David Blecken
2017年2月28日

「金曜早帰り」は定着するか

ワークライフバランスの向上と消費の拡大を同時に促そうと始められた「プレミアムフライデー」。コンセプト自体は悪くないのだが、社会全体に浸透するまでにはまだ長い時間がかかりそうだ。

「金曜早帰り」は定着するか

働く人々にもっと余暇を楽しんでもらおう – 政府主導の取り組み、プレミアムフライデーが先週からスタートを切った。月末の金曜日は午後3時で仕事を切り上げ、買い物や旅行といったレジャーに時間を費やしてもらおうというもの。

この試みが経済に一定の刺激を与えることは確実なようで、みずほ銀行や三井住友銀行などは年間約600億円(5億ドル)以上の消費の押し上げ効果があると試算。昨年10月に博報堂が行ったプレミアムフライデーの過ごし方に関するアンケートでは、回答者の21%がショッピング、18%が旅行にあてると答えた。最も多かった回答は「ストレス解消」で、38%だった。

多くの有名企業もこの動きに足並みをそろえる。ANA、JR東日本、ソフトバンク、アマゾンなどは社員や顧客に消費を促す様々なインセンティブを用意。ある調査では、プレミアムフライデーによって最も恩恵を受けるのは旅行・飲食業界という結果が出た。博報堂の調査でも、31.5%が旅行に興味があると回答。特に20代から40代までの女性と、20代と30代の男性の間でこの傾向は顕著だった。

プレミアムフライデーが前向きに捉えられていることを裏づけるデータもある。Airbnb(エアービーアンドビー)によると、今年の2月24日(金)から26日(日)にかけての国内旅行者は昨年同期の2倍だったそうだ。

認知度の不足

とは言うものの、プレミアムフライデーの効果が国内で広く浸透するにはまだ時間がかかりそうだ。その大きな要因は、「強制」でないこと。トヨタ自動車や森永製菓などはプレミアムフライデーに有給休暇の取得を奨励するが、調査によればこうした動きに同調する企業は5%未満という。

まだ多くの労働者はプレミアムフライデーを知らず、収入の目減りを心配する人々もおり、その理解度は限定的だ。博報堂の調査では63%がプレミアムフライデーのことをまったく知らなかった。ブルームバーグによれば、アサヒビールの調査でもプレミアムフライデーに賛同する人は全体の40%に満たなかったという。

BBDOのプランニング・ヘッドを務める谷津かおり氏は、「コンセプトの聞こえは良いのですが、現実的ではありません。政府は月末の金曜日の半日を祝日にするべきでしょう」と語る。

ドミノ・ピザもこの取り組みには懐疑的だが、それを逆手に取ったキャンペーンを始めた。名づけて「アンニュイマンデー」は、プレミアムフライデーが取れそうにない大多数の人々に向けた割引のデリバリーサービスだ。

ある業界観測筋は、「企業に義務化しなければ何も変わらないでしょう。どれだけの労働者が、午後3時に退社できるというのですか?」と苦言を呈する。

これは広告業界にとっても、自問せねばならぬ課題だろう。この1年余り電通を揺るがせた過労自殺問題を受け、業界内の変革を求める声は大きい。電通は過重労働を減らすべく新たな勤務体制の構築を公約し、同業他社もこれにならい早期の改革着手に迫られている。

例えば博報堂は、一定の日に社員の早期帰宅を推奨。またオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのスポークスマンは、「プレミアムフライデーはワークライフバランス改善のための大きな推進力。社内で積極的に後押しする」と語る(因みに今月19日、オグリヴィ・フィリピン支社の社員が死亡した。原因は過重労働ではないかとの憶測が飛び交い、同社は現在その対応に追われている)。

Campaignが昨年掲載した多くのインタビュー記事やディスカッションからも分かるように、広告代理店が企業文化を変えるだけでは、労働環境改善への「道のり半ば」に過ぎない。確実な成果を出すためには、クライアント側も過剰な要求や労働慣行を改め、協働していくことが必須なのだ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉) 

提供:
Campaign Japan

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