Rob Estreitinho
2022年9月30日

マルチブランドパーソナリティ障害とは何か

ブランドがオンラインで自らを際立たせるには、一貫性を保つことが不可欠だ。だが、多くのブランドが多重人格障害に陥り、ソーシャルメディアを効果的に活用できないでいる。

マルチブランドパーソナリティ障害とは何か

私は基本的に、「新しいものは、すべて古いものになる」という原則を信じている。言い換えれば、過去のものより斬新だと思っても、それも、この原則の例外ではないということだ。実際、過去にまったく存在していなかったものを、現在のカルチャーの中に見つけるのはとても難しい。道具は変わっても、人はあまり変わらないのだ。

ソーシャルメディアのオーディエンスについて議論するとき、いつもこの話をするのだが、今は、私の所属するVCCPが支援しているブランドのことに話を戻したいと思う。ブランドを際立たせるには、一貫性を保つことが不可欠で、一貫性のあるブランドは成長の可能性が高いという事実は、英研究者のレス・ビネー氏やピーター・フィールド氏、リサーチ会社カンターのミルウォード・ブラウン氏など、多数の市場調査専門家が指摘しているとおりだ。ところが、ソーシャルメディアで我々が目にするブランドの取り組みは、そのほとんどが、まったくと言っていいほど、このアプローチに従っていない。

深く考えずにミームに飛びついたり、戦略的にはありえないような投稿をしたりするブランドから、テレビCMを短く編集して垂れ流しているブランドまで、大半のブランドのソーシャル戦略は、本質的なブランド資産を損ない、ブランド価値を毀損しているように思われる。このようなブランドは、自分たちとは違う何かになろうとしているか、やり過ぎているかのどちらかだ。その結果、人々がそのブランドから連想するイメージや、ブランドが想起される可能性を損ない、ブランド面や商業面でもたらされる効果に悪影響を及ぼしている。

私はこの状況を、マルチブランドパーソナリティ障害(ブランドの多重人格障害)と呼んでいる。これは深刻な病であるにもかかわらず、マーケティング部門やプランニング部門、あるいはクリエイティブ部門などで十分に議論された様子はない。SNSでノイズを上げるきっかけになればいい方で、場合によっては、多くの広告と同じく、すぐに忘れられ、関心を持たれないまま終わってしまっている。無関心なオーディエンスが、商品やサービスを気にかけたり、購入したり、話題にしたりすることはまずない。

懐疑的な人は、24時間年中無休のソーシャルメディアでは、そもそも効果が薄いことに問題があるのだと言うかもしれない。確かにそうかもしれない。しかし私は、常時接続のメディアで存在感を発揮できていないことが問題なのではなく、ソーシャルメディアとの連携実務に、現実性が伴っていないことにこそ問題があると考えている。したがって、必要なのは革新的な取り組みではなく、「ソーシャルメディア対応の大規模なリアリティチェック」とでも呼べる活動なのだ。

この活動は、ソーシャルメディアに対して適切なアプローチを取る体制ができているか(またはできていないか)を把握することから始まる。もちろんプラットフォームファーストで考えた素晴らしいアイデアをベースに、明解な戦略を描くのも悪くはない。だが、その戦略をすべて形にできる体制ができていないばかりか、地味だが欠かせない作業を期限内に終えることすらできないのなら、ブランドの評判を高めるという望ましい成果は得られるべくもなく、チームのフラストレーションが溜まる一方になるだろう。

次のステップは、ソーシャルメディアを利用する目的について、全社的な合意を形成することだ。多くの場合、社内の各部門が、自分たちの役割は自部門の業務を支援することだと主張するだろうが、それを責めることはできない。実際、理論的には、組織の各部門でソーシャルメディアを使ったさまざまな取り組みを実行することが可能だ。だが、これではブランドパーソナリティが再び分裂してしまうだろう。そしてツイートがすぐに忘れ去られてしまうように、ブランドの一貫性(および新鮮さ)も失われてしまうだろう。

最後に必要なことは、ブランド戦略とプラットフォームでの取り組みに一貫性を持たせることだ。デュオリンゴ(Duolingo)やアルディ(Aldi)、ライアンエアー(Ryanair)など、ソーシャルメディアにおいて際立つブランドには共通点がある。それは、あまりブランドらしくないということだ。これらのブランドはソーシャル上でクリエイターのように振る舞い、明確なペルソナを作り出し、そのイメージを強化している。人は基本的に、顔の見えない企業ではなく、人と関係を築こうとするものだ。したがって、ブランドは社会的なテーマについて考えるより(もちろん価値ある取り組みだが、自己満足化してしまいがちだ)、確固とした社会的ペルソナを確立することが必要なのだ。

見方によっては、ブランドキャラクター(覚えているだろうか?)も、必ずしも古い手法ではなく、オンラインでブランドを表現する新たな手段を提供している。2022年のWARC Effective 100ランキングにランクインしたキャンペーンの大部分が、ユーモアやパロディに依存していたこともその表れだ。こうしたアプローチでいち早く成果を上げている例として、VCCPが最近TikTokで始めた「Compare the Meerkat」キャンペーンがある。このキャンペーンでは、誰もが知っている人気の動物ミーアキャットが、毛皮をまとった本物のコンテンツクリエイターのように振る舞っている。

では、ブランドがマルチブランドパーソナリティ障害に陥らないためにはどうすればいいのだろうか。それには、他のブランドから学ぶのではなく、クリエイターから学び、ベストプラクティスを押し付けるのではなく、人々のオンラインでの生活に本当の意味でエンターテインメント的な価値をもたらすペルソナを確立することだ。システム1グループ(System1 Group)のオーランド・ウッド氏は、「広告で商業的利益を得るには、まず人々を楽しませる必要がある」と述べ、そのことを実際に証明したことでも知られている。ソーシャルメディアはブランドにさまざまな機会をもたらすが、他のメディアと何か違いがあるわけではないのだ。


ロブ・エストレイティーニョ氏は、VCCPのプランニングディレクター

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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