David Blecken
2017年7月13日

クラウドソーシングは、オープンイノベーションの時代へ

クラウドソーシングで動画コンテンツを公募する時代は終わったようだ。企業は第三者の知恵を活用し、組織やビジネス上の課題を解決するようになりつつあると、「eYeka(アイカ)」の担当者は語る。

クラウドソーシングは、オープンイノベーションの時代へ

クラウドソーシングによって、ブランドとコンテンツを共同制作する −− そんなビジネスモデルを生み出したのが、パリを拠点とするeYekaだ。同社によれば今、日本ではオープンイノベーションへの需要が急速に伸びつつあり、コンテンツ制作や他の需要を凌ぐ勢いという。

先ごろ来日した、同社アジア地域マネージングディレクターで在シンガポールのアンバ・クチアラ氏によれば、「動画コンテンツを重視する傾向はこの2年間で覆りました」。eYekaが扱う日本のクライアントのプロジェクトの70%までは、ビジネス関連のソリューションだという。

「オープンイノベーション」は目下、日本における流行語だ。多くの一流企業が新陳代謝をより活発にしようと、外部の「知性」を引き込む努力をしている。が、この言葉がファッショナブルであるにもかかわらず、オープンイノベーションの本当の意味を「きちんと理解している企業はほとんどない」とクチアラ氏。「多くのクライアントは、まだこの言葉を学び始めたばかりです」。コラボレーティブ・エコノミー(共同所有や相互賃借、モノやサービスの相互提供によって成立する経済モデル)の到来によって、日本企業はやっとトップダウン式の構造から脱皮しようとしている、とも指摘する。

企業側からの需要は、製品改良のアイデアや新たなサービス、リサーチの手法、消費者との関わり方まで多岐に及ぶ。eYekaが関わるようなプロジェクトは、小売業や経済活動、通信、そしてまったく新たな製品 −− 例えば鎮痛剤のような −− などの未来像を描くことだ。

クチアラ氏は、eYekaはより戦略的アプローチを取り、「P&Gやユニリーバといった世界的クライアントと協働した頃の革新性を、もう一度身につける必要がある」と言う。クラウドソーシングで制作した動画コンテンツは、今では商品化されると大体は安物扱いされてしまう。社内に新しい発想を吹き込むことの方が、潜在的な価値の高さにつながるのだ。

「オープンイノベーションはテクノロジー同様、考え方の変革が非常に大切です」と話すのは、かつて味の素などに在籍し、今はeYekaをクライアントに持つブランドコンサルタントの水野与志朗氏。「日本の企業は、イノベーションすなわち技術革新、と思い込みがち。でも、ニンテンドーWiiを見てください。ライバル社がより優れたハードウェアの開発に熱中していた時代、その流れに反して『ローテク志向』で成功したのです。こうした発想の転換こそが、イノベーションです」。ニンテンドーは新たな方向性を見出すためにeYekaを使わなかったが、オープンイノベーションは「企業が内向きであれば決して見つけることのできない、新たな視点を発掘できるはず」。

さらに水野氏が指摘するのは、言葉の壁によって日本企業が世界的な潮流から取り残されてしまいがちなこと。これが、日本人が恐れる悪名高い“ガラパゴス化”を助長することは言うまでもない。クラウドソーシングでグローバルかつ革新的な考え方を集めることは、こうした問題の改善にも役立つという。

「ビデオ動画には今でも(クラウドソーシングで)役割があります」とクチアラ氏。「でもその時代は、もう“最終コーナー”を回ったところ」。次の変革への前段階では、より大局的な思考が必要になる。クラウドソーシングによるイノベーションが企業のビジネスにどのような良い結果をもたらしたか、同氏は具体例を挙げなかったが、「その工程表を描くなら、結果が出るまでに1〜2年はかかるでしょう。最終製品にとっては迅速なプロセスではありません。大企業であるならば、目に見えて変化が起こるには少なくとも3年はかかる。私が今言えることは、クライアントに新たな視点を与え、他の企業とは異なるやり方をするのに役立つ、ということですね」。

(文:デイビッド・ブレッケン   翻訳・編集:水野龍哉)

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