Jessica Goodfellow
2021年8月27日

居住地域による給与削減、「不公平」かつ「意欲を損なう」とAPACで不評

在宅勤務や居住地域によって給与を削減する施策が、人材流出につながる可能性が浮き彫りになった。

居住地域による給与削減、「不公平」かつ「意欲を損なう」とAPACで不評

アジア太平洋地域(APAC)で働く広告業界の多くの人々が、在宅勤務を中心とした働き方を好むものの、それによる給与削減は望まないことが、Campaign Asia-Pacificの読者を対象とした臨時調査で明らかになった。

今月19日から実施したこの調査は、APAC地域で好まれる仕事環境や、リモートワークのために収入を犠牲にしてもよいと考えているかなどを明らかにするもので、広告、マーケティング、コミュニケーション、テクノロジー業界に従事する50名が参加した。

フェイスブック、グーグル、ツイッターなどのテック大手が、本社周辺から転居して在宅勤務を続けることを希望する社員の給与を削減する方針を打ち出し、波紋を呼んでいる。だが、このような方針はAPAC地域では不評であることが、調査によって分かった。調査項目の入力を完了した人のうち57%が「在宅勤務のために給与削減を受け入れる考えはない」と回答。「受け入れる」と回答した人は11%、「削減の程度に応じて検討する」は32%であった。

居住地域によって給与に差を設ける施策への抵抗感は大きい。郊外への転出によって給与が下がることを「受け入れられる」のは、わずか5%だった。「削減額によって検討する」は約4分の1、「断固として拒否する」は7割に上る。

ほとんどの回答者が、このような施策を「不公平」かつ「意欲を損なうもの」ととらえており、ある回答者は「大手テック企業の略奪的な行動」と表現した。給与はスキルや労力、価値によって決められるもので、社員の住む場所によって決まるものではないと、複数の回答者は指摘する。

また、社員が出社しないことで電気使用量が減り、オフィススペースを縮小することができるなど、間接費の削減につながるという指摘もあった。一方で、自宅で勤務する従業員の多くは、環境整備や通信費、光熱費の自己負担を強いられている。

「いずれの方法でも、従業員は仕事のために何らかの金銭的負担を負っている」とある回答者はコメントする。「在宅でフルタイムの勤務をすれば光熱費は増加するし、リモートワークのためにプリンターなどの機器を購入/アップグレードする必要がある。オフィスに出社するとなると、交通費や衣服、時間にもコストがかかる。全ての労働者がオフィス勤務の時と同様に、快適な在宅勤務をできるとみなすことは差別といえる。従業員に選択肢を提示せずに、全社的に控除するという方針を私は支持する」(ある回答者のコメント)

またある回答者は、居住地域によっては生活費の削減効果はそれほど期待できないことに言及する。「住む地域によって異なる。都内までの通勤時間は1時間かかるが、生活費の面でそれほどの差はない」

居住地域によって給与に差を生じさせることで「従業員と経営陣の間に、不要な対立を生み出すだろう」、あるいは「貧しい国に住む人々を低賃金で雇い、地域経済を不安定にするのではないか」という意見も。一方で、賛成する人々の中には、通勤のための費用を考慮に入れれば「理にかなっているだろう」という声もあった。

この施策が導入された場合に「会社を辞める」あるいは「辞めることを検討する」と答えたのは、全体の29%。組合を結成し、オープンな話し合いを会社側に求めるという人もいた。オフィス近くに移り住むという回答者は、ほんのわずかであった。

この調査が示唆するのは、場所にとらわれない給与体系とフレキシブルな勤務形態は、特に多様な人材を求める企業にとって、人材の採用やリテンション(維持・確保)の競争力になり得るということだ。

だが注意しなくてはならないのは、「パンデミック後も自宅でのフルタイム勤務を選択したい」と述べたのは、業界の約16%のみであること。51%が「主に在宅で勤務したい」、24%が「オフィス勤務と在宅勤務を半分ずつにしたい」、8%が「主にオフィスで勤務したい」と回答している。「オフィスでのフルタイム勤務」を選んだ人はいなかった。

他には、ある一定期間を国外で過ごしながら働きたいという回答者が9割に達し、ワーキングホリデーへの強い願望も明らかになった。18カ月間も移動を制限され続けてきたことの反動といえよう。

このような洞察は、回答者の49%が「勤務先は柔軟な労働形態の在り方を模索している」と答える中で、一考に値するだろう。働き方を選べる制度が「すでに整っている」は32%、「そのような方針は無い」は19%だった。勤務先が「働き方や居住地域によって給与を算出している(あるいはこれからその予定がある)」と答えたのは、回答者のわずか10%であった。

(文:ジェシカ・グッドフェロー、翻訳・編集:田崎亮子)

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