Edward East
2020年1月03日

2020年のインフルエンサーマーケティングを占う

時にいわれなき批判を浴びるインフルエンサーマーケティングだが、今年はより大きな存在になるだろう。その絶大な効果は決して見逃せない。

人気モデル、ベラ・ハディッド(左)がバーチャルインフルエンサーとキスをするカルバン・クラインの広告
人気モデル、ベラ・ハディッド(左)がバーチャルインフルエンサーとキスをするカルバン・クラインの広告

インフルエンサーマーケティングの市場規模は2020年までに100億米ドル(約1兆1000億円)に達する −− 2018年に発表されたこの予測は、その後あらゆるところで活用された(私自身、このデータを信じて盛んに流用したことは重々承知している)。

2019年にはそれが更新され、ビジネスニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、2022年までに150億ドル規模になると報道した。

業界ではインフルエンサーマーケティングを「デジタルのワイルドウエスト(可能性を秘めた未開の分野)」としばしば呼ぶが、それは決して陳腐なことではない。しかし昨年はその否定的側面も話題となった。

最も取り上げられたのは、信用性の明らかな欠如だ。既得権益を持つグループはインフルエンサーマーケティングの浸透を阻もうと、積極的に批判を繰り返した。

中でも懸念されたのは、フェイクフォロワーの存在だった。その対策が論じられている最中、異常に誇張されたネガティブな噂も流布した。経済ニュース専門チャンネルCNBCは、「広告主には13億ドルの対策コストがかかる」などと報道した。

だが最終的には、これらの問題の本質を見極めるのは優秀なマーケターたちだ。彼らはフェイクフォロワーの存在も、その対策も把握している。インフルエンサーの疑わしいアカウントを事前に知らせるツールも、多々生まれつつある。こうしたツールはリーチ数ではなく、正確なエンゲージメントの測定が可能だ。

また、ハイレベルの「自称インフルエンサー」たちが「#spon」「#ad」といったハッシュタグを濫用したことも問題になった。だがそれも大騒ぎするほどのことではないだろう。特に消費者側から見れば。

我々は昨年、これらの問題が消費者にどのような影響を及ぼすか、また消費者はインフルエンサーをどれほど信用しているかを把握するため、数多くのフォーカスグループと協働した。そして、素晴らしい結果を得ることができた。

幅広い年齢層の消費者が、インフルエンサーの投稿でスポンサーのハッシュタグが明示されていなくとも、それが広告であることを十分に理解していた。消費者は賢明かつ多くの知識を持ち、ルールを守っていないと感じるインフルエンサーをすぐに切り捨ててしまう。

実際、彼らはモノを購入する際にはインフルエンサーを単に「起点」として利用し、商品の信頼度はほかのレビューをチェックして判断する。インフルエンサーの言うことは決して額面通りに受け取らないのだ。

我々業界人はもう、「消費者(とクライアント)はマーケティングの仕組みが何も分かっていない」と考えるべきではない。

テクノロジーの発展とともに、スキャンダルも増えた。新しいものでは「マザー・オブ・ドーターズ(英国の人気ブロガー。自分を擁護するためにフェイクアカウントを作ったとして謝罪)」の一件があり、人気モデルのベラ・ハディッドがバーチャルインフルエンサーのリル・ミケーラとキスをするカルバン・クラインの広告も物議を醸した。

こうした状況を見渡すと、インフルエンサーマーケティングは様々な意味でなかなか「エキサイティング」だ。年頭にあたり、このクレージーな世界で今年は何が起きるのか予想してみよう。

「いいね」でいいのか

コンテンツの成功を測る尺度として、「いいね」に代わって具体的な意見やフィードバックが重視されるようになるだろう。それによってクリエイターは話題性のあるコンテンツや、よりダイナミックでソーシャルなプラットフォーム作りに励むようになる。これはブランドにとって極めて明るい要素で、フェイクフォロワーとの闘いに資することになる。「いいね」の獲得数がもともと少ないマイクロインフルエンサーの間では、この傾向は特に強くなるだろう。

プラットフォームの「クロスオーバー」

我が社(BDB)はこれまでユーチューブ、ツイッター、バイン(Vine)、フェイスブック、インスタグラム、インスタグラムストーリーといったアカウントでキャンペーンを行ってきたが、その変遷を振り返ると面白い。今年はこれまで以上にインフルエンサーが増え、その多くがティックトック(TikTok)やユーチューブといった、まだ飽和状態にない成長著しいプラットフォームで活動するだろう。インスタグラムのインフルエンサーがユーチューブにロングフォームのコンテンツを投稿し、さらなる収益化を図るといった「クロスオーバー」はすでによく見られる現象だ。

新たなテクノロジー

エージェンシーが独自のテクノロジーを開発し、クライアントやブランドと協働して世界の様々な地域で複合的なキャンペーンを展開していくだろう。キャンペーンの事前計画を立てるためにいまだ多くの人々が利用するエクセルのソフトは、もう役に立たなくなる。この新たなテクノロジーはチャネルの信頼性と投資価値を証明する上でも、不可欠なものになろう。

インフルエンサーの活用

インスタグラムのツールがeコマースを民主化したことで、洋服ブランドからテック、ライフスタイルのスタートアップに至るまで、インフルエンサー主導の企業がより多く誕生するだろう。その結果、インフルエンサーはこれまでの小売業者の強力なライバルとなる。ブランドはインフルエンサーを遠ざけるのでなく、その戦略的活用法を見出して事業成長につなげていかねばならない。

密なコミュニケーション

インフルエンサーはブランドの倫理観や尺度がどれだけ自分のそれと適合するかを見極め、ソーシャル上でコミュニケーションを進めていくだろう。インフルエンサーを使う広告とは消費者との「会話」を意味し、ヴォーグ誌の印刷広告とは異なるのだ。それはあくまでも、消費者の要求や願望が主導する。我々がフォーカスグループと協働して分かったのは、消費者がインフルエンサーに対し友人に抱くような親近感や信頼性、刺激、現実感を求め、ブランドメッセージを正直に送ってほしいと願っていること。単なる動画ではなく、深みのある魅力的なコンテンツを求めているのだ。

コンテンツの質の向上

こうした消費者の傾向、さらにコンテンツのパフォーマンス評価がソーシャルメディアプラットフォームで改善されていくことを鑑みれば、インフルエンサーの適応力、コンテンツの調整能力は極めて重要になる。ブランドはキャンペーンを成功させるため、どのようなコンテンツが最良のパフォーマンスを生み、オーディエンスとつながるかをインフルエンサーに教示し、信頼していくしかない。

チャネルの変化

ネットフリックス、ディズニー、HBO、アマゾンといったメジャーなコンテンツオーナーが独自のストリーミングサービスを提供するように、インフルエンサーも独自のチャネルを生み出すだろう。それによって彼らの収益とリーチの可能性は限りなく広がる。これまでグーグルやフェイスブックに吸い上げられていたマージンは、払わなくてよくなるのだ。2020年はインフルエンサーが運営するテレビチャネルが出現するだろう。

(文:エドワード・イースト 翻訳・編集:水野龍哉)

エドワード・イーストはロンドンとニューヨークに拠点を置くインフルエンサーマーケティングエージェンシー「ビリオンダラーボーイ」のCEO、創設者。

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