Ryohei Takagi
2017年6月14日

アプリマーケティングは、「プロダクトづくり」から

広告や宣伝だけがマーケティングの主要素ではない – スマホアプリのプロである電通デジタルのシニアストラテジストが、同市場におけるマーケティングのあり方を提言する。

高木僚平氏
高木僚平氏

スマホアプリ関連のプロジェクトで「マーケティング」と言うと、どうしても広告や宣伝の意味合いが先行しているように思えてならない。米国マーケティング協会では、マーケティングを次のように定義している。"Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large(マーケティングとは消費者や顧客、パートナー、そして社会全般にとって価値のある製品をつくり、広め、供給し、流通させる活動、及び一連の慣行とプロセスである)." つまりマーケティングとは、「creating=プロダクトをつくる」から始まっているのだ。

アプリマーケティングの構成要素

当たり前のことだが、「プロダクトの品質」、及びそれを「広める仕掛け」の両者が成立しなければモノは売れない。そして経験則上、アプリ市場のマーケティングでは前者の「プロダクト品質」の占める割合が非常に高いと考える。

プロダクト品質の構成要素には、「事業コンセプト」「UI/UXデザイン」「サーバーレスポンス」などが挙げられる。昨今のトレンドはデザインがよりシンプルで、使用する色も最低限だ。また、低評価のレビューには「ごちゃごちゃしていて分かりづらい」「すぐ落ちる」といった品質に関する欠陥を指摘するものが目立つ。こうしたユーザーの声やデータによる分析を駆使して、アプリ自体のPDCAを回していく仕組みをつくることもアプリマーケティングである。

ゲームアプリにおけるUXデザインは特に複雑で、ガチャの排出確率を1%見誤るだけでユーザーの継続率や売上に2倍も3倍も影響を及ぼしてしまう。成長に必要な経験値や敵のHPなどのゲームバランス含め、過去にはよく「レベルデザイン」と言われていたが、自分の部下にあらゆるゲームをレベル100までプレイさせ、実感値として理解させるような「風土」を部署内につくることもアプリマーケティングの一貫だ。

業界の課題

アプリマーケティング予算を策定する際、「広告費」としてしか落とし込まないケースがよくある。これは冒頭の記述を端的に示す例だ。アプリマーケティングの本来のゴールは決してDL数ではなく、その先にあるアクティブユーザー数や売上のはず。そう考えれば、アプリ自体の改善や良いモノづくりを行うための人材開発の予算もマーケティング予算に組み込むべきなのだ。更にP/L(損益計算書)まで視野を拡げて逆算すれば、その方が「広告のみ」の場合よりも費用対効果が上がることに気づくだろう。

エージェンシーがコンサルティングの領域まで、あるいはコンサルティング企業がエグゼキューションの領域まで進出し始めているのは、そういう流れの中での「必然」なのだ。アプリ事業主のCMOもこうした舵取りを一気通貫して行い、事業全体の収益責任を負うような構造こそが、アプリマーケティングのあるべき姿だろう。

複雑化しているアプリマーケティングの領域を正しく洗い出し、その上で最適な組織構造や企業間の役割分担を再編すべきタイミングに、今は来ているのではないか。CMOの方々も、単にChief 「Promotion 」Officerにとどまっているのではなかろうか。もしそうであったなら、課題を共に解決できるパートナー企業やプレイヤーが今後ますます増えていってほしいと思う。そして私自身も、その一翼を担っていくことがこの業界をリードしていく上で全うすべき役割と考えている。

文:高木 僚平(電通デジタル シニアストラテジスト) 

提供:
Campaign Japan

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