David Blecken
2019年6月17日

近藤麻理恵氏が広告界に語る:ミニマリズムと消費主義は共存可能か?

片づけブームの第一人者である近藤麻理恵氏がカンヌライオンズで登壇する。これに先駆けCampaignは取材を実施した。

近藤麻理恵氏(写真提供:KonMari)
近藤麻理恵氏(写真提供:KonMari)

片づけコンサルタントとして海外でも大ブレイク中の近藤麻理恵氏(通称こんまり)が本日カンヌライオンズで、彼女の「いかにモノを減らすか」という哲学を、日ごろモノを売る仕事をしているオーディエンスに向けて語る。夫でビジネスパートナーの川原卓巳氏も登壇予定だ。

このセッションに先駆けてCampaignは近藤氏に、ミニマリズムへの欲求が大企業にとって何を意味するのか、そして彼女自身がどのようにグローバルブランドになったのか尋ねた。

こんまりメソッドの大旋風から、コミュニケーション業界が学べることとは? 同セッションを企画支援した本田哲也氏(PRコンサルタント)は、「『こんまり』の世界的な成功は、来るべき『個の時代』をいち早く体言した」ものだと語る。

こんまりブームは、個人の「考えやノウハウ」をパッケージ化し、それを「プロダクト」として流通させPRした成功例だ、と本田氏。そして近藤氏がネットフリックスの番組内で実行しているように、企業ブランドもパーソナルな見せ方(魅力ある個人のように振る舞い、主張する)と、消費者の「パーソナルストーリー」を引き出すことが重要だという。

(コメントを一部編集・要約しています)

「近藤麻理恵」という名前は、ブランドとして驚異的な成功を収めました。事業を開始した当時から、ブランディングの観点を意識していましたか?

正直なところ、こんなに多くの方に知っていただくようになったことに驚いています。仕事としてスタートした当初は、ブランディングの観点では考えていませんでした。「こんまり」というのも、元々はニックネームです。その一方で、こんまりを好きになり、こんまりメソッドを信じていただいている方が多くいるのは、本当に嬉しいことです。

ブランディングの観点では、心穏やかでときめく考え方や哲学を大切にしています。これは、私が米国で初めて出した書籍の表紙にも表現されています。こんまりメソッドを通して、ときめく心穏やかな人生を生きてもらいたいという思いが、ブランドそのものにも影響を与えていると思います。

このブランドは私が作ったというよりも、読者やファンの方がつくり、大切にしてくださっているという感覚が強いです。

これまでの成功において、マーケティングとPRはどのような役割を果たしましたか? プロモーション活動を積極的に展開してきたというよりは、有機的に拡がっていったという点が興味深いです。

私たちはこれまで、コストをかけてのマーケティングはしていません。全てはファンや読者による、オーガニックな成長のみです。ブランドとしては、こんまりメソッドに基づいた役に立つ、そして感動のあるコンテンツを制作し、それをファンの方々がSNSなどのオウンドメディアに拡散していただいたことでフォロワーが増え、より多くの方々に知っていただくことができました。

また、ニューヨークを拠点とするPR会社と提携しており、これまでに膨大な量の報道を支えてくれました。

ロサンゼルスを活動拠点に選んだ理由は? また、ご自身の名前を国際的なブランドにするために着手したこととは?

こんまりメソッドを一人でも多くの人に知ってもらうことが、「Organize the World(世界を片付ける)」を達成するためには重要で、この価値や哲学をコンテンツにしていくことに長けた人たちでチームを作る必要があると考えました。ロサンゼルスにはそういった人が多くいるため、拠点として選びました。

日本人は言葉の壁などの問題があるため海外で成功するのは難しいと、日本の人々はよく言います。

それは、とても共感するところでもあります。母国語でない英語で、自分の考えていることを本当の意味で表現するのは難しいこと。しかし、言語が違ったとしても、幸せに生きたいという思いや、片づけに悩んでいることは変わりません。そのことをサポートしたいという思いは、確実に伝えることができていると思います。

言葉の壁が問題なのではなく、それを越えてでも伝えたいことがあるかが大事なのだと思っています。

そして、自分の言葉のエネルギーが本気であることを、通訳を介していても伝えることが大切です。そのためには、自分が本当に伝えたいメッセージやフィーリングが伝わる翻訳者や通訳との出会いが大切です。

あなたの経験では、米国の人々はナショナルブランドとしての日本をどのように認識していますか? そしてそれはあなたにとって、資産といえますか?

私の経験上、日本は神秘的で魅力的なブランドであると認識されていると思います。これは、こんまりメソッドがどのように認識されているかとも重なる部分がありますが、禅の考え方や、全てのモノにも魂があるという「八百万の神」など、日本人の価値観に対しての認識だと思っています。日本に行ったことのある人たちは、「良い国だった」「ぜひまた行きたい」と言ってくださる方も多く、非常に嬉しく思っています。

モノとの向き合い方、モノへの感謝の気持ち、片づけを通した内省と振り返りといった点が日本的だと思うのですが、米国の方々はそれを理解してくださっていると感じており、片づけのプロセスにおいても役立っています。

人々の断捨離やシンプルな暮らしへの欲求は、どのように進化してきていると感じますか? また、消費に与える影響は?

今日、多くの人は必要十分(あるいはそれ以上)のモノを手にすることができますが、都市化が進んでおり、住む場所は狭くなる一方です。その中で、モノを購入して所有物を増やすよりも、自分にとって本当に必要なものは何かに向き合い、「ときめく」モノだけを残したいという欲求が高まっていると感じます。

今後の展望をお聞かせください。

現在、2冊の新刊書籍を準備しています。一冊は『Kiki and Jax』という絵本で、今年11月に出版予定です。もう一冊は『Joy at Work』という、仕事における「ときめき」についての書籍で、こちらは来年の出版を予定しています。

さまざまなパートナーシップも模索中で、我々のビジョンに共感していただける方と、一緒に仕事をしていきたいと思います。

(文:デイビッド・ブレッケン 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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