Anthea Tang
2016年12月06日

ウェブサイトのローカライズにありがちな(そして回避可能な)落とし穴

言語の違いに惑わされて大切なことを見失わずに、それぞれの市場でウェブサイトの魅力を最大化するためのヒントを示す。

アンシア・タン
アンシア・タン

一貫性は効果的なブランディングに欠かせない要素だ。しかし、全ての市場にあまねく響くブランドメッセージなどというものは存在しない。ブランドは統一感ある理念やビジョン、目標を打ち出す必要があるが、世界市場に真剣に挑もうとするならば、それぞれの市場の特性を酌んだ本格的なウェブサイトや、市場に合わせて商品・サービスやユーザー体験を調整することが求められる。

さまざまなグローバル企業が「グローバルに考え、ローカルに行動する」という課題に取り組んでいる。そうした企業との仕事を通じて得られた学びの一つは、「ウェブサイトのローカライズによくある落とし穴は、避けられるものばかりである」ということだ。

オンライン上の取り組みをローカライズする際のよくある問題を以下に挙げ、新規参入先でもブランド本来の持ち味と一貫性を維持するために当社が実施したことを、成功事例と併せて紹介する。

消費者を置き去りにした自社テクノロジーありきの立ち上げ

新しい市場に進出しようとするグローバル企業が最初に自問すべきは、「事業のグローバル展開におけるKPI(重要業績評価指標)の達成を、可能にするユーザー体験とはどのようなものか?」だ。もし、自社のテクノロジーや組織構造ありきで着手すれば、ユーザー体験はその時点で既に損なわれている。オンラインでの購入を伸ばす方法の検討、店舗への来店の促進、全般的なブランド認知度の向上など、とにかく消費者と関係するところから始めよう。消費者のことを第一に考えてデジタルエクスペリエンスを設計した好例に、「デザインホテルズ」がある。同サイトは壮大かつ大胆なイメージ画像を掲げ、ホテルのカテゴライズ方法や新しいロケーションの紹介、厳選したホテルで丁寧に構成された選択肢など、ユーザーにとって大切なことは何かという視点からデザインされている。

コピーの工夫と翻訳の混同

文化的なニュアンスや本当の意味でのローカライズより、字数や字面に気を取られてしまうことも、ありがちな、そして簡単に回避できる落とし穴だ。SEO(検索エンジン最適化)においては、その企業にとって重要なキーワードの直訳が必ずしも最適な結果につながらないこともあると、肝に銘じておかなければならない。「グーグル翻訳」に頼った翻訳など、もっての外だ。当社がミキモトの北米向けウェブサイト拡張を手掛けた際には、求められているコンテンツを深く理解している日本のデジタル・マーケティング・チームと密に連携して作業を進めた。併せて、北米市場での真のローカライズを実現するために、一つ一つのテンプレートを入念に確認した。

文化的背景への配慮を欠いたビジュアル

ウェブデザイン全般に言えることだが、それぞれの市場の違いを踏まえたデザイン、コンテンツ、文化的背景への配慮という点で、改善の余地が大いにある。それにも関わらず、企業の本拠地でのデジタルエクスペリエンスが規定値になっており、他の市場に当てはめるための調整には重きが置かれていないのが現状だ。ニュアンスに全てがかかっていると言っても過言ではない。言葉遣い、画像、コンテンツ、サイトの構成、アイコンは適切かなど、サイトのデザインをあらゆる角度から徹底的に見直し、文化的なニュアンスへの配慮ができているかを入念に精査することを勧める。例えば「ワン・アンド・オンリー・リゾート」のウェブサイトの制作過程では、適切なデザイン調整ができるよう、中東やアジアを含む全ての市場を考慮に入れた。新しい市場に進出し、プロダクトを投入する上で、障害になり得る制約はあるのか。その見極めには是非力を入れてほしい。おそらくこれがウェブサイトのローカライズにおいて最も重要な点なのだが、残念なことに見過ごされていることが多い。

コンテンツ配信をおろそかにすること

こうして海外市場でのウェブサイト立ち上げにこぎ着けたとしよう。「お疲れ様!」とねぎらいたいところだが、これで仕事をやり遂げたと思ったら大間違い。スタート地点に立ったに過ぎない。さまざまなコンテンツ配信の仕組みを視野に入れた仕事が、これから始まるのだ。例えば、フェイスブックやツイッターは欧米では人気があるかもしれないが、アジアやアフリカではそれほどでもないかもしれない。ターゲット市場で最も有効なコンテンツ配信方法は何かを見定め、ユーザーに対する持続的なブランドメッセージの訴求力を高め、ひいてはユーザーを自社のウェブサイトに誘導できるよう利用しよう。

急成長する市場への進出を目指すグローバルブランドは、ウェブデザインを慎重に行う必要がある。そのウェブサイトを見てくれる人々に対する理解を深めよう。目的を持ってデザインしよう。時間をかけて現地での関係作りをしよう。さもなければ、言語の違いに振り回されて道を見失ってしまうだろう。

アンシア・タンはロッカン・シンガポールのゼネラルマネジャー。ロッカンはニューヨークを拠点とするピュブリシス・グループ傘下のデジタル・クリエイティブ・メディア・エージェンシー。

(文:アンシア・タン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

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