Ryoko Tasaki
2024年3月15日

世界マーケティング短信:日本の検索連動型広告が1兆円を突破

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:日本の検索連動型広告が1兆円を突破

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

動画広告が2桁成長を達成

電通が先日発表した「2023年 日本の総広告費」の調査結果のうち、インターネット広告媒体費の内訳が公開された。インターネット広告媒体費は3兆3,330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新し、総広告費全体の45.5%を占める。

広告種別にみていくと、インターネット広告媒体費の約4割を占める検索連動型広告は1兆729億円(同109.9%)で、推定開始以降で初の1兆円超えとなった。ディスプレイ広告は7,701億円(同104.5%)、動画広告は6,860億円(同115.9%)で最も高い成長率だった。

取引手法別にみると、入札方式で取引される「運用型広告」は2兆3,490億円(同110.9%)で、インターネット広告媒体費に占める構成比は9割に迫る。一方で、非入札方式(固定価格)で取引される「予約型広告」は2,648億円(同100.0%)と横ばい、ユーザーの特定のアクションに応じて報酬を支払う「成果報酬型広告」は732億円(同75.8%)と減少した。

ソーシャル広告は9,735億円(同113.3%)で、インターネット広告媒体費の36.2%を占める。その内訳は、SNS系(動画共有系を除く)が41.8%、動画共有系が34.6%、その他(ブログや電子掲示板など)が23.6%だった。

 

SNS上の広告が多すぎると6割が回答 フートスイート調べ

ソーシャルメディアを無料で利用できるのは広告のおかげであることを6割が理解しているが、ほぼ同数の回答者が、ソーシャルメディア上の広告は多過ぎると感じている。フートスイート(Hootsuite)が米国、カナダ、英国、豪州の18~65歳の6,000人以上を対象に実施した調査で明らかになった。

フォローを解除する理由として最も多かったのはクリックベイト(76%)で、退屈なコンテンツ(68%)、真正でないコンテンツ(68%)、繰り返しの多いコンテンツ(68%)がこれに続く。また、政治(46%)や宗教・スピリチュアル系(37%)、性自認・セクシャリティ(31%)といった領域への参入が好まれないことも明らかになった。

コンテンツとして望まれているのは、何か新しいことを学べるもの(56%)、笑わせてくれるもの(55%)、インスピレーションを与えてくれるもの(47%)。これらの話題は、家族や友人とシェアしたいコンテンツ内容としても挙げられていた。

 

ハヴァスが純収益4.4%増と好調 部門の分割は引き続き検討

ハヴァス(Havas)の純収益が26.95億ユーロ(前年比4.4%増)と、引き続き好調だ。収益成長率は9.5%とピュブリシス・グループ(Publicis Groupe)に次ぐ高さだったが、利益率は同業他社よりも低かった。

親会社のヴィヴェンディ(Vivendi)のCEOを務めるアルノー・ド・ピュイフォンテーヌ氏は「ハヴァスはターゲットを絞った買収戦略を展開し、テクノロジー分野、特にAIの領域で重要な提携を結びました」とコメント。2024年も最初の数カ月は、主要事業が引き続き好調だろうと述べた。ハヴァスは2023年に、アンコモン・クリエイティブ・スタジオ(Uncommon Creative Studio)やノイズ・デジタル(Noise Digital)などエージェンシーを10社買収している。

昨年末にヴィヴェンディが複数部門の分割を検討中であることが明らかになったが、ハヴァスの監査役会を率いるヤニック・ボロレ氏によると引き続き検討中であり、今後12~18カ月以内に正式に決定する予定とのことだ。

 

広告掲出、禁止の理由を一部修正 英規制当局

カルバン・クライン(Calvin Klein)が昨年4月に公開したFKAツイッグス(シンガーソングライター)の広告を、「古典的な性的対象として表現している」「ターゲットを絞っていない媒体で公開している」と問題視して1月に禁止した英広告基準局(ASA)だったが、禁止決定後にFKAツイッグス本人や広く一般からも反発の声が上がったことを受け、禁止の理由を最近一部修正した。

ASAのCEOを務めるガイ・パーカー氏はCampaignに対し、「1月に下した『古典的な性的対象として表現している』という私たちの決定は間違っていました。そのように描かれていると、私たちは考えていません。彼女は自信にあふれ、しっかりと主導権を握っている象徴として描かれています」と語る。

なお、禁止理由については一部改められたものの、肌が大きく露出した広告を、ターゲットを絞っていない媒体で公開するという点については不適切であるとして、掲出は依然として禁止のままだ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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【お知らせ】

アジア地域最大級の広告賞「スパイクスアジア」の結果が14日夜、シンガポールで発表されました。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

また、若手を対象とした「ヤングスパイクス」の結果も発表され、日本からは博報堂の中島優人氏と高須雪絵氏がPR部門でブロンズを授賞しました。詳しくはこちら(英語)から。

 

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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