Omar Oakes
2017年2月15日

テロ資金と化す、オンライン広告費

イスラム過激派や白人至上主義者、ポルノ関連のウェブサイトにグローバルブランドの広告が掲載され、それらの組織の資金源になってしまう − 業界にとっては極めて深刻な、喫緊の問題だ。

テロ資金と化す、オンライン広告費

英国「タイムズ」紙は、過激派組織がオンライン広告で何万ポンドもの資金を得ている、と報じた。ユーチューブ動画に表示される広告では、動画が1,000回再生されるたびに7.6ドルの広告収入が派生するという。

同紙は、過激派組織のウェブサイトに広告が表示できないよう作成されたブラックリストは「機能していない」と指摘。新型メルセデス・ベンツAクラスの広告が、「イスラム国(IS)」を支持する内容のユーチューブ動画(再生回数は11万5,000回以上)とともに表示されていたという。また高級ホテル「サンダルズ・リゾート」の広告も、ソマリアを拠点とするイスラム武装勢力「アルシャバブ」の動画ページに出ていたと言及。

折しもこの記事が出たのは、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のグローバルマーケティング・アンド・ブランドビルディング担当役員マーク・プリチャード氏が、「マーケティング業界は一丸となってメディアの透明性の確保に取り組むべき」と訴えた直後だった。

1月末、米国のインターネット広告業界団体「インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IBA)」がフロリダで主催したカンファレンスで講演したプリチャード氏は、「今日のメディア・サプライチェーンはよく言っても不透明、悪く言えば詐欺的構造になっている」と指摘した。

「我々はこの現状を正さなければなりません。成長を目指し、時間と資金をより良い広告の実現のために活用すべきです。マーケター、広告代理店、パブリッシャー、アドテック・プラットフォーム、サプライヤー……全ての業界関係者は非難の応酬をやめ、今こそ一丸となって問題解決に取り組まなければならないのです」

タイムズ紙によれば、多くの企業が不適切なウェブサイトに自社の広告が表示されていることを把握しておらず、事態を「深く憂慮」し、配信したプログラマティック広告を非難しているという。

グーグルの広報担当者はこのように述べる。「不適切と報告された動画で、ユーチューブのコミュニティガイドラインに違反していると判断したものは削除しています。暴力や憎悪、差別を助長するようなコンテンツには厳格に対処しています」。

「ユーチューブのコンテンツには、物議を醸したり不快感を与えたりするようなものが含まれている可能性がある。ですから、広告掲載に関するガイドラインに沿ったものだけを表示できるようにしています」

「広告主が不適切と考えるコンテンツには広告を表示しない設定も可能です。広告主が必要な情報を得た上で判断できるよう、我々は業界と協力していく責任を担っています」

(文:オマー・オークス 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign UK

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