Simon Gwynn
2020年8月21日

アカウントマネージャーは代理店から締め出されるのか

「アカウントマネジメント部隊が何をしているのかを、きちんと説明してくれた人は、これまで誰もいませんでした」。ある調達部門の責任者は、このように語る。

アカウントマネージャーは代理店から締め出されるのか

IPA(英国の広告業者団体)の新しいレポートによると、アカウントマネジメント(営業企画)は職務を早急に見直さなければエージェンシーから締め出される可能性があるという。

2年前、プロクター&ギャンブルのマーク・プリチャードCMOは「エージェンシーの人間の4分の3はクリエイターが占めるべき」とCampaignに語り、注目を集めた。アカウントマネージャーという職種の曖昧さを指摘し、「クリエイティブに関係のない費用はすべて除くように」と求めたのだ。

IPAのレポート「The Future of Account Management」でホール&パートナーズ(戦略ブランドコンサルティング会社)は、アカウントマネジメントが直面する課題について、広告主ならびにエージェンシーの責任者30名以上にインタビューを実施。この職種を脅かす兆候がいくつも明らかになった。

l  エージェンシーは優秀な人材の獲得において、テクノロジー企業や経営コンサルティング企業と激しい競争を繰り広げている

l  クライアントは、エージェンシーがより少ない費用でより多くの仕事をすることを、ますます期待するようになっている

l  アカウントマネジメントの職務は必ずしも明確に定義されていないため、その価値が理解されにくい

l  エージェンシー間で協働し、円滑に進めていく能力を高める必要がある

この動きを、COVID-19やブラック・ライブズ・マター運動の盛り上がりが加速させたとも同レポートは指摘する。つまり、広告業界がこのようなテーマに取り組むプロセスは「マラソン」でなく「短距離走」のようなものになることを意味するのだ。

「COVID-19以前でさえ、アカウントマネージャーはクライアントの課題よりも日々の業務やエージェンシーの成長に集中しすぎていると、クライアントは感じていました」。レポートにはこう記されている。

「エージェンシーの上級職の人たちから聞くところによると、2008年の金融危機をきっかけにアカウントマネージャーの職務は広く浅いものとなり、焦点がずれ、方向性を見失ってしまった。そして、それ以降も元に戻らなかったようです」

さらに、多くのクライアントはアカウントマネジメントという仕事のことを、あまりに多くの担当者間で責任の所在が重複していて複雑すぎるととらえている。「奥深い知識を駆使するアカウントを数少なく管理するというよりも、いくつものアカウントを広く浅く管理する構造になっている」というのだ。

この調査には、ある調達部門責任者の言葉が引用されている。「正直なところ、アカウントマネジメント部隊が何をしているのかを、きちんと説明してくれた人は、これまで誰もいませんでした」

そして、キャリアステージの後半に差し掛かる社員についてはアカウントマネジメントとプロジェクトマネジメントを明確に区別する「Y字型」のキャリアを、エージェンシーは考慮する必要があると示唆する。「この2つの職務の区別は、アカウントディレクター以上のレベルになるとより明確になります。ビジネスコンサルタントとしての役割に移行することが必須となるためです」

この調査はまた、多くのエージェンシーにおいてアカウントマネージャーの多様性が、民族的背景や社会的背景の観点で欠如していることも指摘する。

あるクライアント企業の責任は、このように語る。「当社を担当するアカウントマネージャーのほとんどは、20代前半のアッパーミドルクラスで、ショーディッチ地区(東ロンドンのおしゃれな一角)に拠点を構えるエージェンシーに勤めている白人です。彼らには、私の顧客を理解できません」

レポートは、アカウントマネジメント業の未来を保障するために、業界がすぐにとるべき3つのアクションを掲げる。アカウントマネジメントという職務の価値をたたえること、未来のために優秀な人材を採用すること、そして今いる人材に向けて投資し能力開発することだ。

「過去数年間、特にここ数カ月の間に、エージェンシーの未来についての議論が数多く交わされてきました。テクノロジーによるディスラプション、新しい競合相手、そして直近ではコロナウイルスによって、我々は機会と課題に直面しています」。このように語るのは、IPAのクライアント・リレーションシップ・グループの共同議長で、クリエイティブエージェンシー「セントルークス・ロンドン(St Luke’s London)」のマネージングディレクターを務めるエド・パーマー氏だ。

「しかしIPAのクライアント・リレーションシップ・グループは今まで、その議論の中にアカウントへの対応という職務については含まれないと感じていました。この調査で得られた知見によって、アカウントマネジメントという職務がクライアントとエージェンシーにより一層の成果をもたらすことを、明らかにできればと願っています」

(文:サイモン・グウィン、翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign UK

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