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2018年7月05日

世界マーケティング短信:緊張高まるソレル卿とWPP

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

マーティン・ソレル卿と、WPPのロベルト・クァルタ会長
マーティン・ソレル卿と、WPPのロベルト・クァルタ会長

ソレル卿の行く手を阻むWPP

マーティン・ソレル卿が新しく立ち上げた「S4キャピタル」が今週、初となる企業買収に乗り出した。買収先は、アムステルダムに拠点を置くデジタルプロダクション「メディアモンクス(MediaMonks)で、入札価格は約2億ドル。だが、事態は予想していたように単純には進まなくなった。ソレル氏がこの春まで率いていたWPPもまた、メディアモンクス入札に手を挙げたのだ。メディアモンクスはこの件について、現時点ではコメントを発表していない。

ソレル氏は買収資金のため最大約13億ドルの調達を目指すようだと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。同紙はまた、ソレル氏のメディアモンクス買収は秘密保持契約に違反しているとWPPが考えていることも明らかに。もし違反していると判明した場合、ソレル氏は約2600万ドル相当の株式配当を失うことになる。

昨今はプロダクションが、エージェンシーの仕事を請け負うのではなく、広告主と直接取引するケースが増えており、プロダクション獲得への動きは理に適う。アクセンチュアもこの買収に関心を示していると報じられている。だがメディアモンクスにとって売却は、自分たちがある程度の自由を失うことを意味しており、売却によって得られるスケールメリットよりも重要な意味を持つだろう。いずれにせよ、「次世代の」コミュニケーションサービス会社を今後5年間で築こうとしているソレル氏にとって、WPPの介入は大きな頭痛の種となりそうだ。

再び注目を集めるビッグデータ

今週はさらに大きな企業買収も話題となった。IPGが世界的なデータマーケティング会社「アクシオム(Acxiom)」を、23億ドルで買収したのだ。リベラム(ロンドンの投資銀行)のアナリストによると、この買収によってWPPがカンター売却を再考する可能性があるとのこと。投資家たちはカンターを売却するようWPPに促しているが、今回のアクシオム買収は、エージェンシーグループがデータサービスに、新たな視点で注目していることを示唆している。「データリーダーシップがメディア戦略や思考において欠かせないという、重要なメッセージを業界内に伝えるものだ」と、R3(広告主と広告会社を仲介するコンサルティング会社)のプリンシパル、グレッグ・ポール氏は語る。

勢いに乗る日本のメディア

ニューズピックス(NewsPicks)を運営するユーザベースが、米アトランティックメディアの経済ニュースメディア「クオーツ(Quartz)」を買収する(取得完了は今月末を予定)というニュースが、世間を驚かせた。日本経済新聞社が2015年に英フィナンシャル・タイムズを買収したのに続き、今回の買収も、グローバル展開への野心を新たに示すものとなった。ニューズピックスは今まさにグローバルに展開していきたい時期であり、一方のクオーツはモバイル向け課金モデルの成功事例に学ぼうとしていた。この買収は両社にとって、非常に好都合だろう。

アイデアを盗もうとするマレーシアの広告主

マレーシアの前首相が汚職疑惑で今週逮捕されたが、同国の広告界も倫理的な問題に直面しているようだ。同国の広告業団体である「4As(Association of Accredited Advertising Agents)」は、エージェンシーが提案したアイデアの所有権をブランドが要求する件について、批判する声明を発表した。アイデアの横取りともいうべき事例の報告を、4Asは「驚くほど多く」受けたという。

同団体は、知的財産を譲るよう求めてくる広告主の企画プレゼンは参加を拒否するよう、エージェンシーに呼びかけている。そもそも企画プレゼン自体、エージェンシーにとって非常にコストがかさむもの。アイデアだけ盗もうなどというのは非常に卑劣な行為で、いかなる状況下でも許容されるべきではない。

ユニクロが示す、アスリートとのスポンサー契約の新しい形

長年ナイキと契約を結んできたロジャー・フェデラー選手(プロテニスプレーヤー)が、このたびユニクロと10年のグローバルブランドアンバサダー契約を結んだ。契約金は約330億円と報じられている。ユニクロは「スポーツの会社」として見られたいわけではないとリリース内で明確にしており、テニスシューズは生産していないためフェデラーはナイキのシューズを履き続けるのではと考えられている(一方、フェデラーとナイキは、頭文字「RF」のロゴマークの所有権をめぐって対立中でもある)。ウィンブルドンで8回優勝したフェデラーの強さは健在ではあるものの、現在36歳であり、これから下降していく局面での契約といえる。必ずしもスポーツそのものに焦点を当てない、新しいスポーツスポンサーシップの始まりなのかもしれない。

今週はスタートトゥデイが「ゾゾ(ZOZO)」を72カ国・地域で展開すると発表しており、ユニクロはグローバルで新たなチャレンジに直面している。ゾゾの革新的な取り組みや、グローバル展開に伴う10万人へのアイテム無料配布キャンペーンなど、ファストファッションブランド間の競争がレベルアップすることは間違いないだろう。

こちらもお見逃しなく:
ADKが今週、クリエイティブエージェンシー「CHERRY」を設立。ベインキャピタルによる買収以降、初となる具体的な進展だ。プライベート・エクイティ・ファンド傘下に入ったADKの戦略は、依然として謎に包まれている。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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