David Blecken
2017年11月21日

KFCは、なぜクリスマスを席巻したのか

「ばかばかしさ」を加味した周到なブランディング。メニューをさして変えずとも成功を収める、KFCの戦略を見つめる。

KFCは、なぜクリスマスを席巻したのか

カーネル・サンダースとケンタッキーフライドチキン(KFC)のことをあなたがどう思っていようが、少なくとも「退屈なブランド」とは言えないだろう。サンダースそっくりのハロウィン用のコスチュームを売り出して評判を呼んだかと思うと(「薄気味悪い」「分かりやすい」といった謳い文句で、1日のうちに完売した)、今度はクリスマスツリーにフライドチキンを吊るそうと呼びかける。

KFCが日本のクリスマスに欠かせぬものとなってから久しいが、同社はこのデコレーションで似たような「風習」をニュージーランドに植え付けようと目論む。更に、よりハードコアなファン向けにはKFCの「インターネット・エスケープ・ポッド(internet escape pod)」を売り出した。1万米ドルという値が付けられたこのテント、サンダースをデザインにあしらい、中では電波を遮断、家族全員がインターネットに邪魔されずチキンを楽しめるという仕掛けだ。

若者文化を取り上げるサイト「Hypebeast(ハイプビースト).com」で、ある観測筋が「KFCはなぜ奇想天外な宣伝をするのか」と述べていたが、まさしく素朴で的を射た疑問だろう。サンダースのチキンは決して変わらないが、KFCの「奇行」はブランドパーソナリティーという点でマクドナルドやバーガーキングといったライバル企業に大きく水をあける。

KFCの位置づけは、ハイプビーストの常連であるカルト的ファッションブランド「シュプリーム」にやや近いかもしれない。同ブランドは奇抜なアクセサリーに加え、ボクシンググローブや紙幣を発射するガンといった珍妙なグッズも幅広く販売する。つまり「次は何をやらかすのだろう?」と期待を抱かせる点で、KFCも同じなのだ。最近ではチキンの香りがする入浴剤を日本で、食べられるマニキュアを香港で、チキンの香りの日焼け止めを米国で、そして中国ではファーウェイ社の特製スマートフォンを発売した。
 



詰まるところKFCは、1年を通じて適度なレベルの「ばかばかしさ」を加味した周到なブランディングを行うことで、クリスマスシーズンの“必需品”としての地位を確保した。ドミノ・ピザと同じように、そのプロモーションがいつもうまくいくわけではないが、失敗を恐れず、失敗しても素早く立ち直っては前に進む。サンダースがややばかげたキャラクターであることを十分認識し、それで「遊ぶ」ことがコンセプトのカギだ。マクドナルドは自社のマスコットで決してこうしたことはやらなかった。

直接的なプロモーションをせずとも、どこかでKFCが風変わりなことをやればその中核商品には世界的な注目が集まる。消費者とのつながりを絶たぬためには、ユーモアのセンスと想像力を忘れず、真面目になり過ぎないことを心がけるべし、という良い見本だろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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