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※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
ケースフィルムへのAIコンテンツ使用が発覚 CCOが退任
6月中旬に開催されたカンヌライオンズ2025で、Creative Data部門のグランプリが取り消しとなった。
グランプリを獲得していたのは、DM9が手掛けた家電ブランド「コンスル(Consul)」のキャンペーン「Efficient Way to Pay」。カンヌライオンズの声明によると、キャンペーンについて説明するケースフィルムでAIが生成・操作したコンテンツを使用していたことが判明し、不正確な情報で審査が行われた。
DDB傘下のDM9は内部調査を行い、他にも賞を獲得していたOKAバイオテック(OKA Biotech)の「Plastic Blood」と、ウリヒ・ヤノマミ(Urihi Yanomami)の「Gold = Death」についても自主的に取り下げた。またDM9の最高クリエイティブ責任者であるイカロ・ドリア氏が退任した。
今回の件を受けてカンヌライオンズは、エントリー時にAI使用の開示義務付けや、行動規範の強化、コンテンツ検出ツールの導入、AIや倫理の専門家を含む審査委員会の設置といった対策を発表した。
今年のカンヌライオンズ受賞作品については他にも、Audio&Radio部門でグランプリを獲得したバドワイザー(Budweiser)の「One Second Ads」も批判を浴びている。ライセンス料を回避するため楽曲を1秒のみ使用したというもので、公式なルールに違反したものではないが、親会社であるアンベブ(Ambev)は「私たちはアーティストを心から尊敬しています。誠に申し訳ありません。問題の解決に向けて取り組んでいます」と謝罪した。
カンヌ受賞者、壇上へのアクセスに改善を要望
カンヌライオンズのFilm部門で、チャンネル4(Channel 4)の「Paris Paralympics 2024: Considering What?」がグランプリを獲得した。だがザイド・アルカッサブ氏(元チャンネル4、現在はM&Cサーチ)がステージへのアクセスについて疑問を投げかけている。
同氏のリンクトインへの投稿によると、このキャンペーンを手掛けたパープル・ゴート・エージェンシー(Purple Goat Agency)のグローバル・クライアント・ディレクター、ドム・ハイアムズ氏が車椅子で壇上に向かうことができず、地下を通って舞台裏から入るよう指示されたという。
「この戦略を立案したドム・ハイアムズ氏がパレのステージに、通常のルートでアクセスできなかったのは残念なこと。皮肉です」と同氏。「連帯感を示すため、皆で地下を通り抜け、ドムと一緒に舞台裏から入り、賞を受け取りました。でも世界はもっと良くなる必要があります」。
カンヌライオンズは今年、インクルージョン・パートナーとしてパープル・ゴートと提携し、「よりインクルーシブでバリアフリーな」体験を創出するには何が必要か評価してもらい、今後も継続していきたいと述べた。
また、ハイアムズ氏はこのように語る。「カンヌライオンズは広告界のイベントの頂点であり、業界全体が一堂に会して素晴らしい作品を称える場。しかし世界中の多くの場と同様、カンヌライオンズも進化を続けています。よりインクルーシブで、アクセシブルで、未来を形作る人材や、私たちがかかわりを築き表現しようとしているコミュニティーを代表する場になるために」。

カンヌで今年もセクハラが問題に
世界最大級の広告賞で、今年もセクシャルハラスメントが問題になっている。団体「The Women in Programmatic Network」の共同設立者であるエミリー・ロバーツ氏がオンライン署名プラットフォーム「Change.org」で、カンヌライオンズをより安全な場にするよう呼び掛ける嘆願書に署名を求めている。
昨年のハラスメントについての声を受けて、今年のカンヌでは会場内にセーフゾーンが設置された。だがロバーツ氏によると、セクシャルハラスメントは「かなり蔓延していました」。セーフゾーンも閉鎖されていたり、職員とのコミュニケーションが取れないことがあったという。
また、会期中にクリエイティブやメディアで働く女性が集う場としてエンパワー・カフェ(Empower Cafe)を開設したルイーズ・ワトソン氏は「ここが、多くの女性が問題を報告するために訪れる場になりました。そもそも、それがこの場所を設置した目的ではなかったのですが」と語る。「これは、この業界で働く男性の行動に関する大きな問題であり、運営側がコントロールできるものとできないものがあると思います」。
カンヌライオンズの最高DEI責任者であるフランク・スターリング氏は「安全保護対策の強化と進化に尽力しています」とコメント。「コミュニティー安全保護対策委員会やパートナーの支援を受けて今年実施した取り組みを基盤に、学びと改善に重点を置きながら引き続き活動していきます」。
グレイワールドワイドのMDに髙野公寛氏
WPP傘下のグレイワールドワイドのマネージング・ディレクターに、髙野公寛氏が就任した。代表の岡咲匡彦氏は、WPPジャパンのエグゼクティブ・バイスプレジデント、ビジネス・イノベーションに就任し、経営会議メンバーに加わる。
髙野氏は東北新社やPARTYで映像やイベント、メタバース、AIなどのプロジェクトに携わり、2017年から電通に出向。東京五輪2020大会の開閉会式のエグゼクティブチームのチーフプロデューサーとして、式典全体の統括を担当した。PARTYに復帰後、2023年からワイデン+ケネディ トウキョウのビジネスディレクターを務めた。

(文:田崎亮子)