Matthew Keegan
2019年2月06日

ファーストパーティ・セカンドパーティデータを活用すべし

アジアでもデータプライバシー法が変わりつつある。個人情報を保護し、信用と優位性を獲得するためにブランドはどう対処すればいいのか。ファーストパーティ及びセカンドパーティデータの活用法を考える。

 (写真:Shutterstock)
 (写真:Shutterstock)

データに関する動きで、2018年は重要な年だった。EUではGDPR(一般データ保護規則)が施行され、ケンブリッジ・アナリティカ社の醜聞もまだ記憶に新しい。データをどのように収集し、活用すればいいのか −− 世界の関心、そして法制度が変わりつつある。

国際法律事務所ホーガン・ロヴェルズの香港支社パートナー、マーク・パーソン氏は「プライバシー法がアジア太平洋地域でも変わりつつある」という。

「データ保護法がより厳格化し、その適用例を数多く見るようになりました。今ブランドにとって急務なのは、サードパーティデータのソースの精査、サードパーティとの契約内容の確認、オプトアウトリクエストに対応できるシステムの適正化。規制が厳しくなれば、当局はリターゲティングなど個人を特定する技術をより入念に監視するようになります」。

こうした変化で、ブランドはサードパーティデータよりも信頼性と透明性が高いファーストパーティ・セカンドパーティデータを重視し始めているようだ。既にネスレのような主要ブランドはファーストパーティデータを優先し、フェイスブックも昨年、ターゲティング広告へのサードパーティデータの活用をやめた。

「サードパーティデータはリーチやスケールという点では有意義。しかし本質的に不透明で、GDPRのような規制の核心部分と根本的に相容れません」。こう話すのはメゾラボ(Mezzo Labs)香港支社のマネージングディレクター、パトリック・ミルバーン氏。「アジア市場でデジタル技術が成熟し、“オムニチャネル”が実現すれば、ブランドは顧客に向けた独自のエクスペリエンスの創出を図る。差別化のため、ファーストパーティ・セカンドパーティデータの収集と活用に注力するでしょう」。

「ファーストパーティデータを活用するのはブランドにとって良い傾向」と話すのはブルーシフト(Blueshift)社の共同設立者でありCEOであるビジェイ・チットール氏。「信用の確立と個人情報の保護だけでなく、競争の中で優位性も保てる。サードパーティデータは誰でも等しく入手できますが、ファーストパーティデータは将来的に有効活用できる独占的な資産。より信頼性が置け、タイムリーです」。

「ブランドは自社のシステムやチャネルにファーストパーティデータを既に取り入れていますが、データプライバシー法の改正は更にその活用を促す。顧客と信頼に基づいたパーソナライズな関係を築く素晴らしいチャンスになります」

「ファーストパーティデータは顧客の行動や興味、意思を把握できる。現代の“コネクテッドワールド”で、顧客行動をマーケティング活動にタイムリーに反映させることはマーケターにとって欠かせません」。

では、ブランドはどうしたらファーストパーティやセカンドパーティからより多くのデータを得られるのだろうか。そして、そのコストは。

「サードパーティデータはさまざまなバイヤーの求めに応じ、オーディエンスや目的別に加工されてパッケージングされたもの」とチットール氏。ファーストパーティデータはそれとは異なり、「マーケターにとっての価値を高めるには統合や分析、アクティベーションが必要です」。「ファーストパーティデータを有効活用するには、システムに投資することが重要。顧客データプラットフォームのように、マーケターがデータアクセスを管理できるようにしなければならない。そうすることで、データの一元化やアクセシビリティ、分析やリアルタイムのセグメンテーションに役立ちます」。

カドレオン(Cadreon)社のアジア太平洋地域代表を務めるイェン・チェオン氏は、「ブランドはまず初めにデータ戦略を考えるべきです。顧客との適切で有意義な関係のあり方を探ることが重要」と話す。一方で顧客は、「情報のシェアで見返りに有意義なものを得られると理解する必要がある」。こうした関係の下支えになるのが、「ブランドが顧客の安全性とプライバシーを保証し、データの使用許諾範囲を守り、その活用でどういう結果になるのか明確にすること」。

こうした「価値交換」の考え方は近年あるにはあったが、ミルバーン氏は「データの最終用途がはっきりと示されていなかった」という。例えば「チェックアウトを容易にするためにサインを」とブランドから通知が来た場合、消費者がサインをすればブランドはそのメールアドレスを他の目的に使用しかねなかった。

「GDPRの影響でこの価値交換は更に明確になり、透明性が高まります。ブランドが個人のどのようなデータを、なぜ取得するのかという点がはっきりする」とミルバーン氏。

ファーストパーティデータはスケールも要点だ。ブランドはファーストパーティのデジタルフットプリントの不十分さを補強するため、他のデータも欲しがるだろう。「もし閲覧履歴が問題ならば、セカンドパーティデータが完璧なソリューションになるでしょう。ソースがはっきりした特定のデータセットを収集できる、極めて透明性の高い手段ですから」と話すのは、ロテーム(Lotame)社のアジア太平洋地域データソリューション担当ヴァイスプレジデント(VP)、エヴゲニー・ポポフ氏。

セカンドパーティデータのシェアはアジア太平洋地域も含め、こうしたレベルで一般的になってきている。

「二つのブランド間だけではなく、ブランドとパブリッシャーの間でもデータのシェアをより自由にやるようになってきた」というのは、データックス(DataXu)社のアジア太平洋地域VP兼ゼネラルマネジャー、ジェームス・サンプソン氏。「データへの渇望は強く、ブランドはマーケティングやアナリティクスに使える質の高いデータセットを求めています」。

「セカンドパーティデータのコストは高価なものになっていくでしょう」とサンプソン氏。「質が高く、ソースが明確ですから。マーケターやブランドは更なる出費を強いられますが、より信頼の置けるデータであることは間違いありません」。

ブランドは既にファーストパーティ・セカンドパーティデータを重用し、更なるデータの収集と蓄積に注力しつつある。だが、巨大なウォールドガーデンが近い将来、淘汰されてしまうわけではないだろう。

それでも、「フェイスブックやグーグル、テンセントは人々の生活に根付き過ぎてしまった。今年以降、消費者やブランドがこれらのプラットフォームから徐々に離反していく傾向が強まるでしょう」とミルバーン氏。

「ブランドはウォールドガーデンへの支出が増えることに不満を募らせていくと思います。サードパーティプラットフォームの“ブラックボックス”に頼るよりは、より多くのエクスペリエンスを提供する構造をつくりたいと考えるはず」

「2019年はブランドが全社規模で、ファーストパーティ・セカンドパーティデータに関するビジョンと戦略の明確化に本腰を入れる年になることを期待します。アジア太平洋地域のクライアントはこうした課題を論議してきましたが、それは社内の特定のチームなどに限られていた。サードパーティに依存するのではなく、ファーストパーティ・セカンドパーティデータを企業活動の核に据えるべく、適切な予算やリソース、そして経営幹部レベルのサポートが今年は具体化するのではないでしょうか」

新たなデータ規制の施行を鑑みると、ブランドがかつてほどデータを必要としなくなる、ということはないか。データ規制の下でも効果的なマーケティングはできるのだろうか。

「消費者に関する無限大の知識よりも、消費者とのつながりの方がはるかに大切です」とミルバーン氏。「たとえ匿名のものでも、一つか二つのデータポイントを把握するだけで素晴らしいパフォーマンスが実現できる。更に、それに基づいてエクスペリエンスを改善できるのです」。

しかしながら、そのためには「ブランドは社内の体制を整備する必要がある」。「効率化実現のためには人工知能(AI)の最新技術を応用し、迅速に新たなモデルを構築する −− こうしたデータ主導の、真に透明性が高いオープンな組織を目指すのであれば、そのプロセスを活性化するためより広範で濃密、かつ明快なデータの蓄積が必要です」。

こうした措置で「偶然の結果」を導き出すよりも、結果の伴うテストをあらかじめ想定できる「思考プロセスの改善」が可能になるという。「データをどのように活用するのか、消費者にオープンにする。まさにGDPRの基本的な指針ですが、それによって初めて 信用を築けるのです」

(文:マシュー・キーガン 翻訳・編集:水野龍哉)

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