Tatsuya Mizuno
2019年12月24日

ALS患者が光を灯す、クリスマスイブ

いまだ治療法が見つからないALS(筋萎縮性側索硬化症)。この難病と闘うあるプランニングディレクターに心温まるクリスマスを届けようと、最新のテクノロジーを活用した取り組みが行われた。

マッキャンエリクソンのプランニングディレクター、藤田正裕氏については3年前に本誌でご紹介した

ALSに対する認知を広めようと、自身が写生のモデルとなったイベント。一切動くことができない身体を公にさらす勇気ある決断は、衝撃に近いインパクトを多くの人々に与えた。以降、毎年6月21日の世界ALSデーに合わせて開催されている。

現在、ALS患者は世界に40万人、日本に約9,200人。藤田氏は2010年に発病し、その翌々年に一般社団法人「END ALS」を設立、この病気に関する世間の啓発に努めてきた。

2013年に気管切開で声を奪われてからは、視線入力装置を通して目とその瞬きで他者とのコミュニケーションを取る。だがALS患者の約1割は視力をも失うとされ、今はその恐怖と闘う日々を過ごす。

折しも、クリスマスを迎えて街が華やぐ季節。同氏にも皆と同じように、多くの友人たちと賑やかで楽しいクリスマスを過ごしてほしい −− そんな思いから発案されたのが今回の取り組みだ。自宅に飾り付けられたイルミネーションは同氏の脳波によって作動。装飾を担ったのは日本映画美術界の第一人者である種田陽平氏、演出は映像作家の柿本ケンサク氏。いずれもボランティアとしての参加だ。

このテクノロジーを考案したのはマッキャングループのプロダクト・イノベーション・スタジオ「LAB13」。ニューロスカイ社が開発したEEGバイオセンサーを活用した。脳波を少しでも意識的に操作できるようにと、同氏にとってのトレーニングの意味合いも兼ねている。

Campaignの視点:

深刻な題材を、一般の人々にとっていかにアプローチしやすいものにするか −− この取り組みが背負う命題も、重い。言うまでもないが、啓発に肝要なのは「継続」であり、関わるスタッフの善意と熱意は広く賞賛されてしかるべきものだ。若い世代にもALSに対する認知を広げるべく、クリスマスという誰にとっても身近なイベントと結びつけた点は出色だろう。

END ALSのウェブサイトにもあるように、海外では未承認の治療薬で回復を遂げたALS患者がおり、日本でも今年3月、京都大学iPS細胞研究所のチームによって既存薬を使った第1相の治験(3段階で行われる治験の第1段階)が開始された。今後は是非、こうした医学的情報の普及にも努めてもらいたい。大きな希望を世間に示すことは、さらなる啓発につながると確信する。

(文:水野龍哉)

 

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

21 時間前

新型コロナ 各国で政府に不信感

マッキャン・ワールドグループが実施した世界的規模の調査から、7割の人々が自国政府の対応に不満を抱いていることが分かった。

22 時間前

エージェンシー・レポートカード2019:博報堂

昨年は海外企業の買収など幅広く事業を展開、クリエイティブ面でも健闘した博報堂。こうした実績は、果たして自社評価に見合うものなのか。

22 時間前

エージェンシー・レポートカード2019:電通

組織改革中の電通にとって2019年は、日本国内では比較的安定感があるものの、海外事業においては困難な一年であった。目下の課題は、インクルーシブな「One Dentsu」の文化を創造していくことだ。

22 時間前

エージェンシー・レポートカード2019:Dentsu X

リーダーシップ層が幾度も変わった、dentsu X。力強い創造性を武器に、顧客からの価格への圧力と、2018年の収益減少という2つの課題に挑む。