Ryoko Tasaki
2023年11月02日

世界マーケティング短信:メタ、広告回復で過去最高益

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:メタ、広告回復で過去最高益

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

メタの純利益は2.6倍に 一方でメタバース関連は赤字が続く

フェイスブックやインスタグラムを運営するメタ社が発表した第3四半期(7~9月期)の業績は、収益が341.4億米ドル(前年同期比23%増)、純利益は115.8億米ドルで前年同期の2.6倍以上に達し、どちらも四半期としては過去最高を更新した。

収益全体の98.5%を占める広告事業は336.4億米ドル(同24%増)、「その他」は2.9億米ドル(同13%増)。またマーク・ザッカーバーグCEOが「効率化に徹する1年」と宣言したようにリストラを進めるなど、経費の約7%を削減した。9月末時点の従業員数は約6.6万人で、前年同期から24%減っている。一方、メタバースに焦点を当てるリアリティ・ラボ部門は、VRヘッドセット「Quest 2」の売上が減少し、収益は2.1億米ドル(同26%減)、営業損失は37.4億米ドルとなった。第4四半期も投資を続けるため、営業損失は大幅に増加していく見込みだという。

同社は、今年夏に欧州議会が可決したデジタル市場法(DMA)とデジタルサービス法(DSA)への対応を求められている。欧州で有料版を開始する計画も発表されている。

スーザン・リーCFOによると、第4四半期の初めは広告支出が軟調で、これはイスラエルとハマスの衝突によるものとみられる。「需要の軟化に、特定の地政学的な事象が影響を与えたか判断するのは難しい。しかし歴史的にはウクライナなどでの紛争の後、広い範囲で需要が軟化してきました」。

WPP、業績が予想を下回る結果に

WPPが発表した第3四半期の業績によると、収益が35.1億ポンド(前年同期比1.8%減)と予想外に減少した。同社の収益の3割強を占める北米市場でテクノロジー系クライアントの売上が振るわないなど4.1%落ち込んだ他、中国市場の回復も予想より遅れた。また上半期の成長率が6%以上だったGroupMが、今期は1.6%増と減速している。

マーク・リードCEOは「第3四半期の収益は当社の予想を下回り、第2四半期の慎重な支出傾向の影響が続いています」と認め、特にテクノロジー関連のクライアント全体においてその傾向が顕著で、上半期よりも夏にかけて影響を大きく受けたのがGroupMだったと語った。通期業績予想も当初は3~5%増を見込んでいたが、0.5~1.0%増へと下方修正した。先日発表された競合他社の業績と比べると、好ましくない状況だと言わざるをえない。

状況を改善するためにリード氏が挙げたのは、GroupMの運営モデルの簡素化、そして先日発表されたワンダーマン・トンプソンとVMLY&Rの統合で、2025年までに1億ポンドの節約を見込む。

オムニコム、アセンシャル傘下のフライホイールを買収

オムニコムが、アセンシャル傘下のデジタルコマース企業「フライホイール(Flywheel)」を9億米ドルで買収する。米国のエージェンシーグループ史上で最大規模の買収となる。アセンシャルのダンカン・ペインターCEOがオムニコムに参画し、フライホイールの指揮を執る。

フライホイールのクラウドベースのプラットフォーム「フライホイール・コマース・プラットフォーム」と、オムニコムのオーディエンスデータや行動データを組み合わせることで「競合他社を上回る、エンドツーエンドのサービスを提供できるようになる」とペインター氏。「ますます複雑化する市場において、クライアントのデジタルコマースやメディア出稿の自動化、最適化、そして測定が可能になるよう目指していきます」。

オムニコムのジョン・レンCEOも「Eコマースの売上は世界的に、2025年までに50%成長し、7兆米ドルに達する見込みです。フライホイールの買収によって、最も急速に成長中のデジタルコマース分野とリテールメディア分野において当社の事業領域と影響力は大幅に拡大するでしょう」と語る。

英国に本拠を置くアセンシャルは、カンヌライオンズを運営する他、デジタルコマースやマーケティングなど幅広い事業を手掛ける。今年1月にデジタルコマース事業を切り離す意向を示していた。今回は他にも、ファッショントレンド事業「ワース・グローバル・スタイル・ネットワーク(WGSN)」を、エイパックス・パートナーズ(Apax Partners)に売却する。

ウーバーCMにロバート・デ・ニーロとエイサ・バターフィールド

食品や雑貨の配達サービスと配車サービスの両方を利用できるウーバーのサブスクリプション「ウーバーワン(Uber One)」の動画に、俳優のロバート・デ・ニーロとエイサ・バターフィールドが登場した。

映画の撮影現場にて、ウーバーで取り寄せた食品を食べるデ・ニーロに、バターフィールドがぎこちなく語りかける。2人に共通するのは、食べること、そしてどこかに出かけるという点だ。配車サービスを利用して買い物に行き、食事をとり、共に時間を過ごしながら互いのことを知っていく。企画・制作はマザー・ロンドン。

【お知らせ】

アジア最大の広告クリエイティブ賞「スパイクスアジア(Spikes Asia)2024」のエントリーが始まりました。37回目を迎える今回は、Gaming部門が新設されるほか、Strategy & Effectiveness部門がCreative Strategy部門に代わり、Media部門のカテゴリーが刷新されます。

エントリーの1次締切は12月20日、2次締切は1月17日、最終締切は2月1日。詳しくはこちらをご確認ください。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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