Cecylia Grendowicz
2021年12月03日

メタバースでのブランド構築には無限の可能性がある

まだ光が見え始めたばかりだが、今こそブランドがメタバースに進出する絶好の機会だ。スーパーユニオン香港法人のシニアストラテジストが、6つのポイントをあげてアドバイスをする。

メタバースでのブランド構築には無限の可能性がある

メタバースはメインストリームになった。

パンデミックの期間中、世界中の多くの人々がステイホームを余儀なくされた。しかし、代わりに「あつまれ どうぶつの森」で出会ったり、「レッド・デッド・リデンプション」の焚き火のまわりに集まったりして、バーチャルな世界ではつながっていた。そして、こうしたつながりは今後さらに増えていくだろう。

5Gの登場とVR(仮想現実)他のテクノロジーの進化により、メタバースはより高速に、よりリーズナブルに、より簡単に利用できるようになった。韓国政府はすでに「メタバース・アライアンス」を設立し、国家的なエコシステムを確立して、このデジタルワールドを一企業が独占することを防ごうとしている。フェイスブックが最近行ったメタへの社名変更は、韓国のこの方針とは逆の方向への明確な意思表示だ。

ところで、メタバースとは何だろうか? 多くの人にとってこの言葉は、現実がアバターを介してオンラインで体験されるような、ディストピア的な未来を想像させるかもしれない。もちろん、1999年に登場したバーチャルサイト「ネオペット(Neopets)」でペットを飼っていた人なら知っているように、メタバースは以前から何らかの形ではすでに存在していた。現在は多人数同時参加型のオンラインゲームが主流だが、今後はより多くのカテゴリーに広がり、さらにはそれらがつながったりするようになるかもしれない。

正確な将来像は明確ではないが、これが利益をもたらすことだけは確かなようだ。「ワイアード」の記事によると、ブロックチェーンとNFTの目覚ましい成長により、バーチャルアイテム市場はすでに年間500億ドル(約5兆6700億円)の規模にまで拡大しているという。また、メタバースのボーダーレスでバーチャルな性質は、売上面だけでなく、楽観的な見方をも拡大している。社会的交流の活性化やアクセシビリティの向上、さらにはサステナビリティの向上にもつながる可能性があるというのだ。

時流に乗るブランド

そうした流れを受け、いくつかのブランドはすでにメタバースへの関与を開始している。特にファッション、音楽、エンターテインメントなどの分野では、ゲームプラットフォームにおけるバーチャルなアクティビティや体験が違和感なく受け入れられている。そして、この種の事例は次々に登場している。具体的には、トラヴィス・スコットが「フォートナイト」内で開催したコンサートや、グッチがゲームプラットフォームのロブロックス内に立ち上げた「グッチ・ガーデン」、バレンシアガが新作コレクションの発表の場として制作した没入型ゲーム「アフターワールド:エイジ・オブ・トゥモロー(Afterworld: The Age of Tomorrow)」などが挙げられる。

ただし、まだ試行錯誤の印象が濃いのも事実だ。刺激的だが一回限りのアクティビティが立ち上がるたび、オーディエンスは「かっこいいね、でも次は?」と思っているだろう。また、メタバースとはやや距離のあるカテゴリーのブランドは、バーチャル世界に足を踏み入れるにはどうすれば良いのだろうと悩んでいるに違いない。

多くのブランドは、最初の一歩として、オフラインでの体験をバーチャルで再現することを選んだ。しかし、実店舗や実世界のイベントの再現は、将来的には古臭く、想像力に乏しいものと感じられる可能性が高い。むしろ、メタバースは、ブランドが全く新しいレベルのクリエイティビティを発揮するための場にすべきだろう。

メタバースの好機を理解する

メタバースでのブランド構築の可能性は文字通り無限であり、ユーザーは時間や場所、さらには物理的な法則による制約からさえも解放される。さらに、ユーザーはアバターを使ってメタバースを体験する可能性が高く、それはユーザーの匿名性が増すことにつながるだろう。これは、ブランドにとってのパラダイムシフトを意味する。つまりブランドは、ユーザーを特定の「ユーザー属性」に押し込むのではなく、人々がその場にいたいと望むものを創造する必要がある。当面は既存のプラットフォームとも連携していく必要があるだろうが、それはユーザー体験や、ビジュアル、エンゲージメントにおけるブランド側のコントロールを制限することになる。

戸惑いを感じているとしても、それはあなただけではない。メタバースの可能性を理解し、活用しようと思っている人々やブランドには、まだまだ多くの疑問があるだろう。

ブランドが進出する際の検討事項

メタバースの世界に参入したいと考えているブランドにとって、今は絶好の機会だ。以下の6つの重要なポイントを検討しよう。

既成概念にとらわれない:自社のブランドは、メタバースでどんな種類のタッチポイントを作れるだろうか? 従来のタッチポイントにとらわれずに発想しよう。小売はショップのように見えなくてもいい。商品にパッケージは必要ない。ファッションの新作発表もランウェイにこだわらなくていい。唯一の限界は想像力だけだ。

夢は大きく、スタートは小さく:デジタル体験の優れた点は、適用、変更、テスト、スケールアップが容易で、小規模な実験を実施しやすいことだ。ブランドは、既存のプラットフォームを練習台にして、ゲーム内に親和性の高いアクティビティを創造することにより、少ない投資で大きなインパクトを達成できる(好例は、バーガーチェーンのウェンディーズがフォートナイト内にオリジナルキャラクターを送り込んで話題を呼んだ「Keeping Fortnite Fresh」キャンペーンだ)。そうした小さなスタートの後で、「SKIIシティ」のように、思い切った投資で自社ブランドを冠した世界を構築するのもいいだろう。

よりサステナブルな消費を促進する:メタバースは、製造や輸送に依存しないため、消費を「非物質化」する。メタバースの基盤となるブロックチェーン技術もエネルギー消費を抑えられるものになりつつある。つまりメタバースは消費生活におけるサステナビリティに革命をもたらす可能性があるのだ。新製品については、物理的に製造する前に、NFTなどの形でバーチャルにテスト販売をすることができる。それによりブランドは、物理的な製品を発売する前に消費者の関心度を測定し、生産量も需要に合わせることができる。

新たな次元を探求する:企業は、VRやAR(拡張現実)などを介して高い没入感がもたらされる仮想世界に向けて、多次元のブランディングを考える必要がある。ブランドが3D空間でどのように見えるかだけでなく、どのように動くか、どのように聞こえるか(音声アシスタント、音楽、効果音など)についても検討するべき時だ。さらにはどんな匂いがするかについても、早めに検討して損はないだろう。

オンラインで仲間を見つける:メタバースに無理なくフィットするブランドがある一方で、少々難しいブランドもある(例えば日用消費財など)。しかし、そうした業界の企業でも、実世界でのブランド露出と合致するようなゲームやプラットフォームを選ぶことで、ブランドと親和性の高い体験やコンテンツを制作できる。例えば、ビールブランドのステラ・アルトワ(Stella Artois)は、親会社のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)がスポーツ後援で大きな役割を担っていることから、デジタル競馬「ゼッド・ラン(Zed Run)」のスポンサーとなる選択をした。重要なのは、コミュニティがすでに存在している場所を見つけることだ。そして、自社製品だけではなく、自社の価値観や社会性に基づいたインタラクションを生み出すことだ。

コントロールの放棄を受け入れる:ブランドが作り出す体験は、人々がその場にいたいと望むものであると同時に、利用しているプラットフォームのマインドに合致していることも必要だ。大半の場合、ブランドはプラットフォームを所有していないため、コントロールはある程度放棄するしかない。ゲーマーは熱狂的な一団であり、何か問題が起きればすぐに反応する――その場合のリスクは高いので、何をするにしても本物でなければならない。調査を実施し、社内でゲーマーを見つけるか、または専門家に依頼しよう。うまくいけば、熱狂的な世代の中からブランドアンバサダーを見いだす大きなチャンスとなるかもしれない。DHLがエレクトロニック・スポーツ・リーグ(ESL)のスポンサーになったのが好例だ。

実世界での体験を忘れずに:壊滅的な予測にもかかわらず、現実世界でのふれ合いと体験の価値はなくならないだろう。フィジカルとデジタルをクロスオーバーする体験を創造して、バーチャルとリアルの体験を統合できたブランドが、長期的には勝利を収めることができるのだ。ナイキの「クリプトキックス(CryptoKicks)」のように、NFTグッズの提案とリアルな製品の提案を組み合わせることを考えてみるのも良いだろう。

メタバースの可能性は無限だ。ブランドにとってメタバースは今、利益率がとても高く、創造性に富んでおり、抜群にサステナブルでもある。そしてされに、デジタルネイティブを取り込むための現実的な新たな入り口ともなっている。ここでは、ブランドは新たなオーディエンスにリーチすることができ、製品やコンテンツ、さらには顧客との関わり方にもパラダイムシフトをもたらすことができるだろう。

勇気を持って挑戦するブランドにとって、その可能性は無限だ。次にくるクリエイティブの大革命に参加するならば、今こそこの上ない好機といえるだろう。


セシリア・グレンドウィッチ氏は、スーパーユニオン香港法人のシニアストラテジスト。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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