Campaign Staff
2019年3月08日

世界マーケティング短信:音声広告の可能性

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをまとめてお送りする。

(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

音声広告の開発に積極的な博報堂

博報堂 DYメディアパートナーズは音声広告の日本への導入を目指し、米国の音声広告テクノロジー企業「インストリーマティック(Instreamatic)」と連携する。クライアント企業のインタラクティブ音声広告を制作し、音声のプレミアムパブリッシャーでの提供を検討。できる限りリアルな「消費者との対話」を目指しており、音声広告への興味の有無や、追加情報を欲しいか否か、あるいは広告を止めたいといった意思を、聴取者が声で示すことができる。

インストリーマティックのスタス・タシンスキーCEOによると、他市場では広告へのエンゲージメント率が112%以上となった広告主もあるとのことで、これは平均的なバナー広告のクリックスルー率と比較すると、とても高い数値だ。「音声広告のエンゲージメントは、広告をクリックしたり、受動的に聞き流すものと大きく異なります。聴取者はまずメッセージの内容を理解し、考えてから返事する必要がある。これが広告想起率や、購買可能性を高めると考えられます」とタシンスキー氏。「つまり、たとえ広告に『興味が無い』という返事であったとしても良いのです。ユーザーはメッセージを聞き、広告に関与したということなのですから」

今もなお物議を醸す「恐れを知らぬ少女」像

ステート・ストリート(米資産運用会社)の委託を受けて「恐れを知らぬ少女(Fearless Girl)」の像を制作したクリステン・ビスバル氏が、そのレプリカを販売することは法律で認められなくなったとロイターが報じた。複製の販売は知的財産権の侵害にあたる他、像の意図する「女性管理職が企業の業績に良い影響を与える」というメッセージを薄めかねない、とステート・ストリートはコメントしている。

設置当時から物議を醸していたこの像は、そもそも実現すらしなかった可能性もあった。マッキャン・ワールドグループは当初、金融街の象徴である雄牛の像「チャージングブル」の対面に設置する像として、雌牛の像を提案。だがステート・ストリートの反応は芳しくなく、マッキャンは他のクライアントにもこの案を提案しながら、ようやく少女の像になることが決定したのだった。少女の像は女性の地位向上の象徴となったものの、その影響力に疑問を呈する者も少なくない。中には、ステート・ストリートがかつて女性役員に十分な賃金を払っていなかったことを問題視する声も。

「恐れを知らぬ少女」像に賛同する者も、異を唱える者もいるだろう。だが設置から2年を経て、今なお人々の話題に上り続けるこの像は、力強い訴求力を持っているといえよう。

予想ほどは悪くなかった、WPPの業績悪化

WPPは2019年の純売上高が1.5~2.0%下落し、業績がさらに悪化する見通しだと発表した。だが発表と同時に、同社の株価が上昇。投資家が恐れていたほどは悪くなかったためである。同社は、昨年CEOに就任したマーク・リード氏が率いる変革の真っただ中にある。リード氏は今週、広告主企業がメディアバイイング機能をインハウス化(自社内で行うこと)する潮流を批判。有能な人材の採用がいかに困難かが、過小評価されていると述べた。

レクサス、匠の技術を6万時間の動画で紹介

レクサスが、日本の匠に焦点を当てた1時間のドキュメンタリー番組を制作、3月19日よりアマゾンプライム・ビデオにてグローバルに配信される。ナレーションは、ニール・マクレガー氏(大英博物館の元館長)。宮大工、料理人、切り絵アーティスト、レクサスの品質検査担当といった4名の匠たち、ものづくりや人工知能(AI)の専門家らへのインタビューが収録されている。

6万時間に及ぶ映像はwww.takumi-craft.comから視聴できる。このロングバージョンの映像には、匠の技術をループ映像で繰り返したものも含まれており、技術の習得までに繰り返した鍛錬を表現している。「職人技はレクサスにとって非常に重要」と、同社のブランドマネジメントならびにマーケティングのグローバル責任者、スピロス・フォティノス氏は語る。「AIや3Dプリンター、仮想現実(VR)が進歩を遂げた未来を想像すると、実体のあるものや、人の手によって作られたものの価値が高まることが考えられます。リアルであることが、新しい贅沢となるのです」。レクサス側の意図としては、ロングバージョンをすべて視聴してもらおうということではない。どのような道も、極めるにはとてつもなく長い時間がかかることを伝えようというものだ。

自動車関連の話題でいえば、今週のカルロス・ゴーン氏(日産自動車 前会長)の保釈に先立ち、Campaignではゴーン事件は「日本ブランド」にマイナスの影響を及ぼすのかを検証した。

中国メディア、著名人の人気偽装を調査

中国中央電視台(CCTV)の調査レポートは、SNSアカウントの人気を高めてくれるエージェンシーを探すのがいかに簡単かを示唆している。一例として、約1.5米ドルで微博(Weibo、中国最大のSNS)のフォロワーを400名、あるいは特定の投稿について100シェアを増やす基本パッケージを提供する代理店があるという。

SNS上での人気偽装を撲滅しようと、中国当局は断固たる措置をとり始めている。最近では男性アイドルグループ「Nine Percent」のメンバー、蔡徐坤がオンライン上での人気を偽装した容疑で逮捕された。同氏はシャネル、ロレアル、NBAといったブランドの広告出演の契約を獲得していた。

これとは別にインスタグラムは、ブランドがインフルエンサーの投稿を、広告のようにプロモートできるようになったことを今週発表した。インフルエンサーマーケティングの透明性を高めるための取り組みとみられる。この新しいブランドコンテンツ広告は、ブランドとインフルエンサーの間ですでに発生している有料プロモーションを、正式化するものとなるだろう。

モバイル広告に与えられる時間はわずか1秒

人々はモバイル広告に1秒以内に反応することが、米モバイルマーケティング協会の委託研究で明らかになった。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。正確には、調査内で用いられた7割のモバイル広告に対し、被験者たちはわずか400ミリ秒(1000分の400秒)で情緒的反応を示したのだ。この結果に胸が躍るのか、あるいは不安に駆られるのかは、マーケターの思考次第といったところだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

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Campaign Japan

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