Lecia Bushak
2023年3月10日

TikTok「使用時間制限」、その効果は

TikTok(ティックトック)は18歳未満の全ユーザーを対象に、1日の使用時間を1時間に制限すると発表した。それ以上の使用を続ける場合はパスコードの入力が必要となる。

TikTok「使用時間制限」、その効果は

この措置は、ティックトックなどのソーシャルメディアが若年層のメンタルヘルスに有害な影響を及ぼしているという批判の高まりをうけたもの。ソーシャルメディア中毒の防止と、有意義な時間の過ごし方を再考させるのが狙いだ。


18歳未満のユーザーが1日に1時間以上使用する場合は、パスコードの入力が必要となる。ただしユーザーが13歳未満の場合、親ないし保護者がパスワードを入力する必要があり、それによって30分の使用延長が認められる。

ティックトックの信用・安全部門責任者コーマック・キーナン氏は、「1日の適切な視聴時間がどれくらいなのか、またその影響はどうなのかという一般的認識はまだない」とした上で、今回の決定は「ボストン小児病院のデジタルウェルネスラボの専門家と協議を重ねた結果」と述べた。

@nicknyitray

 

コロナ禍で、世界の人々の不安感は増幅した。そんな中、若年層のメンタルヘルスの問題を早々に指摘した専門家の1人が米政府高官だった。前公衆衛生局長で外科医のヴィヴェック・マーシー氏は2021年末、「若年層のメンタルヘルスに関する勧告書」を発表した。

米疾病予防管理センター(CDC)の最近の調査結果によると、この問題は今も続く。全米の10代の少女の半数以上が「ずっと悲しみや絶望感を抱いている」と答え、この10年で最も高い数値を記録した。

こうした精神状態は心的外傷(トラウマ)や暴力的行為、性的暴行を引き起こす恐れがある。10代の若者のソーシャルメディア利用率が高いことが、相関関係を探る議論のきっかけとなった。

フェイスブックやインスタグラムが登場してから、専門家たちはソーシャルメディアがメンタルヘルスに及ぼす悪影響について調査を重ねてきた。昨年のある調査では、ソーシャルメディアが大学生たちの不安感を増幅させているという結果が出た。

だが、普及から日が浅いティックトックに特化した調査はまだ少ない。一昨年、オンライン学術誌『フロンティアズ・イン・パブリックヘルス』が「ティックトックユーザーの心理学」と題する論文を発表したが、これは稀な例。ティックトックが長期的・短期的にメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか、その研究はまだ途上にある。

フロンティアズに結果を発表した専門家たちは、「今こそティックトックの調査に注力すべき」と同誌に記す。「ティックトックを頻繁に使うユーザー、あるいはそうでないユーザーの精神的健康状態はどうなのか解明していく必要がある」

ティックトックの有害性をすでに認識している人々にとっては、今回の措置は効果的だろう。ティックトックの人気ブロガー、サラ・マグサラ(下・動画)は自身の動画の中でこう述べる。「寝る前にFYP(おすすめページ)をスクロールしていると、悲しい気分になってしまう」

「そうなると、毎晩ティックトックで悲しい動画を探してしまうんです。自分にとって決していいことではない。だから全ての私のソーシャルメディアアカウントで、使用時間を制限しました」

@sarahmagusara

 

一方、時間制限はほとんど無意味という声もある。「終了時間を15分間延長する」「今日は時間制限を解除」といった項目をクリックするのはいとも簡単、というのだ。結局、弊害を減らすのに最も肝心なのはユーザーの自制心だろう。

(文:レシア・ブラシャク 翻訳・編集:水野龍哉)

 

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