみを選んで有害コンテンツの増加を裏付けた結果、Xは広告収入を失ったと主張している。

ベイン、豪マックス・ケルセンの2部門を買収

ベイン・アンド・カンパニーが、豪マックス・ケルセン・コンサルティングのコンサルティング部門とマネージドサービス部門を買収した。マックス・ケルセン・コンサルティングは2015年に設立し、フルスタック機械学習エンジニアリングチームはAIを活用したアプリケーションや機械学習システムなどを提供している。リアルタイム予測、コンピュータービジョン、産業制御最適化などを手掛け、金融や小売りなど幅広い業界にサービスを提供しており、特にヘルスケアやライフサイエンスの分野に強みを持つ。60名強の従業員はベインのアドバンスド・アナリティクスグループ(AAG)傘下に入る。なお、マックス・ケルセンの製品部門と研究部門は今回の買収には含まれていない。

ベインのAAGグローバルヘッドであるロイ・シン氏は声明で、次のようにコメントしている。「技術の世代交代による変革が各業界で相次ぐ中、クライアントがいち早く対応できるようにするAI関連のサービスやエンジニアリング能力の需要はますます増えています。マックス・ケルセン・コンサルティングチームと共に、業界をリードする機械学習の専門知識を活かし、より強力なソリューションをクライアントに提供できることを嬉しく思います」。

良いムードを壊さないよう奮闘 不二ラテックスの新動画

不二ラテックスのコンドームブランド「SKYN(スキン)」のキャンペーンはこれまで、カップルのリアルを追求し、穏やかなトーンで描いたものだった。催眠術によってお互いのことを知らない頃に戻したり、連絡を取れない状態で別々の場所からお互いを探したり、目隠しした状態で相手の手に触れてパートナーを当てるなど、絆や思いやりを軸としたキャンペーンを展開してきた。だが最新の動画は、これまでのものとは趣が異なる。

恋人と良いムードになるが、コンドームの買い置きが無いことに気付いた男性。ムードを壊さないよう気を付けながら買いに行くが、野良犬に追いかけられ、工事現場を飛び越え、不良たちに絡まれてと、アクションとコメディが連続する。ようやくドラッグストアに到着するが……。

企画・制作を手掛けたウルトラスーパーニューのクリエイティブディレクター、小澤洋輔氏は「新しいキャンペーンも、カップルの関係を守ることを目指したものですが、今回は男性の視点からとらえたストーリーで、男性が経験する感情を描いています」と語る。「若いオーディエンスを魅了するため、アクションとコメディの要素を加えました」。

90年代のノスタルジーを刺激する保険のCM

米国の保険会社CSAAは、1990年代に人気を集めた男性ボーカルグループのメンバーを複数起用し、懐かしさを呼び覚ます動画を公開した。登場するのは、イン・シンク(NSYNC)のジョーイ・ファトゥーン、ナインティーエイト・ディグリーズ(98 Degrees)のニック・ラシェイ、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック(New Kids On The Block)のジョーイ・マッキンタイア、ボーイズ・トゥ・メン(Boyz II Men)のウォンヤ・モリス。4人が「ボーイズ・ノー・モア」という架空のグループを結成したという設定で、SNSの公式アカウントも用意された。クリエイティブを担当したのはデロイト・デジタル。

彼らが歌う「メイク・イット・ライト(Make It Right)」は今回のために書き下ろされた曲で、人生がうまくいかなかったとしても私たちが支える……といった内容の歌詞になっている。楽曲へのリンクサイトには、90年代を彷彿とさせるカセットテープの画像を掲載。また4人は実際にはツアーを開催していないが、ツアーバスの車体が米国内の都市を訪れた。

「新しくてエキサイティングなものを生み出し、視聴者や顧客を驚かせ、喜んでもらうことが目標でした」と語るのは、CSAAのカスタマーエクスペリエンス&マーケティング担当EVPのリンダ・ゴールドスタイン氏。「90年代のボーイズバンドの音楽のオマージュである動画によって、視聴者がかつてテレビでこのようなバンドを見たり、ライブに出かけたりしていた時代へと呼び戻したかったのです」。また「保険とボーイズバンドは、ユビキタスな存在であることが似ている」とし、出来るだけ多くのファンにアピールすることが重要だったと述べた。

なお同社は昨年も、リック・アストリーの1987年のヒット曲を用い、本人が登場する動画を公開している。「君を諦めない、がっかりさせない、浮気もしないし見捨てない。泣かせないし、別れを切り出すことも、嘘をついて傷つけることもない」という原曲の歌詞が、保険会社のメッセージとも合っていた。

【お知らせ】
来週は「世界マーケティング短信」の配信をお休みさせていただきます。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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