Li Mei Foong
2016年5月10日

セクター・インサイト:美容機器市場の成長を牽引するASEAN

価格に敏感な消費者で知られる東南アジアは、タフな新興市場だ。だが、正しい戦略で参入するブランドにとっては、リターンの大きい市場でもある。

セクター・インサイト:美容機器市場の成長を牽引するASEAN

欧米の「気取らない美しさ」や「自然な美しさが一番」というコンセプトは、アジアでは通用しない。逆に、手をかけるほど美しさの価値は上がるとされる。

こう分析するのは、フラミンゴのディレクター、ハリエット・ロバートソン氏だ。新興市場でも「化粧品の数も、かける手間も多い方が良いと考えられている」と話す。

従来の化粧品だけでなく、今は美容機器も人気だ。高精度な技術を用いた洗顔器、レーザー脱毛器、ライトセラピーマスクなどの器具は、より効果を実感できると謳う。クラリソニックの洗顔器は「手洗いや、ブラシ回転タイプの洗顔器よりも高い効果を生む」とされる音波を使用。フィリップスのビザピュアは、二種類の動きを組み合わせることで「微小循環を促し、肌に透明感をもたらす」という。

「(アジア地域の)消費者は、商品使用による効果を重視します。製品の売り文句を一字一句精査するのです」とロバートソン氏は指摘する。

ユーロモニター・インターナショナルによると、アジアでのパーソナルケア用品の販売量は、今後5年間で50%増となる見通しだ。現在のアジア市場規模は56億米ドルで、これは全世界の市場規模である185億米ドルの1/4以上となる。また、アジアにおける電動洗顔器の売上高は「2010年から2015年までに、約11,000%の大規模な成長を記録」とユーロモニターは報告している。

だがその成功の大部分は、中国の巨大な人口と成熟した市場によるものだ。東南アジアの多くの国における販売量は今も「ごくわずかだ」と語るのは、ユーロモニターの美容・ファッション業界担当シニアアナリストのキム・ミンジ氏だ。平均小売価格が200米ドルという電動洗顔器は、新興市場の多くの消費者には高嶺の花の存在となっている。対照的に、安価な電池式の洗顔器の方が順調だ。

機器の高額さについてはロバートソン氏も同意見で、新興市場では地元産の安価な模倣品が脅威となっていると危惧する。ただし、安価な器具の人気度からは、従来の化粧品では得られない美容効果が新興市場でも求められている傾向が見られ、その需要はまだ満たされていない、とキム氏は指摘。グローバルブランドは、まず安価版で市場の反応を見て、消費者に浸透してきたところでプレミアムモデルを投入してアップグレードを促しては、と提唱する。

高級品と格安品が競争する必要はない、と述べるのは、ミンテルのイノベーション&インサイト担当シニアアナリストのシャロン・クウェック氏。価格に見合った価値が提供されることを、消費者に理解してもらうことが大事で、「事故が起こらないと保証されている品質と安全性に対して、消費者はお金を払うことを拒みません」。またクウェック氏は、洗顔と肌の強化の両方に効果があるFOREOのLUNAシリーズを例に挙げ、多機能であれば価格の高さも説明がつけられる、とする。

もちろん、これらの機能は的確な表現で消費者に訴求する必要がある。「アンチエイジング」のような一般的な用語ではもはや消費者には届かない、とクウェック氏は指摘する。シワやしみなどの具体的な症状にどのような効能があるのかといった、詳しい情報が求められているからだ。

こういった美容機器をどのように売るかが戦略の半分とすると、もう半分は、どこで売るかということになる。キム氏は、オムニチャネル戦略がベストなアプローチだと話す。商品が高額である理由を消費者に理解してもらうには、店舗で製品を試す機会を設けることも大事だが、インターネットを使った販売経路を確保することで市場参入時のコストをカットすることができる。

専門家の意見 美容機器は男性市場がカギとなる

アジアは新しい技術が人気を集める地域であるため、自宅でプロ並みの効果が得られる電動美容機器は大きな話題となっている。トランスペアレンシー・マーケット・リサーチ社によると、2018年までに電動美容機器の売上は世界全体で107億米ドルに達するという。では、電動美容機器への男性の需要はないのだろうか。

確かに、欧米諸国では難しいかもしれない。しかし、男性のおしゃれが大人気のアジアでは、不可能なことではないだろう。

キャスリン・スローアン氏
キャスリン・スローアン氏

アジアでは電動洗顔器によって、男性の美意識がさらに高まる可能性もある。電動グルーミング、電気シェーバー、電動歯ブラシなどはすでに広く使用されているので、電動美容機器が男性の身だしなみのための、新たな必需品として加わることは想像に難くない。

フィリップスはすでにメンズビザピュアの洗顔ブラシを香港と米国で発売している。ロレアルのクラリソニック・アルファフィット・クレンジングシステムやクリニーク フォーメンのソニック システム ディープ クレンジング ブラシ(音波洗顔ブラシ)も最近参入した。

ただし、製品を用意するだけでは十分とはいえない。ブランドの成功のためには、以下のポイントを押さえておく必要がある。

  •  アジア諸国独特の文化や国民性を踏まえて対応
  •  製品のロジックと機能的利点をメッセージとして発信
  • 男性がインターネット上で情報を見つけやすいよう、製品と消費者のタッチポイントを再考
  • 好奇心旺盛なアジア人男性の特徴を活かした、イベントや製品トライアルなど体験型アプローチを企画
  • ネットとリアルの両方での対話を活性化し、消費者との効果的なコミュニケーションを促進

キャスリン・スローアンは、SGKアジア・パシフィックの企業成長部長です。

 

提供:
Campaign Japan

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