Masaki Miyazawa
2017年12月14日

2018年問題に立ち向かうコンビニ業界

コンビニ業界に迫り来る危機。しかしそこには明るい面もあると、ビーコンコミュニケーションズのショッパー・マーケティング・ストラテジストはみている。

2018年問題に立ち向かうコンビニ業界

ここ最近、小売業に関係する記事や話題が多いように思う。アマゾンゴー、アマゾンエコー、スマートレジ、AI接客――。これらはテクノロジーによるイノベーションを追い風にしたサービスではあるが、日本に限定すれば、共働き世帯や単身世帯の増加などの社会構造の変化、同時に少子・高齢化による小売業側の人材難を解消する文脈で語ることができる。

「2018年問題」という言葉を聞いたことがあるだろうか。大学や受験産業を中心に叫ばれている言葉で、減少しつつもここ数年は横ばいを続けていた18歳以下人口が、2018年から一気に減少期に入ることを指している。コンビニ業界も、無関係ではないだろう。学生のアルバイト先という印象のあるこの業界の、成長の裏には高校生や大学生の就業ニーズがあったと言っても過言ではない。

もちろん、業界として人材不足に手をこまねいているわけではなく、これからの時代に向けて、すでに「店舗の省人化」が各社の大きな政策方針になってきている。2017年4月、経済産業省と大手コンビニ5社は、2025年までに全商品へRFIDタグをつけることで合意した。これはレジ時間の短縮の取り組みとして語られることが多いが、実際にはそれ以上にコンビニ側のメリットもあり、検品や棚卸しなどの作業時間の軽減、万引き防止、商品の廃棄ロスの低減など、期待される効果は大きい。まさに「次世代型コンビニ」を目指そうと業界として大きく舵を切ったのである。

そこで思い出すのが、2016年12月に画期的な店舗として米国でローンチされたアマゾンゴーだ。ローンチムービーに驚いた記憶がある人も多いだろう。ただし、現時点では社員限定の利用となっており、近いうちの展開は予想されるものの、まだ一般客の入店はできない。家族連れなど複数人で来店した場合の請求者が誰になるかなど、若干の課題は残っているようにも思える。またアマゾンゴーはRFIDタグ方式ではなく、あくまでもセンサーとカメラを中心に消費者をトラッキングする形だ。そのため、混み合った時間帯などはシステムが客ごとの動作を捉えにくく、こと日本のような狭小店や通勤・昼食時に混雑する店舗、物流を含めた店舗オペレーションという部分まで含めると、現状はRFIDタグ方式に分があるようにも思える。

RFIDタグの利点は、他にもある。例えば、商品棚にリーダーを設置しておけば、在庫数はリアルタイムに認識でき、商品補充や発注の自動化も可能になる。

そしてエージェンシーとして分かりやすいのが、販促利用だろう。電子ペーパーのコストが将来的に下がり、省電力化が進めば、それを商品棚のレールに設置して、陳列されている商品の価格や販促メッセージの自動表示が可能になる。従来のように大量のPOPを印刷して店舗に発送し、その取り付け作業に店員が従事する必要がなくなる。そしてこれまで難しかった、時間ごと・日ごと・地域ごとなど、異なる訴求内容を表示することも可能になる。

そして、それらと関連して重視され始めるのが、消費者の店内行動の分析だ。これまでのPOSシステムは購買履歴を基にしており、店内の行動は把握できていなかったが、これからはカメラと組み合わせることで、滞留時間や移動距離、複数商品の購入順序などが分かり、店内レイアウト、広告販促の訴求内容、製品開発などに大きな影響を及ぼすであろう。

つまり、これまで以上に消費者の動向が鮮明に把握でき、購入の意思決定の直前に何が起きているのかを分析することで、マーケティング自体の可能性も格段に大きくなる。これからは消費者行動の解明と対応がその中心になるといっても過言ではないだろう。

これには多くの企業が関心を持つだろうが、期待したいのは外資系メーカーの知見だ。2000年代からショッパー・マーケティングという概念が注目され、米国を中心に非常に多くの事例や調査の実績を持つ彼らの経験と、そして日本という独特な市場での消費行動との掛け合わせは、化学変化のきっかけになり得る。

当社は2018年にクライアントと協業して、RFIDと店内カメラを使ったリアル店舗テストを計画している。それは、これから日本が直面する小売環境の変化へ我々も対応していくこと同時に、購買行動を基点としたデータをクリエイティブやプランニングに活用することが目的だ。日々高度化しているマーケティング課題への解決に向けて、新しいアプローチを創り出し、決意をもって取り組んでいきたいと考えている。

世界中どこの国も経験したことのない少子高齢化を突き進む日本において、日常的で誰もが利用するインフラである小売店舗の省人・効率化は喫緊の課題だ。マーケティングに従事する関係者であれば、これからコンビニを中心に動き始める日本のショッパー・マーケティングに注目せざるを得ないであろう。

(RFIDタグ…電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム。バーコードでの運用では、レーザなどでタグを1枚1枚スキャンするのに対し、RFIDの運用では、電波で複数のタグを一気にスキャンすることができる。電波が届く範囲であれば、タグが遠くにあっても読み取りが可能)

ビーコン コミュニケーションズ株式会社
ショッパー ストラテジスト
宮澤正貴


(編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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